最高のストーリーで現役生活18年が完結 町田のJ2優勝が懸かるホーム最終戦を前に、太田宏介が思うこと
サッカーどころ町田で育ち、ライバルに出会う
小林悠(左)は太田が小学生時代から意識していた相手 【(C)J.LEAGUE】
太田 町田に引っ越したのは5歳のときですね。横浜と言っても(田園都市線の)田奈だったので、町田のすぐそこです。
――町田は太田選手から見てどういう街ですか?
太田 やっぱり「サッカーどころ」のイメージです。僕が小さい頃は北澤(豪)さん、林健太郎さん、山田卓也さんが町田出身のスターでした。当時は町田サッカーフェスティバルという、年始に町田出身のJリーガーを集めてやるエキシビションマッチがありました。それを見に町田のサッカー少年・少女がスタジアムに集まるんです。Jリーグは自分が6歳のときに開幕して、ちょうどサッカーを始めたタイミングでもありました。サッカー界が一番熱いときで、市内のチーム数も多くて、町田出身のJリーガーがたくさんいた。今もサッカーについては熱いところだなと思います。
――太田選手と同い年の町田出身者には小林悠選手(川崎フロンターレ)、秋元陽太選手(2021年引退/湘南、町田などでプレー)がいますね。
太田 秋元陽太は僕と幼稚園が同じです。つくし野天使幼稚園というんですけど(笑)。実は陽太に誘われてサッカーを始めたんです。小林悠は小5くらいから知っています。町田JFCでプレーしていて、「ヤバいやつがいる」と噂になっていました。東京都選抜で会うようになって、悠と陽太と僕の3人は関東トレセンにも行きました。東京から関東トレセンに行っている6人のうち、3人が町田でした。
――今思えば町田の黄金世代ですね。
太田 小学生の段階から強烈なライバルがいましたね。陽太は横浜F・マリノスのジュニアユース、ユースに行って、ナショナルトレセンにも入り続けて、プロに上がるんですけど。幼なじみの陽太や悠が身近にいて、お互いにライバルとして高め合えたからこそ、ここまで来れたと思います。それは町田で育ってすごくよかった部分です。
サッカー以外でも野津田に思い出
左足に加えて「走力」も太田の武器だった 【(C)J.LEAGUE】
太田 はい、もう「聖地」ですよ。町田市の少年サッカー大会でも、決勝に行かないとプレーできないような場所でした。今は芝生席だったところが3階建てのスタンドになって、こうして立派なスタジアムになって、もうびっくりしますね。
自分の試合やサッカーフェスティバルもそうですけど、町田市のマラソン大会も年に1回ありました。自由参加ですけど、走りに自信のある子たちはどこの小学校もみんな応募するんです。僕は4年生のときが4位だったのかな?それで5年生6年生は2位だったんです。1位は同じサッカーチームの仲がいい友達で、1位までいけなかった。なので小学生の大会で決勝戦をやる神聖な場所と、マラソン大会で1位を取れなかったちょっと悔しい場所……。僕の印象は2つあります。
――五輪に2度出場した長距離走者の大迫傑選手は太田選手の4歳下で、町田出身です。人口43万人の、そういう選手も出している街のマラソン大会ですし、2位でもすごいですね。話をサッカーに戻しますけど、少年時代に野津田でプレーして印象に残っている試合はありますか?
太田 何試合も覚えていますけど、中学生最後の試合が野津田で、FC町田vs.町田JFCだったんですよ。JFCには悠がいて、今芸人のシュウペイ(ぺこぱ)もいて、(小野寺)達也(2022年に引退/栃木SCなどでプレー)がボランチだったんです。結果はPKで、内容はあまり覚えてないですけど、負けたような気がします。
――太田選手は今おっしゃった3人と、麻布大渕野辺高校でチームメイトになりました。
太田 あの世代はJFCやFC町田である程度やっている選手が、みんな渕野辺高校に行ったんです。
「持っている」サッカー人生
太田の野津田最終戦は、優勝が懸かった大一番に 【撮影:大島和人】
太田 僕は普段からビッグゲームと言われる試合は、例えば代表戦や練習試合もあまり特別扱いせず、同じような感覚でやるんです。なので個人的にはマイペースで臨みたいと思います。結果としてもし優勝がついてくれば、もう若い選手以上に大騒ぎします(笑)
――5月の清水戦は1万人を超える観客が町田GIONスタジアムに来場しましたが、あのときはオレンジが半分くらいいました。「ブルーで染まった満員の野津田」はぜひ経験したいのではないですか?
太田 そうなれば、もちろん幸せでしかないですね。小中と自分が小さい頃に見ていた野津田の景色とは、本当に変わってきています。サッカー人生の最後が、自分の育ったFC町田ゼルビアで、しかもこのような条件が揃ったゲームになるなんて、本当に想像もできなかったですよね。最後をいい形で締めくくれるように、もう最高の雰囲気の中で、いい試合をして勝ちたいです。
来年J1に上がったら、相手のサポーターも増えると思いますけど、もっともっと青に染まったスタジアムの中で選手たちがプレーできるように……。その一つの大きなきっかけとして、皆さんの前で優勝できたら最高です。
メンバー外になって(試合前の)サイン会に出たこともありますけど、僕が少年サッカーのときに「相手のコーチやっていました」「見ていました」と声をかけてくれる方がよくいるんです。そういった方々の中で最後、結果として恩返しできたら最高です。こんなストーリーはなかなかないと思うし、僕はめちゃくちゃ持っていますね。
――サポーターの皆さんにメッセージをお願いします。
太田 FC町田ゼルビアのポテンシャルは、ものすごく大きいものがあると思います。ここで優勝を決めて、そして来シーズン以降もっと素晴らしいチームになるために、更なる皆さんの後押しが必要になってきます。今は最後まで共に闘ってくれたらという思いと、「ありがとう」という思いでいっぱいです。