西浦颯大が味わった術後の“生き地獄”と何度も読み返した“おかんの手紙”
「もう一回野球させてください神様」
入院中は時々、昔の手紙を読み返していました。僕が5歳になる時に、おかんが書いてくれた手紙です。
「15年後の颯大へ
いつも元気いっぱいの颯大。戦い大好きでちょっぴり甘えん坊な颯大ももうすぐ5歳。15年後は20歳!! 成人してるんだね。どんな男性に成長しているのかな。ママの事ももう『母さん』なんて言ってるのかな。15年後の颯大に願う事。それは颯爽として心も体も大きい男性になっていて欲しいという事です。何に対しても思いやりを持てて芯の強い男に成長している事を信じています。
運動が大好きな颯大は今何をしているのかな? プロ野球の選手かな? 有名になっていたりして。何をしても上手な颯大だけど、ちょっと移り気な所もあるから『これだ!!』と思える事があるならばそれに向って一所懸命に頑張りなさい。颯大には出来るはずです。
この手紙を読んだあと、お父さんとママと颯大の3人で楽しいお酒を飲もうね。」
この手紙は、僕がプロに入る時に実家から持ってきて入寮し、手術で入院する際にも病室に持っていきました。
手術後に改めて読み返すと、何とも言えない気持ちになりました。自分のことは別によかったんですけど、おかんがかわいそうやな、と思って。僕が病気になってから、ずっと悲しんでいるのはすごく感じていたので。
入院中は時間を持て余していたので、時々SNSも更新していたんですが、思い立って、この手紙をTwitter(現X)にアップしました。その時の思いを添えて。
17年前の手紙。
もう一回野球させてください神様
迷惑かけすぎてきた分、まだ親孝行が足りない
書籍紹介
【写真提供:KADOKAWA】
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