バスケ日本代表の比江島慎、侍J参考に「支える」  亡き母親とともに悔しさを晴らす戦いへ

テレビ朝日

近藤健介選手(左)とお互いのサインを入れた日本代表のユニフォームを交換した比江島 【(C)テレビ朝日】

ワールドカップ前に帰省でリフレッシュ

 5月中旬、「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」に向けた日本代表候補に名を連ねる比江島慎の姿が福岡県にあった。

 所属する宇都宮ブレックスは2022-23レギュラーシーズン、32勝28敗で東地区3位。王者として臨んだシーズンだったが、「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2022-23」出場を逃す結果に終わった。中止となった2019-20シーズンを除き、過去5大会すべてに出場した比江島にとっては一足早いオフシーズン。日本代表合宿が始まるまでの時間を使って、地元に帰省していた。

 目的は小さな頃から大ファンで、チケットを購入して1人観戦するほど応援しているという福岡ソフトバンクホークスの試合観戦、そして2018年4月21日に他界した母のお墓参りをするためだ。

 初日はまず福岡PayPayドームへ。試合前の練習にて人生で初めてグランドレベルに降りると、続々と選手たちがやって来た。「うわー! ヤバいです!」、「ギータ(柳田悠岐)が来た、ギータが来た、本物だー」、「斉藤和巳(一軍投手コーチ)さん、カッコいい!」と、興奮さめやらず、その様子はまるで“野球少年”。そんな比江島のもとに近藤健介が登場し、ミニ対談が実現した。

福岡PayPayドームで試合前の練習を見学した比江島は、近藤健介選手(左)と対談 【(C)テレビ朝日】

 近藤は名門横浜高校出身で、2011年に北海道日本ハムファイターズからドラフト4位指名を受けて入団。2022年12月にソフトバンクへ移籍すると、2023年3月に開催された「第5回ワールド・ベースボール・クラシック」では侍ジャパンの一員として優勝に貢献した。

 バスケットボール好きで、NBAの試合を現地観戦したこともあるという近藤を前に、シャイな比江島は緊張した面持ち。それでも、「WBCではなんであんなに淡々と打率を上げられたんですか?」、「世界で戦うメンタルを教えてください」などと積極的に話しかけたなか、心に刺さった近藤の言葉がある。

「(大谷)翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)もダルビッシュ(有/サンディエゴ・パドレス)もいる。正直、誰も俺を見てないだろうな……みたいな(笑)。僕の(打順の)後ろに翔平いましたし。僕自身なんかのプレッシャーは試合に入っちゃえば……『もうやるしかないっしょ!』みたいな! ダルさんとかメジャーの選手が引っ張ってくれたので、僕らも負けじと『自分のやれることを頑張ろう!』と。ミスしても成功しても『とにかくやるしかないっしょ!』と。その相乗効果で、チーム力で勝てたなと思いますね」

 比江島は自身の立場と照らし合わせ、「大谷選手、ダルビッシュ選手が日本代表でいう(八村)塁(ロサンゼルス・レイカーズ)と(渡邊)雄太(フェニックス・サンズ)。だから、僕も、塁や雄太を支えるような役目ができたらと思いました。近藤選手の話を聞いていて、自分と重なりました」。八村のワールドカップ不参加が決まったが、最年長選手として渡邊をはじめチームメートをフォローしていくことに変わりない。2人は最後に互いのユニフォームにサインを入れ、交換した。

「サッカーワールドカップから始まって、日本も本当にサッカーが盛り上がって。それで野球もWBCで優勝できたので。是非バスケも一勝できるように頑張ってください。今度はこのユニフォームを着て、ワールドカップを応援します!」(近藤)

「僕もWBCを見て本当に感動して。やっぱり日本の皆さんに勇気だったり、元気だったりと、本当に僕も実際それをもらったっていうのを実感してるんで。そういったチームを目指して、僕らもバスケで、日本中を盛り上げられるようにやっていきたいと思います。しっかりとバトンを受け取りました!」(比江島)

 比江島は観客席に移動して試合観戦。ホームランを放った近藤の活躍に「今日は忘れられない1日! ワールドカップに向けて、まじでパワーをもらえました!」と刺激を受けたようだ。

思い出深い聖地を訪問、少年時代を回顧

アクシオン福岡は比江島にとって“伝説の始まりの体育館”だ 【(C)テレビ朝日】

 比江島は思い出の体育館であるアクシオン福岡にも訪れた。古賀ブレイスに所属していた小学生時代、福岡県のバスケットボールにおける聖地で大活躍した試合がある。女手一つで比江島家を支えた母親が仕事を休んで応援に駆けつけた決勝戦だ。

「それはうれしかったですよ。子どもの頃なんて特に。いいところを見せようと、めちゃめちゃ気合いが入って。言うまでもなく、めちゃ点を入れて、めちゃ活躍しました! その試合、初めて勝ったんですよ!」

「お母さんのパワーはすごいです」。一度も勝ったことがない強豪チームを下し、全国大会出場の切符をつかむと、勢いそのままに全国優勝を達成した。キャリアで多くの日本一を経験した比江島は照れながら振り返る。

「伝説の始まりの体育館ですよ! 優勝請負人伝説? ここで優勝してミニバス、中学、高校、大学、プロと、優勝させてきましたから」

 母親が決勝の観客席にいなかったら「勝てていなかったかもですね」と話し、「そうしたら全国にも行けていないわけだから、今の僕はいなかったかもしれません。今の僕があるのは、お母さんが見てくれた決勝で優勝したから。この体育館は思い出深い場所です!」と続けた。

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