「俊足タイプ」の逸材に注目 IPBL加盟リーグのドラフト候補をピックアップ・野手編

データスタジアム金沢慧

昨年指名を受けたDeNA・村川(左)のように、俊足を武器とした選手が指名されやすい傾向にある 【写真は共同】

 9/30(金)〜10/1(土)にリブワーク藤崎台球場で行われる「日本独立リーググランドチャンピオンシップ2022」、さらに10/20(木)に迫っているプロ野球ドラフト会議に向けて、前回はIPBLの投手のドラフト候補を紹介した。

 今回は野手のドラフト候補をピックアップする。

一軍の試合出場実績があるのは走力の高いタイプの選手

【データスタジアム】

 上の図は平均身長、平均体重のデータをリーグごとにまとめたものだ。

 NPBの両リーグと比べて独立リーグは体格で劣るが、四国アイランドリーグplus(=IBLJ)とルートインBCリーグ(=BCL)はほぼ同じくらいの体格、ヤマエ久野九州アジアリーグ(=KAL)がやや小さく、北海道フロンティアリーグ(=HFL)が最も小柄だ。NPBもIPBLも外国人との差は大きく、「助っ人」としての存在感を示している。

 野球選手の体格差は球速、スイングスピードなど野球のプレーのレベル差に繋がる可能性が高く、結果的にNPBと独立リーグの間だけでなく、独立リーグの各リーグ間にもレベル差が存在することを示唆している。

 特に野手の打撃成績は投手の球速や制球力など投球のレベル次第で大きく変わるため、レベル差があるリーグでの能力比較が難しい。

【データスタジアム】

 この表はNPBで「高校、大学、独立リーグ、社会人等その他」の4つの区分にドラフトで指名された選手を分けたときに、1打席あたりで盗塁と本塁打がどのくらい出るかを示したものだ。

 端的には、独立リーグ出身の野手は打席数に対する盗塁が最も多く、逆に本塁打は最も少ないということがわかる。つまり、走塁能力や俊足を生かした守備力に秀でているタイプの選手が一軍の試合に多く出場しているということになる。

 投手編でも書いたが、独立リーグのドラフト指名選手のボリュームゾーンは22~24歳と、新人としては年齢が高めだ。

 独立リーグの野手を取り巻く状況を整理すると

・NPBと独立リーグ、さらに独立リーグの各リーグの間でレベル差があり、独立リーグである程度打撃成績を残してもNPBで通用する打撃力とは評価しづらい
・育成ドラフトでの指名が多いものの、年齢的には即戦力として期待されている
・打撃優位の即戦力として獲る場合は、早くから助っ人外国人クラスと肩を並べるレベルが求められる


 このような前提があると考えられ、必然的に独立リーグからNPBの各球団に指名される野手は打撃力よりもまず走力、守備力の高いタイプが好まれる傾向にある。

 もちろん、2021年はBCLで12本塁打の速水隆成(群馬→日本ハム)、同11本塁打の山中尭之(茨城→オリックス)のような打撃力優位の選手、いわゆる「ロマン枠」の指名もあったのだが、初回のコラムでも示した通り、まだこのタイプから成功選手は生まれていない。

 このような事情に加えて1球毎のデータやトラッキングデータもない中で有望野手をリスト化するために、今回は盗塁数を活用した。

IBLJ首位打者の茶野、最多本塁打の井上、BCL最多安打の藤原ら候補選手が並ぶ

 盗塁数を軸にリストアップするといっても、盗塁が多い順に評価しようという話ではない。あくまでも盗塁が多く高い走力がある選手の中で、打撃能力を比較しようという意図だ。

 まずはIBLJ、BCLそれぞれのトップ10、KAL、HFLそれぞれのトップ5の計30選手の成績を紹介する。

 ちなみに、昨年の成績で同様のフィルタリングをかけると、2021年のドラフトで独立リーグから指名された8名の野手のうち村川凪(徳島→DeNA)、大橋武尊(茨城→DeNA)、岩田幸宏(信濃→ヤクルト)、の3名が当てはまっていた。

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 IBLJで注目したいのは外野手の茶野篤政(徳島)、有田諒嘉(高知)、井上絢登(徳島)、主にショートを守る冨田慎太郎(香川)だ。

 まず茶野と冨田はこの中で比べると高い出塁率を誇っているが、茶野は首位打者を獲得、冨田は四球数がリーグトップとタイプは異なる。

首位打者を獲得した茶野は、加速力にも優れている 【写真提供:日本独立リーグ野球機構】

 個人的に8月に高知で試合配信のデータ解説役をする機会があり、現地で高知、徳島、愛媛の試合を見たが、その際に特に印象に残ったのは茶野の加速力だった。また、徳島の松澤裕介コーチからも茶野の紹介コメントが届いているので、プレー映像とともにチェックしてほしい。

 有田は左方向への安打を量産できる高知のトップバッター、井上はフルスイングが魅力のIBLJの本塁打王で、それぞれ違った魅力がある。特に井上のような長距離タイプがどの程度評価されるか注目したい。

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 次に、BCLをみてみよう。トップ10は上の通りであり、特に注目したい選手は奥村光一(群馬)、藤原大智(新潟)、内山竣(茨城)の3名だ。

 外野手の奥村は2021年のBCL首位打者で、今年も打率ランキング4位の好打者。リーグ1位の90安打を放った藤原はスイッチヒッターで、外野だけでなく二塁を守るユーティリティー性も注目される。この中で長打率が最も高い内山はシーズン4本塁打を放っており、パンチ力も魅力だ。

 他にもグランドチャンピオンシップへの進出を決めた信濃の中軸として活躍する宇佐美真太や、茨城のBCL南地区優勝を支えた上田政宗、安田寿明の1、2番コンビなど俊足が魅力の選手は多く、今年もBCLから一芸を評価された指名がありそうだ。

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 KALでは中村晴樹(火の国)、松本陽雅(火の国)、新太郎(大分)に注目したい。

 中でも、グランドチャンピオンシップに進出する火の国サラマンダーズの松本は三振に比べて約2倍の四球を選んでおり、選球眼とバットコントロールに優れている。優勝を決めた9/15の試合では1番の松本が5打数4安打で3盗塁の大活躍をみせ、2番の中村も1安打1盗塁と上位打線が機能した。

 エース・芦谷に加えて、この2人がいかに足でかき回せるか。年齢的には若くはないだけに、慣れ親しんだ熊本で行われるグランドチャンピオンシップで、2人が即戦力候補としてスカウトへアピールできるか注目だ。

 また、HFLでは広角に打ち分ける石狩レッドフェニックスの先頭打者、杉航がバランスの良い成績を残していた。坪井智哉監督からの紹介動画がスポーツナビに載っているので、チェックしてほしい。

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著者プロフィール

データスタジアム株式会社 フェロー 主にプロ野球各球団でのデータ活用のサポートやメディア出演多数。 NHK「ワールドスポーツMLB」、「球辞苑」やAbemaTVのプロ野球中継でデータ解説役として出演。

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