一芸に秀でた独立リーグのドラフト候補野手たち NPBブレイクする「20盗塁以上、10本塁打以上、捕手」は誰だ?

金沢慧

四国アイランドリーグplus・徳島で首位打者を獲得した茶野篤政は、育成契約でオリックス入り。開幕前に支配下登録されて一気にブレイクを果たした 【写真は共同】

今週末のGCSはスカウトへの絶好のアピールの場

 前回の投手編に引き続き、独立リーグに所属する野手のドラフト候補を紹介する。

 9月29日から10月1日の3日間は松山の坊っちゃんスタジアムを舞台に独立リーグ日本一を決めるグランドチャンピオンシップ(GCS)が開催される。NPBのドラフト会議まであと1ヶ月を切る中で、GCSはドラフトでの指名を目指す選手のアピールの場のひとつとなる。

 GCSはスポナビでも無料ライブ配信を行う。今回紹介する選手はGCS出場選手も多く含まれているので、ぜひチェックして欲しい。

※図表および本文中の年齢表記はすべて該当年度の4月1日時点の満年齢(今年度の場合は2024年4月1日時点の満年齢)

リーグ20盗塁、10本塁打以上の野手は指名の可能性あり

【筆者作成】

 投手と同様に野手も過去のドラフト指名の傾向から見ていきたい。投手と比べると少し項目が増えているが、過去5年に独立リーグからNPBのドラフト会議で指名された26人のうち25人は「リーグで20盗塁以上」「リーグで10本塁打以上」「捕手」「身長185センチ以上」「22歳以下」の5項目のいずれかに当てはまっていた。

 この基準で選手をピックアップすればNPBで指名されやすい選手が抽出できるはずなので、早速各項目に当てはまる選手を見ていこう。

育成4巡目から開幕スタメンを勝ち取った茶野篤政に続くのは誰だ?

【公式記録等から筆者作成】

 まずは盗塁数で選手をピックアップした。

 昨年指名された選手の中では茶野篤政と樋口正修が20盗塁以上を記録していた。どちらも育成での指名だったが、支配下登録されて一軍での出場を果たしている。特にオリックスの育成4巡目指名だった茶野が開幕スタメンに抜擢され、ここまで100試合近くに出場しているのだから夢がある。過去の傾向を見ても独立リーグ出身の野手は走力を特徴とする選手が活躍しやすく、この表の中にも来年の今頃に茶野のような活躍を見せている選手がいるはずだ。

 ヤマエグループ九州アジアリーグ(KAL)でダントツの盗塁数だったのは大分の廣沢新太郎(登録名は「新太郎」)。俊足を活かしたプレースタイルで昨年のドラフト候補紹介コラムも注目選手にあげていたが、今年は本塁打を4本放つなど打撃が向上している。新太郎と同じ世代で左打者、外野手という共通点がある尾田剛樹(栃木)と篠田大聖(新潟)も注目の選手。2人ともBCL選抜としてNPB各球団との交流戦に臨んでおり、9月15日に行われた巨人3軍との試合では尾田が三塁打、篠田が本塁打を放って存在感を見せた。

 24歳の世代である奥村光一(群馬)や25歳の増田将馬(徳島)は今年のドラフトの結果次第で野球選手としてのキャリアが大きく変わりそうな選手だ。奥村は25日からのソフトバンク4軍との試合にもBCLの選抜メンバーとして選ばれて奮闘中、増田は12球団約20名のスカウトが集結した9月22日の「トリドール杯 チャンピオンシップ」で初回にピンチを救うバックホーム送球で走者を刺すなど、走攻守でアピールを続けている。

 日本海リーグでは阿部大樹(石川)がスカウト注目の選手。昨年のGCSでも足で魅せた火の国の中村晴樹(登録名は「晴樹」)と松本陽雅は今年もGCSでの活躍に期待がかかる。

大泉周也と井上絢登のフルスイングは魅力

【公式記録等から筆者作成】

 長距離砲の候補選手を見てみよう。10本塁打以上をマークした選手は7名おり、ドラフト対象はこのうち6名。中でもBCLの本塁打王となった大泉周也(福島)と2年連続でIBLJの本塁打、打点の二冠に輝いた井上絢登(徳島)に注目が集まる。2人ともフルスイングが魅力の左打者で捉えた打球の打球速度が速い。

 井上は昨年もドラフト候補だったが、同僚の茶野に先を越されており、ドラフト指名にかける意気込みは強い。今年は投手に比べると大学、社会人で長打を打てる野手のドラフト候補が少なく、チャンスはあるだろう。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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