一芸に秀でた独立リーグのドラフト候補投手たち 「剛速球or高身長or若さ」が指名されるための必要条件

金沢慧

プロ3年目の今季、剛速球を武器にリリーバーとして阪神の優勝に貢献した石井大智は、四国アイランドリーグplus・高知で3年間プレーした後にNPB入りした 【写真は共同】

「トリドール杯 チャンピオンシップ」にNPB全球団のスカウトが集結!

 9月22日に徳島で行われた四国アイランドリーグplus(IBLJ)の年間総合優勝を決める「トリドール杯 チャンピオンシップ」では徳島が勝利し優勝を決めたが、この試合には徳島と愛媛の有力選手の視察に12球団約20名のスカウトが集結していた。

  NPBのドラフト会議が約1ヶ月後に迫っており、各球団のスカウトは各地で大学、社会人、独立リーグのドラフト候補を最終チェックしている。9月29日からは日本独立リーグ野球機構(IPBL)の所属5リーグの代表チームで独立リーグ日本一を争うグランドチャンピオンシップ(GCS)が開催され、出場チームの選手にとっては格好のアピールの場になるだろう。

 果たして、今年はどのような選手がNPBの舞台に進むのか。独立リーグのドラフト候補選手を「投手編」「野手編」に分けて紹介する。

※図表および本文中の年齢表記はすべて該当年度の4月1日時点の満年齢(今年度の場合は2024年4月1日時点の満年齢)。

独立リーグの投手は「剛速球、高身長、年齢の若さ」が評価の軸

【筆者作成】

 まず、近年はどのような投手がドラフトで指名されていたか。シンプルに表現すると「球速が速い、身長が高い、年齢が若い」のどれかが際立っている投手だ。

 上の表は過去5年のドラフト指名投手の指名当時の情報をまとめたものだ。「球速が153キロ以上の報道があるか」「身長が185cm以上か」「年齢が20歳以下か」の3項目に当てはまる場合は丸をつけている。そして、3つの基準のどれかに5年間で指名された19投手中18人が当てはまっている。

 例えば今年セ・リーグ優勝の阪神でリリーフとして活躍している石井大智はドラフト指名当時の最速が153キロと報じられていた。その他、長谷川凌汰、行木俊、石田駿が指名当時153キロの報道。西濱勇星、鎌田光津希、石森大誠は155キロだった。

 身長に関して、昨年独立リーグから指名された4投手のうち3人は189センチの渡辺明貴、188センチの中山晶量、185センチの左腕・山本晃大と高身長だった。また、年齢については今春のWBCの代表にも選ばれた湯浅京己のように、当時の最速は151キロ、身長183センチと突出してはいないが、高卒1年目という若さに将来性を見出されるパターンがある。

 もちろん球質、性格、リーグでの成績など多角的な評価はされているはずだが、過去の指名傾向からは「球速、身長、年齢」がNPB球団の指名リスト入りするか否かの土台だと考えられる。

四国には最速153キロ以上の投手が7人いる

 では、今年この基準を満たす投手は誰か。まずは「球速153キロ」から見てみよう。他のリーグとは異なり、今年から「スポナビ野球速報」でIBLJの球速データがある程度取れているため、まずは四国各球団の投手からまとめた。

【スポナビ野球速報データ等から筆者作成】

 今季のIBLJでの最高球速が153キロを超えているのはこの7人だ。表にある通り、157キロをマークしている椎葉剛(徳島)を筆頭に、150キロ中盤〜後半を計測した投手が並ぶ。なお、ストレートの平均球速でも上位投手の顔ぶれはほぼ変わらず、トップ3は椎葉、内海皓太(愛媛)、宮澤太成(徳島)の順となる。

 上記7名のうち、椎葉、内海、羽野紀希(愛媛)、平間凜太郎(高知)の最高球速は松山の坊っちゃんスタジアムでのものだった。坊っちゃんスタジアムはマウンドの土が硬いこと、球場常設の計測システムが一般的なスピードガンではなく映像から球速を測るタイプであることなどにより、他の球場より速く、正確な初速が出ると考えられる。宮澤、白川恵翔(徳島)、秋田有輝(高知)は坊っちゃんスタジアムでの登板がなく、松山で投げていたらもう少し球速が出ていた可能性もある。

 白川と椎葉はともに22歳になる学年で、豊作と言われている大学生投手と同じ世代だ。坊っちゃんスタジアムでは9月2日から東都大学リーグの第一週が行われたが、ドラフト上位候補である下村海翔(青学大)が自己最速を2キロ更新する155キロ、同じく草加勝(亜大)も自己最速の153キロをマークした。西舘勇陽(中央大)や常廣羽也斗(青学大)も150キロ台半ばを計測したが、これらの投手と比べて、少なくとも最大出力で白川や椎葉は遜色ない数値を残しており、支配下、しかも上位で指名される地力はあるはずだ。

 宮澤と内海は年齢こそ24歳ではあるが、リーグ戦での変化球の奪空振り率は宮澤がトップ、内海が3位と変化球も秀逸。22日の「トリドール杯 チャンピオンシップ」ではともに1イニングを無失点に抑え、球団関係者に能力を見せた。

 また、最速152キロのため表にはいないが、若松尚輝(高知)と赤尾侑哉(香川)も注目したい。若松は速球とフォークが特徴。松山での登板がなく、投げていれば153キロが出ていた可能性もある。赤尾はストレートの奪空振り率が椎葉に次ぐ日本人投手2位となっており球質が良い。2人とも上のレベルで実力を試して欲しい投手だ。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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