連載:今を輝くプロ野球選手の高校時代

今を輝くプロ野球選手たちの高校時代【ヤクルト編】 甲子園で“本盗&豪快弾”と決勝舞台に立った2人の投手

三和直樹

3年夏に甲子園に出場した山田は、豪快なホームランを放って能力の高さを見せた 【写真は共同】

 第105回目を数える夏の甲子園大会へ向けて、高校球児たちがすでに熱い戦いを繰り広げている。今回は彼らの「先輩」であるプロ選手たちの高校時代にスポットライトを当てる。
 セ・パ12球団別に選手3名ずつをピックアップし、甲子園での活躍を振り返りたい。今回はヤクルト編だ。今をときめくスター選手の高校時代を振り返るとともに、ぜひ先輩たちの後を追いかける高校球児の活躍もチェックしてほしい。

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山田哲人:履正社(大阪)

 プロで「ミスタートリプルスリー」、「ミスタースワローズ」の称号を得た男は、2010年の3年夏に一度だけ甲子園の舞台に立った。

 履正社(大阪)入学後、1年夏からベンチ入りし、2年夏は二塁手、2年秋から遊撃手のレギュラーとなった。そして、ひと冬で急成長を遂げ、3年春に大阪大会優勝、近畿大会準優勝の原動力となり、走攻守三拍子揃った選手としてプロのスカウト陣からも注目される存在となり、迎えた最後の3年夏、履正社は激戦区を勝ち抜いて6年ぶりの夏甲子園出場を果たした。
 
 そして1回戦は中村奨吾(現ロッテ)を擁した天理(奈良)と対戦して4対1の勝利を収め、山田は「3番・遊撃」で3打数2安打をマーク。5回の第3打席では三塁打を放ち、さらに2死一、三塁から一塁走者が一、二塁間に挟まれている間に俊足を飛ばして本盗成功でスタンドを沸かせた。

 続く2回戦では、歳内宏明(元阪神、ヤクルト)が2年生エースに君臨していた聖光学院(福島)と対戦し、山田は第2打席にヒットを放つと、第3打席は完璧なスイングでレフトスタンドへのホームランを放った。試合は2対5で敗れて涙を飲んだが、山田は自身初の甲子園で6打数4安打2打点1盗塁と自身の能力を証明した。

 プロ入り後のトリプルスリー達成への片鱗をしっかりと見せた山田が当時、履正社の先輩であるT-岡田にかけて「T-山田」と呼ばれていたことも懐かしい。

 今春のセンバツ大会に出場した履正社だが、春季府大会ではベスト32で敗れたために、夏はノーシードからの登場となる。森沢拓海主将(3年)を中心に勝ち上がり、ライバル・大阪桐蔭を倒し、井上広大(現阪神)らを擁して全国制覇を成し遂げた2019年以来、4年ぶりの夏の甲子園切符をつかみ取れるか。

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高橋奎二:龍谷大平安(京都)

 龍谷大平安(京都)の本格派左腕として春夏通算3度(2014年春、夏、2015年春)、甲子園に出場し、現チームで唯一、「甲子園優勝投手」の肩書を持つ。

 1年秋からベンチ入りし、2年春には背番号10の主戦投手として4試合に先発登板し、計23回1/3イニングを投げて自責4の防御率1.54の好成績を収めた。特に準決勝で佐野日大(栃木)の田嶋大樹(現オリックス)とハイレベルな投げ合いを演じ、9回1失点の完投勝利を収めて見せた。続く決勝戦は、プロでチームメイトとなった中山翔太(現ヤクルト)を擁した履正社(大阪)と対戦し、自身は3回途中でマウンドを降りたが、チームは6対2で勝利して日本一となった。

 当時、右足を高く上げるダイナミックなフォームで「左のライアン」と呼ばれた男は、2年夏は開幕戦となった春日部共栄(埼玉)戦で先発して6回2/3を2安打無失点、8奪三振の好投、続く3年春は1回戦で浦和学院(埼玉)を相手に延長11回2失点の熱投を披露するも、チームはともに初戦敗退となった。

 3年夏は直前に故障した影響で府大会の4回戦で敗れた龍谷大平安と高橋だったが、ヤクルトからの3位指名された後は、その悔しさをプロの舞台でぶつけている。

 龍谷大平安は11日に田辺との初戦を迎える。春のセンバツを終え、5年ぶりに夏の甲子園を目指す戦いとなるが、今回は山口翔吾主将(3年)が選手宣誓の大役を務める。前回の夏の甲子園出場時も、当時の松田憲之朗主将が同じ大役を務めていただけに、「吉兆」に乗れるか期待したいところだ。

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奥川恭伸:星稜(石川)

 この男の高校時代を振り返られずにはいられない。エースとして2年春から4季連続(2018年春、夏、2019年春、夏)で甲子園に出場し、通算12試合、87回1/3イニングを投げて計100奪三振、防御率1.55をマークした。

 2年春は救援で3試合に登板し、2年夏は先発としてマウンドに立ったが、2回戦で済美(愛媛)に延長13回逆転サヨナラ負け(自身は4回1失点)を喫した。その悔しさを胸に最終学年で大きく成長し、3年春は初戦で小深田大地(現DeNA)、井上広大(現阪神)らを擁した履正社(大阪)を相手に9回3安打、17奪三振での完封劇を披露。続く習志野(千葉)に敗れたが、自身は9回7安打2失点で10奪三振と力投した。

 そして迎えた集大成の3年夏、奥川は特大のインパクトを残す。150キロ超の重いストレートを武器に相手をねじ伏せ続け、初戦の旭川大高(北海道)を9回3安打無失点、立命館宇治(京都)は救援登板で2回1/3イニングを無失点、そして黒川史陽(現楽天)と細川凌平(現日本ハム)の1、2番に、小林樹斗(現広島)と東妻純平(現DeNA)のバッテリーを擁した智弁和歌山(和歌山)を相手には、激戦の中で延長14回を3安打1失点(自責点は0)に抑えてチームを勝利に導いた。さらに中京学院大中京(岐阜)を相手にも7回を2安打無失点で、準決勝まで防御率0.00の“ゼロ行進”を続けた。

 だが、春の再戦となった履正社との決勝戦では、奥川が3回に井上に逆転3ランを被弾して3対5の敗戦(奥川は9回11安打5失点)。星稜としては、24年ぶりの決勝進出で同校春夏通じて初の優勝まで“あと一歩”に迫ったが、またも夢破れる結果になった。それでも奥川の熱投に加え、捕手・山瀬慎之助(現巨人)、2年生4番・内山壮真(現ヤクルト)がいたチームの戦いぶりは、多くのファンの記憶に強く刻み込まれている。

 7月11日に開幕する今年の石川大会は、星稜と日本航空石川の“2強”の争いと目されている。この2校は、昨秋と今春の県大会、さらに北信越地区大会の決勝で対戦し、日本航空石川が2勝1敗とリードしている。果たして“最後の夏”はどうなるのか。注目が集まる。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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