身長188センチで捕手&投手&4番 東邦・高柳大治がちょっとスゴイぞ

尾関雄一朗
 愛知県の強豪・東邦高校にとんでもない可能性を秘めた男がいる。その名は高柳大治(2年)。身長188センチと大型で、捕手も投手もできる4番打者だ。主将を務め、ラグビー元日本代表の父をもつらしい。プレーはまだ粗削りで、この冬の鍛錬は必須だが、今後どう成長していくか――。独占インタビューで迫る。

父はラグビー元日本代表選手

雄大な体躯を武器に、強豪・東邦で中心的役割を担う高柳。ラグビーで日本代表入りした父に続き、自身は野球で将来の日本代表入り!? 【尾関雄一朗】

 東邦の新チームの看板選手がなかなかスゴい。2年生の高柳大治である。身長188センチで体重89キロ。大きな身体に捕手の防具をまとい、鉄砲肩で盗塁を刺したかと思えば、試合終盤にマウンドに立ち長い腕を振る。打っては4番打者を任され、弧の大きなスイングから長打を飛ばす。10月にはキャプテンに就いた。

 ラグビー元日本代表選手の父をもつ。トヨタ自動車ヴェルブリッツでプレーした高柳健一氏だ。現役時代はPR(プロップ)として活躍し、2008年に引退。現在はチーム運営統括を務めている。

 高柳自身もご多分に漏れず、保育園年少の頃にラグビーを始めた。父がコーチをしていた、トヨタ自動車の小学生向けチームに入った。他方、小学1年からは地元の野球チームにも所属した。3歳上の兄がラグビーと野球を“両立”していた影響からだ。高柳によると「ラグビーの練習は基本的に土日どちらかで、半日だけ」だったから、掛け持ちはできた。

 小学校高学年になるにつれ、気持ちは野球に傾いた。「野球の方が好きだったですね。ラグビーは接触プレーが痛くて……。自分たちが中心の代になる5年生の頃からは、野球を優先したくて、ラグビーの練習にあまり出られなくなりました。父に『ラグビーをやれ』と強制されるようなことは全然なかったです」(高柳)。楕円形のボールには小学生限りで別れを告げた。

高校1年秋に誕生した“大型捕手”

高校1年秋に捕手に転向し、2年秋からレギュラーに。盗塁を許さぬ地肩と、陽性の気質が魅力だ 【尾関雄一朗】

 高柳の現在のポジションは捕手だ。高校1年秋に投手から転向した。小学生のときも捕手だったが、高いレベルでマスクをかぶるのはこれが初めてだ。

 転向を決めた東邦の山田祐輔監督は、意図をこう説明する。

「キャッチャーがいないチーム事情も関係しました。また、高柳は肩が強く、体に力があります。それを生かせるポジションを考えたとき、たとえばファーストなどよりも、キャッチャーをやらせてみたいと思いました」

 捕手に取り組んで1年ほどが経過した。転向直後の高校2年春のセンバツは、経験や力量が上級生捕手に及ばずベンチ外。2年夏の愛知大会で控え捕手としてベンチ入りし、2年秋の新チームから正捕手となった。

 捕手ならではの大変さを味わっている。配球も日々勉強だ。しかし手応えもある。「最初はめちゃくちゃだったので……。それに比べたら、今は多少は成長しました」と背番号2ははにかむ。「ちゃんと送球の形さえつくれれば、いい球がいく自信はあります。まずはしっかり足を使い、投げやすい体勢をつくりたいです」と話す二塁送球は、地肩の強さが生きる。「タイムはそれほど意識していません」と言うが、計測すると2秒を切る。

投手としても“先輩”高橋宏斗級!?

長い腕を豪快に振り抜き、最速144キロのストレートで打者を攻める。今秋の県大会では2試合に登板し計2回を無失点、3奪三振をマーク 【尾関雄一朗】

 一方で、「投手・高柳」構想も熱を帯びる。東邦の木下達生コーチ(元日本ハムほか)は「高柳の球を捕れるキャッチャーがいないから、あいつがキャッチャーなんです」と冗談交じりに話す。今はクローザー役だが「本当なら高柳で1回から9回までいけたらいい」と続ける。山田監督も「球威があるし、最近では高柳が一番安定しているのでは」。今秋県大会後の練習試合では完封勝利もやってのけた。

 中学のクラブチーム「豊田シニア」時代は投手だった。中学3年夏は全国ベスト8まで勝ち進み、複数の強豪校から声がかかっている。

 中学2年冬に間近で見た豪球が脳裏に焼きついている。ドラフト指名を受けたばかりのOB・高橋宏斗(中京大中京~中日)がチームを凱旋訪問。高柳はブルペンの隣のマウンドでその投球練習を見た。「凄かったです。球がジュルジュルいっていました」と目を輝かせ、追い求めてきた。

 今年の秋、投手としても感触が良かった。

「高校1年秋にキャッチャーになった後、一度ピッチャーをしたときはストライクが全然入らなくて……。でも2年秋、自分たちの代になってまたピッチャーをやってみたら、意外といけました。びっくりするぐらい腕を振っても、ストライクが入るんです。球を置きにいくのではなく、腕を振ってストレートでどんどん押していけました」

 最速は144キロで、カーブやスプリットを操る。

 捕手か投手か、この先どちらでいくのか――。今は両方に挑戦する構えだ。

「キャッチャーは変わらずやっていきたいし、ピッチャーとして先発でも投げられるようにしたいです」

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著者プロフィール

1984年生まれ、岐阜県出身。名古屋大を卒業後、新聞社記者を経て現在は東海地区の高校、大学、社会人野球をくまなく取材するスポーツライター。年間170試合ほどを球場で観戦・取材し、各種アマチュア野球雑誌や中日新聞ウェブサイトなどで記事を発表している。「隠し玉」的存在のドラフト候補の発掘も得意で、プロ球団スカウトとも交流が深い。

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