U-18W杯 経験者は語る&現地レポート

ヤクルト・武岡がU-18W杯で受けた洗礼 外国人投手の速球に「どうやって打つんや…」

沢井史
 八戸学院光星で1年春から遊撃手のレギュラーをつかんだ武岡龍世(ヤクルト)。2年夏からは3季連続で甲子園に出場した。3年夏の甲子園では初戦の智弁学園戦で本塁打を放ち、遊撃手としても守備力の高さを披露。当時の高校生世代を代表する遊撃手として2019年のU-18W杯の日本代表に選出された。今季は7月17日の巨人戦でサヨナラ打、8月15日のDeNA戦ではサイ・ヤング賞右腕のバウアーからプロ初本塁打を放つなど、チームに欠かせない存在として成長を続ける武岡がW杯で得たものとは?

慣れないポジションと木製バットに苦しむ

「初めて侍ジャパンのユニホームに袖を通したとき、すごくうれしくて、一緒にいた佐々木朗希(大船渡~ロッテ)と一緒に写真を撮ったのを覚えています(笑)。ただ、高校生を代表して集まってプレーをするという気持ちが強くて、(日本代表に選出されたことは)影響力も強いと思いました。緊張やプレッシャーは大きかったですね」

 何より、当時のメンバーの内野手を見渡すと、桐蔭学園の森敬斗(DeNA)や花咲徳栄の韮澤雄也(広島)、東海大相模の遠藤成(阪神)らトップクラスの遊撃手が名を連ねていた。高校日本代表は複数のポジションをこなせることも条件となっており、「正直、ショート以外もできるという自信が当時はなかった」と本人は言う。

「森はセンター、韮澤もファーストを器用にこなしていました」

 周囲の順応性の高さを目の当たりにしつつも、合宿当初はサードなどのノックも受けていた。そんななか、2戦目の南アフリカ戦は「2番・右翼」でスタメン出場し、6回からは二塁の守備についた。次戦のアメリカ戦、台湾戦は「2番・三塁」でフル出場した。他のポジションへの自信がなかったとはいえ、ノックを受けることで動きも徐々に身についていた。

 海外の球場は内野が赤土のグラウンドがほとんどで、雨が降ると赤土は粘状になりベトベトする。雨が降った台湾戦は「かなり守りにくかったですね」。日本ではなかなか経験できない“洗礼”も受けた。

大会を通してバットで貢献できず、悔しい思い出が多いと武岡は話す 【写真:共同通信社】

 だが、当時は守備よりも木製バットへの対応に苦慮していたことの方が印象に残っているという。

「自分は全体的に打てなかったので……。良い思い出があまりないんですよ(苦笑)」

 事前に外国人投手の能力の高さは耳にしていたが、実際に対戦すると、球が速いだけでなくボールが手元で微妙に動く。日本にはあまりいないタイプの投手が多く「どうやって打つんやと思いました」と打席に立つたびに苦戦を強いられた。

 特に欧米には体格のいい選手が多いなか、韓国代表の選手では小柄ながら身のこなしのいい選手がおり、「バッティングも守備もすごくうまい選手がいました。日本にはなかなかいない選手が多くて、これも経験と思いました」。

 ただ、武岡も負けていない。スーパーラウンドの韓国戦で、延長10回に一時は逆転となる2点適時打を放った。三遊間に抜けそうな当たりをスライディングキャッチしてアウトにするファインプレーも披露。ただ、その試合は逆転サヨナラ負けを喫し、次戦のオーストラリア戦にも敗れてチームは5位に終わった。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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