前週2ゴールのヒーローが味わった屈辱 三笘薫はアストン・ヴィラ戦でなぜ沈黙したのか
極端なことが起きるのがプレミアリーグ
9月24日の第6節ボーンマス戦で三笘薫は1-1の後半頭から出場すると、ピッチに立ってからわずか15秒で鮮やかな勝ち越し弾を決めた。さらには打点の高いヘディングで3点目のゴールも奪って、ブライトン加入以来初の1試合2得点を記録。45分間の出場ながら文句なしのマン・オブ・ザ・マッチとなった。
この活躍で英国での注目度もまた大きく増した三笘だったが、それから中5日で行われたアストン・ヴィラとのリーグ戦では沈黙。しかもアウェーとはいえブライトンは1-6の大敗を喫した。
しかし、結論から言ってしまうと、こんな極端なことも起きてしまうのがプレミアリーグなのである。
システム変更でいつもより低い位置取りに
まずこの試合のポイントは、ロベルト・デ・ゼルビ監督がダニー・ウェルベックとエヴァン・ファーガソンのセンターフォワード2人を同時に先発起用し、システムを4-4-2に変更したことだろう。
これで通常は4-2-3-1の1.5列目左サイドでプレーする三笘の位置取りが若干下がった。普段なら味方がボールを持てば、相手の右サイドバック(SB)と横並びするくらいの位置まで張り出す日本代表MFだが、アストン・ヴィラ戦では常に対峙する形になっていた。
確かにわずかなポジション変更だが、これがスピード豊かな選手が揃うプレミアでは決定的な痛手になる。ここはイングランドらしく「ヤード」(約91.44センチ)で語ると、ポジショニングが半ヤード深いだけでも相手の守りを優位にするのだ。
このアストン・ヴィラ戦、三笘は縦に抜くオプションを忘れてしまったかのようだった。それは4-4-2へのシステム変更でわずかだが深めになったポジショニングが災いしたように見えた。だから素直に「前に出るプレーがやりづらかったのではないか?」と聞いた。
すると三笘は「いつもと同じ形でやっていましたけど」と語り始めたが、位置がやや深かったことに関しては「相手のラインも高いんで、まあ仕方ないんですけど」と4-4-2で守備の負担が増したことも含めて認めると、「ランニングでなんとかうまくやろうとしましたが、なかなか裏のところが使えなかった」と続けて、同い年のアストン・ヴィラ右SBマティ・キャッシュに手を焼いたことを認めた。
しかしそれも三笘の位置が問題だった。スタートラインが後ろにずれたら、どんなに俊足でもプレミアの舞台で相手を抜くのは難しい。