プロ野球2023シーズン終盤戦の12球団見どころ

7月失速で3位転落のDeNAが目指すべきものは? バウアー離脱のピンチにチーム一丸&救世主出現に期待

三和直樹

8月から大爆発中のDeNAの牧を中心に再浮上なるか 【写真は共同】

 今年3月31日に開幕したプロ野球は、記録的猛暑の夏を越えていよいよ“勝負の9月”を迎える。セ・パ両リーグの首位球団に優勝マジックが点灯した今、残りの約20試合をどのように戦うべきか。そして注目ポイントはどこか。12球団の終盤戦の“見どころ”を整理しておきたい。今回はDeNAだ。

※成績はすべて9月5日時点のもの

交流戦明けに3タテで首位浮上も

 三浦大輔体制3年目のシーズンは、昨季2位の手応えとともに期待感も高かった。開幕4連敗スタートを喫しながら、すぐに2度の4連勝を飾って取り戻すと、4月23日からは投打の噛み合った戦いを続けて7連勝をマークした。4月を終えて16勝7敗の貯金9で首位。意気揚々の滑り出しだった。

 5月に入って投手陣が打ち込まれる試合が増えたことで6連敗、4連敗と黒星が連なった時期はあったが、交流戦で初優勝(11勝7敗で4球団が並ぶも得失点率差でトップ)。そしてリーグ戦再開最初のカード、6月23日からの本拠地での阪神との首位攻防戦で3タテを決め、首位浮上を果たした。

 だが、この時の貯金12が現状、今季最多となっている。直後に4連敗してあっさりと首位の座を明け渡すと、7月に8勝13敗1分けと負け越し、8月は連勝と連敗を繰り返す浮き沈みの激しい戦いで13勝12敗1分け。気付けば、首位・阪神と10ゲーム以上の大差を付けられるだけでなく広島の後塵を拝し、4位の巨人と2ゲーム差でBクラス転落の危機にも瀕している。

絶好調の牧&宮﨑、そして24歳捕手

 7月に負け越した大きな理由は、月間チーム打率.208と低迷した打線だ。だが、8月はチーム打率.255と盛り返して、得点力は戻ってきている。その原動力が、4番の牧秀悟である。5月以降に調子を上げてきた男は、8月に入ってチャンスでの勝ち越し弾など勝負強さを如何なく発揮し、月間打率.362、7本塁打、26打点の大暴れ。9月も快音を続け、今季通算で打率.301、26本塁打、91打点の好成績を残している。

 さらに今季は、宮﨑敏郎が元気いっぱいだ。開幕直後から快音連発で5月下旬の時期まで打率4割をキープ。プロ11年目の34歳にして全盛期到来を思わせるようなバッティングを披露。ここまで打率.340、19本塁打、66打点で、首位打者を獲得した2017年を遥かに上回る自己最高の成績を残している。

 だが、ここからチームが再浮上するためには、彼ら以外の力も必要だ。イースタンで無双していた梶原昂希の負傷離脱は残念な限りだが、注目したい人材がプロ6年目の24歳、捕手の山本祐大だ。昨季までは2軍生活が主だったが、今季は開幕から1軍帯同を続け、ここまで53試合(スタメン37試合)に出場。7月までは打率.221だったが、8月に月間打率.350と打撃開眼の兆しを見せると、9月は4試合で打率.462、2本塁打と爆発している。今後の働きにも期待がかかる。

東&今永のタイトル獲得は?

9月1日に自身8連勝で今季12勝目を挙げたDeNAの東(左)。コンビを組む山本(右)との連携も抜群だ 【写真は共同】

 投手陣では、プロ6年目の東克樹の快進撃が目覚ましい。左肘手術の影響が長引いて過去2シーズンは1勝ずつに終わっていた左腕が、今季は開幕から安定感抜群に試合を作り続け、19試合登板で12勝2敗、防御率2.18という好成績。QS率84.2%で、6月1日から12試合負けなしの8連勝を飾っている。現在、最多勝と最高勝率の2冠であり、9月以降にどこまで数字を伸ばせるか非常に楽しみだ。

 同じくタイトル獲得の可能性があるのが今永昇太だ。9月1日に30歳を迎えたエースは今季も頼もしいピッチングを続け、18試合で7勝3敗、防御率2.72の好成績。8月の5試合を0勝2敗、防御率5.27で未勝利に終わったが、ここまでリーグ最多の142三振を奪っている。プロ8年目での「最多奪三振」が今永の個人初タイトルになるのか。9月のラストスパートに期待だ。

 大きなアクシデントが、バウアーの離脱だ。5月の来日初登板からここまで19試合に先発して10勝4敗、防御率2.76の成績を残していた元サイ・ヤング賞右腕が、8月30日の阪神戦で負傷交代して「右腸腰筋遠位部損傷」で戦線離脱。全治は明らかにされていないが、今季絶望の可能性もあると言われている。チームにとって大きなマイナスになることは間違いない。

気になる上位陣との対戦成績

 バウアー不在の中、Aクラスを死守することができるのだろうか。気がかりなのは、今季のチーム別の対戦成績であり、9月5日時点で首位の阪神に9勝13敗、2位の広島に8勝13敗1分け、さらに4位の巨人にも9勝12敗と負け越している点だ。その一方で、5位・ヤクルトに10勝7敗1分け、そして6位の中日に14勝5敗1分けと大きく勝ち越しているが、「下位チームにしか勝てない」と言われても仕方がない。この状況が続けば、例えCS進出を果たしても、大きな期待を持つことができない。

 この状況を打開するためにも、やはり“救世主”の出現が必要になる。特に投手陣だ。バウアーの代役として9月5日の広島戦で今季初先発した坂本裕哉は4回5安打2失点と合格点は与えられず。次回登板で期待に応えることができるか。それとも、イースタンで5勝(4敗、防御率3.39)を挙げている深沢鳳介などの若手の抜擢はあるのか。チームが成長することができなければ、CS進出は難しくなる。

 三浦大輔監督は昨オフに球団と複数年契約を結び、来季も指揮を執ることがほぼ確実だ。だからこそ、ここでもう一度、チーム一丸となりたい。爆発力はある。勢いに乗れば、大型連勝も可能だ。2位・広島とは5ゲーム差。優勝が難しくなった中、目指すべきものは本拠地でのCS開催、そしてその舞台でバウアーが復活登板を果たし、大歓声を浴びることになるだろう。9月以降も、まだまだファンに楽しませる“熱いドラマ”を見せられるはずだ。
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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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