沖縄で開催されるバスケのW杯はどんな大会? 24年パリ五輪の予選という側面も

大島和人

トム・ホーバスHCは21年9月から男子日本代表の指揮を執っている 【(C)JBA】

 FIBAバスケットボールワールドカップ2023(W杯)が8月25日に開幕する。開催国はフィリピン・日本・インドネシアの3カ国で、参加は32チーム。9月10日の決勝戦まで、16日間に92試合が行われる。準々決勝以降はフィリピン開催だ。

 バスケのW杯はサッカーやラグビーと同じように、4年に一度開催される代表チームの世界一決定戦。2006年の大会(当時はバスケットボール世界選手権/通称「世界バスケ」)が日本で開催され、スペインとギリシャがさいたまスーパーアリーナの決勝で戦ったことをご記憶のファンもいるだろう。

前回大会の優勝はスペイン

 ファンには説明不要だが、バスケはサッカーと同じく世界中で愛され、プレーされている競技だ。例えばNBAの最優秀選手賞は2018-19シーズンと2019-20シーズンがヤニス・アデトクンボ(バックス)、2020-21シーズンと2021-22シーズンはニコラ・ヨキッチ(ナゲッツ)、2022-23シーズンはジョエル・エンビード(76ers)とアメリカ国外で生まれ育った選手が立て続けに受賞している。

 NBAとアメリカがこの競技の世界最高峰であることは明らかな事実だが、男子代表について言えば「アメリカ一強」ではない。

 2019年のW杯中国大会を振り返ると、アメリカは準々決勝でフランスに敗れた。優勝はスペインで準優勝がアルゼンチン、3位はフランスという結果だった。ベスト8の勢力図を見るとヨーロッパが5チーム(スペイン、フランス、セルビア、ポーランド、チェコ)で、オセアニア(オーストラリア)と北米、南米から1チームずつだった。

 ただし2023年大会は前回準優勝で世界ランキング4位のアルゼンチンが大陸予選で敗れている。一方で今回のW杯では世界ランキング15位のカナダがNBAの有力選手を集めて優勝候補の一角に挙がるなど、この競技の国際勢力図は意外に流動的だ。

 NBAとW杯のような国際大会ではルールには多少の違いがある。分かりやすい差は試合時間で、NBAは1クォーター(Q)12分の48分制だが、FIBA(国際バスケットボール連盟)ルールはBリーグと同じ1Q10分の40分制。各チームの登録選手数も12名とかなり少ない。FIBAルールに慣れ、予選から高いレベルで競り合えるヨーロッパ勢にはアドバンテージがある大会なのかもしれない。

大会方式は3段階

 日程は3段階に分かれている。参加32チームはまずAからHまでの8グループに別れて、予選リーグ(1次ラウンド)を戦う。各組の上位2チームが「2次ラウンド」に進み、「AとB」「CとD」「EとF」「GとH」の組み合わせで、1次ラウンドで対戦していない2チームと戦う。1次ラウンド、2次ラウンドを合算した成績で上位2チームが決まり、8チームによるトーナメントへ進む。

 日本代表は1次ラウンド、2次ラウンド(もしくは17-32位決定戦)の5試合を沖縄アリーナで行う。沖縄にはグループE、グループFの8チームがやってくる。日本はドイツ、フィンランド、オーストラリアと同じグループEに振り分けられた。この組の2強に入ると、グループF(スロベニア、カーボベルデ、ジョージア、ベネズエラ)の2強と2次ラウンドを戦い、成績でトーナメント進出の可否が決まる。

 バスケのW杯がユニークなのは1次ラウンドの「勝ち抜け」を逃したチームにも順位決定戦待っていること。日本が仮にグループEの3位以下となった場合は「17-32位決定戦」としてグループFの2チームと2試合を戦うことになる。

「17-32位決定戦」が重要になる⁉

 この「17-32位決定戦」が、日本にとっては大一番になる可能性もある。それはW杯が2024年に開催されるパリ五輪の予選でもあるからだ。オリンピックのバスケットボール競技は出場が12チームだが、このうち7チームはW杯の成績で出場が決まる。アメリカ大陸とヨーロッパから2チーム、アジア、オセアニア、アフリカから1チームが“W杯枠”で選ばれる。

 日本にとっては「アジア最上位でパリ五輪出場を決める」ことが、W杯における最大の目標だ。そのためには中国、イラン、ヨルダン、レバノン、フィリピンという組の違う5カ国より上位に進出する必要がある。セカンドチャンスの世界最終予選もあるが、ヨーロッパのトップチームと競り合って勝ち抜くことは現実的でない。となるとW杯がパリ大会に向けた最大のチャンスだ。

 前回大会の成績を見るとアジアの代表チームは2次ラウンドに一つも進めず、地元中国が合計2勝3敗で大会を終えたのが最高成績だった。アジアは人口約45億人の巨大エリアにも関わらずこの地域で生まれ育った現役NBAプレイヤーが二人(八村塁、渡邊雄太)しかいない。つまりレベル的にヨーロッパ、南北アメリカから遅れを取っている。アジアからベスト16が出ない可能性は低いとはいえず、その場合は17-32位決定戦が「決戦」になる。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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