高校サッカー選手権、準々決勝の全試合をプレビュー 個性のあるチームがそろった8強
名和田我空(写真)らの破壊力ある神村学園の攻撃と、近江の分厚い攻撃のぶつかり合い。果たしてどちらの攻撃が上回るのか 【写真は共同】
神村学園vs.近江(4日14:10~)
神村学園はここまでベガルタ仙台内定のFW西丸道人、U-17日本代表コンビである左サイドバックの吉永夢希(ベルギー・ヘンク内定)と左MF名和田我空という主役が安定したパフォーマンスを見せている。この原動力となっているのが1年生の福島和毅と2年生の新垣陽盛のダブルボランチ。共にプレミアリーグWESTで経験を積んだ彼らは冷静な判断力を持ち、福島は神出鬼没な動きと意表を突くパスを、新垣は高さと展開力、ゴール前への進入を得意とする。今大会でもより洗練された連係を見せ、彼らの的確なパス出しから、ストロングポイントである左サイドだけではなく、右サイドのMF大成健人のパスとクロスの質が引き出されている。初戦の松本国際戦ではいずれも大成が絡んだ右サイドの崩しから2ゴールを奪い、3回戦の神戸弘陵学園戦では新垣が先制弾をたたき込んだ。この多彩なアプローチは注目だ。
対する近江は伝統になりつつある攻撃的な[3-4-2-1]の精度がかなりブラッシュアップされている。元Jリーガーの前田高孝監督は常に相手との駆け引きを選手たちに植えつけてきたが、印象的なのは遠くの相手をきちんと見るということで、近場だけではなく最終ラインの選手が相手DFラインの変化に目を配りながら、速攻か中央突破か、それともサイド攻撃かを変化させていく。
さらに今年は2人のキーマンの存在が大きい。1人は3バックの左に位置する金山耀太。爆発的なスピードと持久力があり、彼が機を見てどんどん前線まで顔を出してくることで、より後方からの飛び出しが活発化し、バリエーションが増えた。もう1人は1トップに君臨する小山真尋。2年生の途中までずっとCBだった彼は、2年生の秋ごろにFWにコンバートされて才能が開花。183センチの高さを武器にしたポストプレーを得意としながらも、裏抜けもできてチームの前への推進力をより際立たせる存在となった。果たしてどちらの攻撃が上回るのか、アクション合戦に注目だ。
堀越vs.佐賀東(4日14:10~)
右サイドバックの竹内利樹人と左サイドバックの瀬下琥太郎は中央に絞っての守備もできるため、注目の2年生CBである182センチの森奏がタイミングを見た攻撃参加で攻撃にアクセントを加えてくる。だからこそ、佐賀東は彼が飛び出してきたときのマークのズレに注意を払いながらの守備が必要となってくる。逆にサイドバックが中に絞ってきたときに空くサイドのスペースを有効活用できるかがポイントになってくる。
その面で見れば、佐賀東は技術レベルと戦術理解度が高い選手が多い。中でも江口恭平、大島弘賀のダブルボランチは長短のキックと状況判断能力に長けており、かつ2人は同じ鹿児島のAFCパルティーダ出身。1、2回戦はこれまで通りコンビを組んできたが、3回戦の富山第一戦では[4-4-2]ではなく、[4-3-3]を採用。同じくAFCパルティーダ出身の西川葵翔とスリーボランチを組んで、彼らの状況を把握した巧みなポジショニングとショートパス、ミドルパスの組み合わせて流れをつかんで5発快勝に貢献した。
準々決勝はダブルボランチでくるのかスリーボランチで来るのか分からないが、息の合ったコンビネーションを見せる彼らが、堀越の縦にフレキシブルな攻撃に対して攻守において機転を利かせられるかに注目だ。