沖縄で開催されるバスケのW杯はどんな大会? 24年パリ五輪の予選という側面も

大島和人

渡邊雄太、ホーキンソンがインサイドの二本柱に

渡邊雄太(写真中央)は前回大会に続きチームを引っ張る 【Photo by Lintao Zhang/Getty Images】

 日本代表のヘッドコーチ(監督)はトム・ホーバス。2021年に開催された東京五輪では女子代表チームを銀メダルに導いたアメリカ人指揮官だ。プレイヤー、指導者として日本との関わりが深く、日本語も堪能だ。

 注目選手はまず渡邊雄太(サンズ/28歳)だ。206センチのサイズを持ちつつハンドリング、シュートのスキルが高いオールラウンダーだ。本来はスモールフォワードだが、日本代表ではパワーフォワードでの起用が濃厚だ。尽誠学園高からプレップスクールを経てワシントン大に進み、「ドラフト外の2ウェイ契約(下部リーグに所属しながら、年間45日までNBAに出場できる仕組み)」から這い上がって現在の地位を築いている。NBAで5年のキャリアを積み、通算出場は179試合。その能力に加えて、アメリカの厳しい環境で自ら運命を切り開いたキャリアは称賛に値する。

 バスケ界には「帰化選手」という概念があり、16歳以降に国籍を変えた選手は代表チームに1名しか登録できない。2019年のW杯はニック・ファジーカス、東京五輪ではギャビン・エドワーズが起用されたが、今回のW杯はジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷/28歳)が入る見込みだ。ホーキンソンは208センチ・106キロのオールラウンドなビッグマン。リバウンド、走力、シュート力に加えてホーバスHCが「日本のヨキッチ」と称賛するパス能力も持ち合わせている。3ポイントシュートがカギになる日本代表の戦術の中で、ホーキンソンのお膳立ては不可欠だ。渡邊、ホーキンソンはインサイドの“二本柱”になるだろう。

頼もしい若手の台頭

 八村塁(レイカーズ)の出場辞退表明はチームにとって痛手だが、一方で若手の台頭はチームにとって明るい材料。河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ/22歳)、富永啓生(ネブラスカ大/22歳)といった25歳以下の選手がチームの主力を担っている。キャプテンの富樫勇樹も30歳で、4年前の代表チームに比べて大幅に若返っている。Bリーグの充実や海外でプレーする選手の増加から「人材が育っている」ことは未来に向けた明るい材料だ。

 河村は東海大を2年で中退してプロ入りし、2022-23シーズンはB1のMVPに輝いたポイントガード。インサイドへのドライブ、パスの評価は当初から高かったが、昨季は「得意なプレーを封じられた状況」のプレーに成長を見せ、シュート確率も上がって手のつけられない選手になった。彼が格上の外国チームにどう立ち向かい、何を学ぶかは大きな注目点だ。

 富永は188センチのシューティングガードで、左利きの天才シューター。桜丘高を卒業後にまずアメリカのコミュインティカレッジ(短大)に進み、3年からNCAAⅠ部の名門に転校した。八村や渡邊の登場で感覚が麻痺しがちだが「NCAAの強豪で中心として普通にプレーしている」のはスゴいこと。父・啓之氏は211センチの元日本代表センターで、母ひとみさんは156センチの左利きシューターだったが、息子は父のサイズと母のセンスを受け継いでいる。

 ホーバスHCはキャリア、所属チームでのプレータイムに関係なく選手を試し、吉井裕鷹(アルバルク東京)や井上宗一郎(越谷アルファーズ)のように「所属チームでは控えでも代表では主力」という逆転現象も起こった。それは新しい人材の発掘に熱心だった証明だろう。

日本はまずドイツ戦で「世界を驚かせ」たい

 今回のW杯予選も当初は噛み合わない戦いが続いたものの、戦術の消化が進むとともに急速なレベルアップが起こった。攻守にアグレッシブな、テンポの速いスタイルは、バスケ初心者でも楽しめるはずだ。

 とはいえ大切なのはまず「目の前の結果」だろう。ホーバスHCは8月25日に組まれた初戦・ドイツ戦の重要性を繰り返し口にしている。徹底的な対策に加えてある程度の「ギャンブル」も必要になるだろうが、ドイツに対して世界を驚かせる結果を出すことが、チームの至上命題となる。

 若く伸びしろを残したチームだけに、24年のパリ五輪でもホーバスジャパンのさらなる成長をぜひ見たい。世界の強豪が見せる熟練のプレーと、日本代表のフレッシュな戦いが今から楽しみだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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