身長188センチで捕手&投手&4番 東邦・高柳大治がちょっとスゴイぞ
開花待たれる“ロマン砲”
飛ばす力はあるように見えるが、本人は「長距離砲ではない」と話す。今秋県大会では3試合で計12打数2安打 【尾関雄一朗】
悔しい打席がある。その豊川戦では2点を追う9回表、2死二、三塁の好機で打席が回ってきた。だが、遊撃ゴロに倒れゲームセット。試合序盤の打席と同じような形で凡退した。この敗戦で来春のセンバツ出場は絶望的となった。
「ああいう場面で甘い球をしっかり打てるバッターにならなければ……。チャンスで打てるように鍛えていきます」
あらゆる面で、この冬が鍛錬どころになる。捕手も投手も打撃も、まだ粗削り。下半身の強さはもう一歩で、動きの軸がぶれがちだ。「夏に向けて球速を上げたいし、変化球でも確実にストライクをとり、投球のバリエーションを増やしたいです。キャッチャーとしても、テンパらないようにしたいし、ワンバウンドの球をしっかり止められるようにしたいです」と自覚する課題は多い。
しかし、着実に歩みを進めているのは間違いない。先に触れたとおり、久々に投球練習をしたら想像以上の感触で、中学時代は球に当たらなかったという打撃も、今やそんな面影はない。東邦での日々の基礎練習の積み重ねで、プレーヤーとしての輪郭ができつつある。冬を越えて、中身が詰まってこれば――。ロマンは果てしない。
「藤嶋になれる男」
高柳大治(たかやなぎ・だいじ) 2006年6月23日生まれ、愛知県みよし市出身。三好丘中(豊田シニア)~東邦高。188センチ89キロ、右投右打。捕手兼投手。 【尾関雄一朗】
担任でもある木下コーチは、あるOBに高柳をなぞらえる。「キャプテンでピッチャーで4番打者。性格はめちゃめちゃ明るい。高柳は藤嶋(健人/中日)になれる男だと思っています。伴っていないのは実績だけです」。2016年の夏、甲子園球場を東邦色に染め、劇的な逆転勝利(対八戸学院光星)を巻き起こした藤嶋のスター性とリーダーシップ。その継承者たる資質がある。
高柳の住む実家は、なんと東邦のグラウンド(愛知郡東郷町)からかなり近い。徒歩圏内の距離だ。
「僕が幼い頃、家の外にいると、よく東邦のグラウンドから声が聞こえてきました。練習最後のランニングの『イチ、二』って掛け声とか。凄いなと思っていました」
今は自らがその声を、チームの先頭として出し続ける。チームを必ずや、夏の甲子園に連れていく。