身長188センチで捕手&投手&4番 東邦・高柳大治がちょっとスゴイぞ

尾関雄一朗

開花待たれる“ロマン砲”

飛ばす力はあるように見えるが、本人は「長距離砲ではない」と話す。今秋県大会では3試合で計12打数2安打 【尾関雄一朗】

 4番に入る打撃はスケール感あふれる。今秋県大会の準々決勝・豊川戦では左翼フェンス直撃の二塁打を放った。本人は「体は大きいですが、長打をばんばん打てるバッターではないと思っています。あの打席も結果的に飛びましたが……。中学まではピッチャーの練習が中心で、打席ではバットに当たらなかったので」と控えめだ。高校通算本塁打は5本(10月14日時点)。数字は大きくないものの、随所で素材の良さがのぞく。

 悔しい打席がある。その豊川戦では2点を追う9回表、2死二、三塁の好機で打席が回ってきた。だが、遊撃ゴロに倒れゲームセット。試合序盤の打席と同じような形で凡退した。この敗戦で来春のセンバツ出場は絶望的となった。

「ああいう場面で甘い球をしっかり打てるバッターにならなければ……。チャンスで打てるように鍛えていきます」

 あらゆる面で、この冬が鍛錬どころになる。捕手も投手も打撃も、まだ粗削り。下半身の強さはもう一歩で、動きの軸がぶれがちだ。「夏に向けて球速を上げたいし、変化球でも確実にストライクをとり、投球のバリエーションを増やしたいです。キャッチャーとしても、テンパらないようにしたいし、ワンバウンドの球をしっかり止められるようにしたいです」と自覚する課題は多い。

 しかし、着実に歩みを進めているのは間違いない。先に触れたとおり、久々に投球練習をしたら想像以上の感触で、中学時代は球に当たらなかったという打撃も、今やそんな面影はない。東邦での日々の基礎練習の積み重ねで、プレーヤーとしての輪郭ができつつある。冬を越えて、中身が詰まってこれば――。ロマンは果てしない。

「藤嶋になれる男」

高柳大治(たかやなぎ・だいじ) 2006年6月23日生まれ、愛知県みよし市出身。三好丘中(豊田シニア)~東邦高。188センチ89キロ、右投右打。捕手兼投手。 【尾関雄一朗】

 今月に入り、キャプテンに就任した。「今までキャプテンの経験がなく、分からないことだらけです。山田監督からは『明るさを出していけ』と言われました。自分は明るさが取り柄なので」と本人。学校生活では後期の級長になった。

 担任でもある木下コーチは、あるOBに高柳をなぞらえる。「キャプテンでピッチャーで4番打者。性格はめちゃめちゃ明るい。高柳は藤嶋(健人/中日)になれる男だと思っています。伴っていないのは実績だけです」。2016年の夏、甲子園球場を東邦色に染め、劇的な逆転勝利(対八戸学院光星)を巻き起こした藤嶋のスター性とリーダーシップ。その継承者たる資質がある。

 高柳の住む実家は、なんと東邦のグラウンド(愛知郡東郷町)からかなり近い。徒歩圏内の距離だ。

「僕が幼い頃、家の外にいると、よく東邦のグラウンドから声が聞こえてきました。練習最後のランニングの『イチ、二』って掛け声とか。凄いなと思っていました」

 今は自らがその声を、チームの先頭として出し続ける。チームを必ずや、夏の甲子園に連れていく。

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著者プロフィール

1984年生まれ、岐阜県出身。名古屋大を卒業後、新聞社記者を経て現在は東海地区の高校、大学、社会人野球をくまなく取材するスポーツライター。年間170試合ほどを球場で観戦・取材し、各種アマチュア野球雑誌や中日新聞ウェブサイトなどで記事を発表している。「隠し玉」的存在のドラフト候補の発掘も得意で、プロ球団スカウトとも交流が深い。

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