ドラフトキング・スペシャル座談会 作者が語る、作品の裏側や今後の展開は?
【写真:スポーツナビ】
ストーリーのネタ元は? 主人公・郷原眼力のモデルは誰? 藤田さん、西尾さんがクロマツ先生に素朴な疑問をぶつけ、様々な角度から『ドラフトキング』を掘り下げます!また、クロマツ先生、藤田さんがそれぞれに思い出に残るドラフトを挙げていただき、最近良い指名をしていると思う球団から気になるスカウトまで、ドラフトの面白さについてマニアックに語っていただきました。(取材は7月中旬。企画構成:Timely!編集部)
作者クロマツ先生が明かす『ドラフトキング』の裏側!
野球の現場にはよく足を運ぶというクロマツテツロウ先生 【写真:スポーツナビ】
クロマツ 元々は『野球部あるある』『野球部に花束を』という、日常系のコメディ漫画を描いていたんですけど、そこから野球の仕事しかオファーが来なくなったんですよね。「もっと少年っぽいものを描いてくれ」というようなオファーを色々いただいていたりして。
クロマツ 社会人野球を主人公にした漫画を描いても少年たちは読んでくれなかったりとか、そもそも高校野球漫画しか企画が通らないんですよね。でも大学野球もそうですけど、(高校野球以外も)面白いじゃないですか。それも含めて全部描けるのは「スカウトや!」って。主人公をスカウトにすればできるなと思ったんです。それで取材とかさせていただいたら、編集部も「面白そうだな」って企画が通って。
藤田 スカウトが主人公の漫画ってほとんどないですよね。
クロマツ 『隠し球ガンさん』とかありましたね。
西尾 でもこれだけガッツリと連載しているのはないですよね。短めに連載をやっていたのはありましたが。
藤田 『野球狂の歌』の短編であるくらいですよね。
クロマツ・西尾 (笑)
藤田 ドラマはプロ野球のシーズンでも起きますが、でもドラフトの前後が一番起きやすいじゃないですか。過去のドラフトでもめちゃくちゃあるし、リアルでも面白いから漫画だと余計に面白いですよね。
西尾 藤田さんも『ドラフトキング』を愛読されているそうですが、好きなエピソードはありますか?
藤田 真田丸謙吾の話が好きですね。めっちゃ好きです。
クロマツ うわぁ。ありがとうございます!
西尾 (プロに)入ってから苦しんでいるというエピソードですね。
藤田 実際にもあるあるな感じですし、そういうのが好きなんですよね。ちなみにモデルがいたりするんですか?
クロマツ よく言われるんですけど、これだけプロ野球史が長いと誰かと被ることがあるのかなと。イメージする選手はいたりするんですけど、そのまま描いているわけではなくて、フィクションに落とし込んで描いているというか。偉そうな言い方になってしまうかもしれないですけど、球数問題だったりとか、そのときの描きたいテーマに沿ってドラマを作ったら、誰かの選手と被ってしまうみたいなことがあるのかもしれないですね。
藤田 ちなみに主人公の郷原眼力のモデルはいるんですか?
クロマツ あんなスカウトさんはいないと思います(笑)
西尾 たしかに(笑)
藤田 漫画が未来予想というか、予言みたいになっているというか、水島新司先生ってそうだったじゃないですか?
西尾 そうですね。
藤田 漫画で描いていたことが実現するという「水島新司予言者説」みたいな。だからそういうエピソードが、この先出てきたら面白いって、すごい楽しみにしているんですよ。
クロマツ ありがとうございます。
西尾 実際に、現場に取材に行かれたところから何かヒントを得たりもしているんですか?
クロマツ 取材はすごい行きますね。独立リーグのことを描くのであれば独立リーグの試合も観に行きますし、クラブチームの試合も観に行きます。コンスタントに全部の試合を観に行くことがどうしてもできないので、テーマが決まってから行くところがあるかもしれないですね、都市対抗野球とか時期的に今しか見れらない試合とかは(取材とは関係なく)観に行きますけど。
藤田 実際にスカウトの方に話を聞くこともあるんですか?
クロマツ ありますあります!もちろん。
藤田 リアルに教えてくれる人もいるんですか?
クロマツ いや、結構…ザルですよ。
藤田・西尾 ザル(笑)
クロマツ 大体ジャージを着ている系のスカウトさんは直ぐに教えてくれます。
西尾 何となく分かります。ビシッとされている方は立場もありますからね。
クロマツ そうですね。スーツ系の方は、初めは口が重いですけど、それでも結構教えてくれるんですよね。
藤田 (笑)
西尾 ドラフトが終わったあとは結構話してくれますよね。
藤田 終わったあとは結構ザルですよね。ザルって言い方、ちょっとどうなのかな(笑)
クロマツ 社会人野球のことも某企業さんに取材に行かせてもらったんですが、むちゃくちゃ話してくれました。広報さんも大体野球部上がりの方がやられていると思うんですけど、取材がしやすかったですね。
西尾 嬉しいんじゃないですかね? 漫画に取り上げてもらえることが。
藤田 中学野球の取材も行かれたりしますか?
クロマツ 昔『中学野球小僧』さんで仕事をさせてもらっていて、そのときに中学の取材に結構行っていました。
藤田 いまウチの息子が中学で硬式野球を始めたばかりで、「へぇ〜」っていう話が結構あるんですよね。「え!?そこまでするんだ!」みたいな。
クロマツ 例えば?
藤田 クラブチームなのに「特待」があるとか、月謝がいらない子がいるとか。ウチの息子のチームじゃなくて他のチームの噂ですけど。
西尾 プロ野球のジュニアチームに入っていた子は待遇が違うとかも(噂で聞きますね)。
藤田 2年後のレギュラーを確約するとか。それでミズノプロ(のグローブを)を使っているとかもね。(編集部注:あくまでも噂です)
西尾 僕が取材したなかでは「中学くらいから自分で用具を買ったことがない」って言っている選手もいましたね。
藤田 小学6年の頃からプロが目をつけていた選手がいて、その後無事にプロ入りしたケースもありましたからね。「そんな頃から見ているんだ!?」みたいなね。でも、サッカーに置き換えたら至極当たり前のことなんですよね。サッカーではなんらマズいことでもないんですが、野球はすごいタブー視されますよね。
西尾 野球はどうしてもプロアマの壁がありますもんね。
クロマツ 何人かのスカウトさんに取材させていただいたんですが、「どういう選手に惹かれますか?」とか「どんなときに『この選手はすごいな』と思いますか?」って、ありきたりなことを聞くんですけど、皆さん、佇まいであったりユニフォームの着こなし方であったり、打球音とか、そういうことを言われる方が多いんですね。ちょっと(エピソードとしては)「弱いなぁ…」という感じなんですが(笑)
藤田 あとは「目」とかね。
クロマツ 遠くから走ってくる姿を見て「これはいける!!」と思ったのが、黒田博樹さん(元広島)だったという話とか。それはもうそうなんだな、と。
西尾 少なからずあると思いますね。(ユニフォームの着こなし方とかが)格好よく見える選手は伸びるって言いますし。
クロマツ 僕も野球をやっていたので(分かりますけど)、やっぱり上手い選手って格好よかったですよね。
藤田 あるスカウトに聞いた話ですけど、ほかが全部「1」でも「5」が1個あれば獲るって言っていましたね。肩であるとか、バッティングであるとか、足であるとか。
西尾 「オール3、オール4はいらない」ってよく言いますね。
クロマツ はぁー。なるほど。