EL参戦による過密日程が三笘薫を苦しめる これは超一流になるために乗り越えなければならない試練
肉体だけでなく「精神的にもきつい」とこぼす
三笘は今季ここまでフル稼働。欧州カップ戦との掛け持ちで疲労が蓄積しており、さらにローテーション制への対応にも苦労している 【Photo by David Horton - CameraSport via Getty Images】
確かに昨季、三笘にカモにされたリバプールのイングランド代表DFトレント・アレクサンダー=アーノルドが、看板とする攻撃参加を控え、日本代表MFをきっちりマークしていたこともあった。それにブライトン・イレブン全体の動きも重かった。
しかし、三笘が前にボールを運べなかったことは否定できない。ボールを持ってもスイッチが入らなかった。とにかく発進力がなかった。
後半に入り、やっと体がほぐれたかのように、ドリブルで仕掛けるシーンが見られたが、あの奇妙に静かだった前半は何だったのだろう?
「まあ、そうっすね。それもありますね、はい」
これは試合後、3日前の木曜日にマルセイユと熾烈な戦いを繰り広げ、アウェーで2-2のドローという結果を手にしたヨーロッパリーグ(EL)の疲れが「まだ残っていたか?」と聞かれた三笘の答えだ。
そう、この試合で26歳MFがやや精彩を欠いたのは、聞いてみれば当たり前の話だが、今季のヨーロッパリーグ参戦でブライトンに強いられた過密日程が原因だった。
三笘の今季の先発は、ブライトンの公式戦11試合中このリバプール戦ですでに10試合目。途中出場だったのはリーグ戦第6節のボーンマス戦だけで、欠場した試合はない。ちなみにそのボーンマス戦では1-1の同点だった後半の頭からプレーして、ピッチに上がって15秒で逆転ゴールを奪い、その後打点の高いヘディングを決めて自身初となる1試合2ゴールを記録している。
しかも昨年11~12月に行われたカタール・ワールドカップで鮮烈な印象を残して、日本代表でも押しも押されもしないレギュラーとなり、9月にはドイツとの親善試合にも出場している。ブライトンで開花し、代表でも頭角を表し、そしてクラブを欧州カップ戦に導いたことで、今季の三笘はプロ選手となってから初体験となる超過密日程に直面している。
さらに付け加えて言えば、最近の三笘の存在感に比例し、出場するどの試合にも大きな注目が集まり、全く手が抜けない真剣勝負が続いているのだ。
「後半もう一つ踏み込めていたら」と聞いたら、「今の状態だとあそこまでしか行けない感じなので。もう一個行かないといけないと思ってますけど」と語り、「2年目の難しさもあるか?」という問いにも「連戦の方が大きいと思います」と、ここでも過密日程の厳しさを真っ先に訴えた。
木曜日の夜8時と日曜日の午後2時という週2回の真剣勝負をこなす日程は、肉体面だけではなく「精神的にもきつい」と言う。
疲労回復のために心掛けていることは「休養と食事」と言うが、「それも本当に疲れが取れているのか分からないくらいの状態なので、難しいですね」と話して、正直に現在の自身のコンディションについて明かした。
それに今季のブライトンは、クラブ史上初となる欧州カップ戦参戦により、ロベルト・デ・ゼルビ監督が自転車操業ともいうべきローテーションを組み、大胆に選手を入れ替えながら試合に挑んでいる。三笘はこうした状況に関しても、「チームが変われば、守備範囲も攻撃の範囲も違いますし、負担も大きくなります」と話して、過密日程の副産物とも言えるローテーションへの対応の難しさも語った。
しかし、これも超一流選手となるためのプロセスであり、宿命でもある。リーグ戦と欧州カップ戦を並行して戦い、母国の代表としても戦う。しかもヨーロッパリーグの上にはチャンピオンズリーグもある。事実上、クラブ世界最強を競う欧州戦。そこにはさらなる極限の戦いがある。三笘の将来にはさらなる高みがある。今季はそのための試金石なのだ。
もちろん、初体験の難しさはあるだろう。しかし三笘にはこの試練を乗り切り、過密日程にも慣れ、さらなる大選手になるため突き進んでほしい。
冨安が昨季の悪夢を払拭するような大仕事
冨安が王者シティを相手に大きな仕事をやってのけた。0-0の後半41分、日本代表DFが頭で落としたボールをハヴァーツが後方に流し、これを走り込んだマルティネッリがゴールに蹴り込んだ 【Photo by Stuart MacFarlane/Arsenal FC via Getty Images】
残り15分の時点で出場した冨安は、後半41分、最終ラインのトーマス・パーティーが放ったロングボールに鋭く反応して駆け上がると、敵陣のペナルティエリア手前で相手DFに囲まれならもボールにしっかり頭を合わせてカイ・ハヴァーツの足元に落とし、ガブリエウ・マルティネッリの決勝ゴールを演出したのだ。
しかしこの冨安のはつらつとしたプレーも、最近は控えに回っていることで蓄積されたエネルギーの発散だったと思うと面白い。
昨季はマンチェスター・シティとのホーム戦で冨安が反射的に出したバックパスがケビン・デ・ブライネの先制点のアシストとなったが、今回はその悪夢を拭い去るような鮮やかなプレーで決勝点の起点となった。
(企画・編集/YOJI-GEN)