姫野和樹、W杯の対戦相手を語る 初戦のチリは「怖い相手」
前回大会での決勝トーナメント進出の経験と自信を手に、姫野和樹は自身2度目のW杯に挑む 【写真:REX/アフロ】
主将に任命されたのはナンバーエイトの姫野和樹。前回大会では相手からボールを奪う「ジャッカル」で活躍し、日本中を興奮の渦に巻き込んだ。
8月3日には初の著書『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』を出版した姫野に、W杯への思いを聞いた。(取材日:8月7日)
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「自分が主将として何を達成したいか」を書き出す
国内の5連戦(1勝4敗)で良い結果を残せなかったのですが、率直にすごく楽しみな気持ちが強いです。残り1カ月、チームとして成長できる余地があるので「W杯、楽しみだな」という気持ちです。
5連戦を終えて体は痛いですけど、調子自体は悪くないですし、ここからW杯に向けて自分の調子をマックスまで上げていけるようにがんばりたいです。
――日本代表は苦しい試合が続いていて、練習もハード、さらに猛暑で調整も難しいと思います。姫野選手と言えば、著書のタイトルにもなった「姫野ノート」と呼ばれる〝ラグビーノート〟です。練習や試合の中で気づいたことや課題を書き込んで振り返っているそうですが、この時期にも「姫野ノート」には書き込んでいますか?
もちろんです。毎日ではないですけど、試合前は必ず書きますし。必要な時に、必要なタイミングで書いています。
自分がこの5連戦で悩んでいた部分も、うまくいかなかった部分もあるので、ノートに書いて、自分が主将として何を達成したいか、主将としての仕事は何か……と書き出しています。
――ノートの書き方は誰かに学んだのでしょうか?自己流で作り上げていったのでしょうか?
自己流ですね。ノートに対して素直にあるべきだと考えていて、思いを素直に書くことが重要で、嘘は書かないでやっています。事実を書かないと問題が解決しないですし、何が問題かもわからなくなるので。
――今回の練習もかなり厳しかったようですが、19年大会の前よりも厳しかったですか?
1回の練習では今回の浦安合宿が一番きつかったですね。
今回の合宿で報道陣の方に非公開で行われたタックルの練習には途中から合流したのですが、「これは非公開だな……」と思いました。みなさんに公開できないレベルできつかったです。
ただ、19年のときは今回よりも「期間として長かった」のがきつかったですね。1月から9月まで200日以上、代表でキャンプしていましたから、先が見えないのは厳しかったです(苦笑)。
――タフな日々が続く中ですが、オンオフの切り替えはできていますか?書籍ではコーヒーを楽しむ時間が僕の心を守ってくれているのかも、と書かれていましたが。
朝、昼、夜と飲んで、コーヒータイムを楽しんでいます。代表で持っているコーヒーマシンがあって、選手それぞれが作っています。
試合の次の日が休みなので、試合後にお酒を飲みに行っている選手もいました。この国際試合5連戦はナイターが多かったので、僕はあまり行かなかったですが。
――ちなみに日本代表で切り替えのうまい選手はいますか
抜群に流大(ながれ・ゆたか)です。大はすごいですね。バランスがえぐいです(笑)。試合後、ロッカーに帰ってきてジャージもスパイクも脱いでいない状態で缶ビールを持っていますからね(笑)。それが勝っても負けてもそうなんです。過去を切り捨てて、次に行く切り替えの早さは彼が一番だと思います。
(流選手と仲良くなったきっかけは)長く一緒にやっているので。大学の時は「イチサン(姫野選手が1年生の時に流選手が3年生)」なのでそこまでではなかったですけど、代表になってからさらに仲良くなりました。
日本代表が変わっていくには1カ月は十分な時間
同じ画を見て、信念を持って進んでいくことが大事です。全員が同じ気持ちになれれば絆はもっとタイトなものになりますし、これからの1カ月はチームの絆をよりタイトにしていく時間なので、リーダーとしても大事な時間になります。
――書籍の中で「1週間でチームが変わるのかと思われるだろうが、変わる。それがラグビーの面白さ」と書かれていましたが、今の日本代表も変わっていくでしょうか?
日本代表が変わっていくには1カ月は十分な時間だと思います。もちろん、5連戦で結果が出なかったのですが、その中に成長する要素はたくさんありました。まずはしっかりと受け止めて、これから成長していくという自信はあります。
――結果が出ないことで批判的な記事や、選手のSNSアカウントへの心無いコメントも届くと思いますが?
ラグビーファンは優しいですよ(笑)。野球やサッカーにおける誹謗中傷の話も聞きますけど、それに比べるとラグビーファンは優しいというか、選手へのリスペクトがあった上での批判やネガティブな声だという気がします。もちろん、中には人格まで攻撃してくるようなものもありますけど、全体的には少ないです。
自分たちがやってきたことは自分たちしか信じられないので。チームとして周りの声は聞かないようにしています。
僕は主将として矢面に立つ立ち場なので批判を受けることもありますが、そこにはフォーカスせずに、自分たちがやるべきことにフォーカスしていきたいと考えています。