トレバー・バウアーに独占インタビュー

「研究」と「実践」を繰り返すバウアー 来日1年目で日本に順応できた理由と今後の目標とは

丹羽政善

DeNAの“元サイ・ヤング賞右腕”バウアーは来日1年目を10勝4敗、防御率2.76で終えた 【写真は共同】

 5月16日の先発3試合目だった。

 3日の来日初先発(対広島)は7回を投げて、7安打1失点で、来日初勝利。9日の2戦目(対巨人)は、6回を投げて11安打7失点で敗戦投手に。被本塁打1試合3本は、キャリアワーストタイ。ブランクの長さ、日本野球への適応の遅れなどが指摘される中、その試合ではいわば真価が問われたが、結果は散々だった。

 初回、先頭の菊池涼介から三振を奪ったが、そこからなんと3連続二塁打を打たれ、5番の西川龍馬には高めのボール球を右翼席に運ばれた。いきなりの4失点。続く坂倉将吾にも内野安打を許すと、5連打となった。2回も二塁打で始まり、その後、四球、連打などでさらに3失点。バウアーはこの回でマウンドを降りた。

 見ながら、球種がバレているのでは? と感じたが、あながち間違いではなかったよう。

 多くは、「真っすぐが、高い」。「もっと低めに制球すべき」と指摘した。

 バウアーは、口にこそ出さなかったが、「日本の野球は、まだそんなところにいるのか?」と思ったかもしれない。同時に、10年以上も前の嫌な思い出が蘇ったのではないか。

“20時間以上”の研究で「球種の選択」を日本式に調整

 2009年、UCLAに入学したバウアーは1年目のシーズンを迎えていたが、捕手からは、「もっと低めに投げろ」とたびたび、注意された。しかし、バウアーは、高めに真っすぐを投げて、同じ位置からカーブを曲げれば、打者の球種を判断するタイミングが遅れる。また、高めの真っすぐは、打者に速く見える。さらに、スイング開始からコンタクトまでの時間が、高めのほうがわずかながらかかるということを理解しており、それまでの常識に異を唱えた。

 この5〜6年、メジャーリーグでは、高めの真っすぐをいかに効果的に使うかがトレンドだが、それはバウアーが先鞭をつけたもの。また、異なる球種の偽装は、ピッチトンネル(※1)という理論によって証明され、いまや、ピッチトンネルをどう利用するかは、ピッチデザイン(※2)の過程で、重要な要素を占める。

※1 2017年に米データサイト「ベースボール・プロスペクタス」で紹介された理論。2つの異なる球種が打者に向かっていく。当然、最終的に捕手のミットに収まる位置は異なる。リリースポイントがほぼ同じだとしたら、2つの球種はどこで枝分かれするのか。その枝分かれのポイントが打者寄りであればあるほど、打者は球種を判断する時間が限定される。ベースボール・プロスペクタスは打者の手前、23.8フィート(約7.25メートル)の地点に輪(ピッチトンネル)があると想定し、異なる投球がそこを超えて枝分かれするならば、打者は球種の判断が出来たとしても、反応する時間が残されていないと定義した。

※2 投球の軌道データ、ハイスピードカメラを利用し、理想とする軌道の球を投げられるよう、握りや、リリース時の手首の角度などを工夫しながら、その軌道を実現する作業。ピッチデザインは、バウアーの造語
 話がやや脱線したが、広島戦で打たれた後、バウアーはこう考えを整理しながら、改善点を探したという。

① 準備段階に問題はなかったか?

「ノーだ」

② 球の動きはどうだったか?

「ノーだ」

③ 制球はどうだった?

「平均よりちょっと下かな、というぐらいだったが、そこまで悪くなかった」

④ 球種の選択

「そこの部分はちょっと課題があるかなと考え、その後、研究した」

 修正が必要と考えた④については、じっくり解説してくれた。

「自分のピッチングスタイルとしては、1球投げた後に、バッターがどんな反応をするかによって、次の球種を選択する。ただ、これまでアメリカ時代に培ってきた経験——このバッターは、この反応をしたら、このボールを投げるべきだという理解が、必ずしも、日本のバッターに当てはまらなかった」

 例えば?

「アメリカ時代は、真ん中に投げた真っすぐをバッターがファールした場合、そのバッターは振り遅れているので、同じボールをちょっと高めに投げたり、インサイドに投げればアウトに取れていた」

 日本では?

「初球、真ん中の球を振り遅れてファールだった場合、日本人打者の傾向として、ストレートに狙いを定めるケースがかなり多いと感じた。最初の悪い2登板が終わった後、セ・リーグだけでなくパ・リーグの動画を20時間以上見て、そういった研究の中から、こういう反応をした場合は、この球種を投げるべきだという、日本でのピッチングスタイルを確立できた。日本のバッターの反応であったり、特徴を理解して、それに応じた球種を投げる。その球種選択の部分を捕手とも話して、調整した」

 メジャーであれば、反応を見て、同じ球種でもコースを変えて投げることで抑えられた。ただ、それが日本では通用しない。球種がバレているというより、そのメジャーでの配球パターンを研究されていたのではないかーーそう考えた。そこで、山本由伸(オリックス)らの映像を見ながら、日本人打者の反応、その狙いを学んだ。それを元に配球を組み立て直すと、今度は打者が考えるようになり、立場が逆転した。

 5月27日から8月25日までの15試合で、9勝2敗、2完投。防御率2.00という数字は、決して偶然ではなかった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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