三浦/木原、坂本、宇野が世界選手権を制した2022-23シーズン コロナ禍を経て会場に戻った熱気は、来季も続く

沢田聡子

飛躍のシーズンとなった三原、底力をみせた坂本

メダル獲得にはミスを最小限に抑えることが必要だった 【写真:ロイター/アフロ】

 近年圧倒的な強さを誇っていたロシア勢の不在もあり、今季の女子シングルではトリプルアクセルや4回転といった高難度ジャンプに挑む選手は少なく、演技の完成度が勝負を分ける試合が多かった。

 今季シニアデビューしたイザボー・レヴィト(アメリカ)は、そんな現状に適応した強さをみせたといえるだろう。大技は持っていないものの、跳ぶ選手が限られる3回転ルッツ―3回転ループを武器にしており、またジャンプの前後に凝った動きを入れられる能力を持つ。また16歳とは思えない情感豊かな滑りも強みで、グランプリファイナルでは銀メダルを獲得。世界選手権でも表彰台まであと一歩の4位に入っており、多くの名スケーターを輩出してきたアメリカ女子を牽引する存在となっている。

 また、昨季の世界選手権銀メダリストであるルナ・ヘンドリックス(ベルギー)も安定した強さをみせた。欧州選手権で銀メダル、グランプリファイナルと世界選手権では銅メダルを獲得。23歳のヘンドリックスにはダイナミックなジャンプと成熟した滑りがあり、大人のスケーターとして長く活躍してくれることを期待したい。

 シーズンが進むにつれて調子を上げ、四大陸選手権で優勝、世界選手権でも銀メダルを獲得したのは18歳のイ・へイン(韓国)だ。伸びやかな滑りと安定感のあるジャンプを武器にする彼女の強さは、ジュニア世代にも優れた選手がひしめく韓国女子の充実ぶりを象徴しているともいえる。

 実力はありながら難病や体調不良で苦しんできた三原舞依にとり、今季は飛躍のシーズンとなった。グランプリシリーズで連勝し、初出場したグランプリファイナルでも優勝、ついに世界の頂点に立っている。世界選手権では万全の状態ではなく5位という成績だったが、名実ともに世界トップクラスのスケーターとなって臨む来季こそ、シーズンの最後まで本来の滑りをみせてくれるだろう。

 昨季北京五輪銅メダル、世界選手権優勝という最高の結果を残した坂本花織は、今季序盤は重圧に苦しんだ。しかし5位に終わったグランプリファイナルをきっかけに気持ちを切り替え、全日本選手権で優勝、世界選手権でもミスを引きずらない強さをみせて連覇を果たしている。ショート・フリーともに新たな振付師に依頼して表現の引き出しを増やしたシーズンでもあり、来季はどんな坂本がみられるのか、楽しみでならない。

日本のカップル競技にとって歴史的なシーズン

ついに世界選手権金メダルを手にした“りくりゅう” 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 そして、今季は日本の弱点といわれてきたカップル競技が大きく前進した画期的なシーズンでもあった。

 アイスダンスでは、全日本選手権で優勝した村元哉中/高橋大輔が世界選手権に出場。目標としていたトップ10入りにわずかにとどかず11位となったが、会場のさいたまスーパーアリーナを包んだ熱気は二人の魅力によるものだろう。村元/高橋は今年5月に現役引退を表明したが、日本のアイスダンスへの関心が今後も続くことを願う。

 そして、ペアでは三浦璃来/木原龍一がついに世界選手権の金メダルを獲得した。グランプリファイナル、四大陸選手権でも優勝している二人は、日本勢として初のシーズングランドスラムを達成。日本の歴史に名を刻んだ三浦/木原だが、今もなお向上心を持って前進し続けている。二人を目標とする日本のペアが、後に続くことを期待したい。

 カップル競技でも好成績を残した今季は、日本が真のフィギュアスケート大国への道を歩み始めたシーズンだったといえる。コロナ禍を経て、ようやく会場にも熱気が戻ってきた。来季も、世界中のスケーターが氷上で繰り広げる華麗な戦いから目が離せない。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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