「14試合で勝ち点30」は目標通り J2首位の町田から見えてきた課題と“伸びしろ”

大島和人

町田は第14節を終えて勝ち点30のJ2首位 【(C)FCMZ】

「7試合で勝ち点15」のペース

 J2は22チームによるホーム&アウェイのリーグ戦だから、各チームは1年に42試合を戦うことになる。5月7日の第14節で、各チームはシーズンの「3分の1」をちょうど終えた。現在の首位は勝ち点30のFC町田ゼルビア。ゴールデンウィークの3試合を2勝1分けで切り抜け、首位を譲らなかった。

 7日のファジアーノ岡山戦は雨中の戦いで、前半16分に先制を許す展開だった。ただ後半の布陣変更も奏功して追いつき、1-1で引き分けた。試合後に黒田剛監督はこう述べている。

「7試合を1クールとして考えている我々は、(1クールで)勝ち点15を目標にしています。第2クール終了の勝ち点が30となり、第3クールの第21節終了時点で45に到達するかどうかが、今後の課題になります」

 黒田監督はシーズン前から「年間勝ち点90」「失点30」という具合に、ハッキリとターゲットとなる“数字”を口にしていた。42試合を「7」で割り、1年間を6つの“クール”に分けて、各クールの基準を「勝ち点15」に設定している。昨シーズンのアルビレックス新潟は「勝ち点84」でJ2を制しているので、勝ち点が90に届けば目標のJ2優勝も手中にできる……というストーリーだ。

リード後の展開に課題も

 チームが首位に立てば相手から研究、対応される。第7節までの「第1クール」で猛威を奮っていた町田のカウンター攻撃は、当初ほどハマらなくなっている。リードした展開下の「相手を引き込んで守る」試合運びが機能していたのは、ロングボールからのプレスがハマっていたから。これによりカウンターからの得点が量産され、なおかつ「守備が一息つく」時間も確保できていた。

 第12節・ロアッソ熊本戦、第13節・大宮アルディージャ戦は町田が先制して逃げ切る展開だったが、チームは奪ったボールを逃がす、生かす部分で苦しんでいた。町田の失点数「7」はJ2最少だが、第2クールの直近7試合に絞ると6失点を喫している。決して悪い数字ではないが、“リードしている状況”の攻守は浮上しつつある課題だ。

多彩な布陣、組み合わせが機能

大卒2年目の荒木駿太は多様な使われ方に対応している 【(C)FCMZ】

 とはいえこのチームにはなお伸びしろがあり、指揮官の“引き出し”にもまだオプションは残っていそうだ。チームは開幕から様々なシステムを活用しているが、7日の岡山戦は後半から中盤をダイヤモンド型に並べる[4-1-3-2]の新布陣を使った。

 黒田監督は狙いをこう説明する。

「荒木(駿太)を入れてセカンドボールを拾える状況を作りたかった。守備に関しても荒木が帰陣すれば、3ラインは形成できる。攻撃面においてセカンドボールを拾う意識が高い選手を入れて、ゴール前のチャンスを増やす意図だった」

 大卒2年目の荒木駿太は、町田の“便利屋”として重用されている。運動量やスピードに恵まれ、攻守に気が利き、なおかつ両足の一振りがある――。そんな彼は序盤戦に“スーパーサブ”として得点を量産し、第9節から第13節は2トップの一角や左右のサイドハーフとして先発で起用されていた。岡山戦は46分からの起用で、位置は今季初のトップ下だった。

 練習でも試していない形だったそうだが、これが後半の反攻を呼び込む一つの打ち手になった。

 町田が先制を許すのは今季3回目で、過去2回は0-1で相手に逃げ切られている。前半の失点だったので状況は違うが、「流れを変える」「追いつく」部分で、岡山戦の後半は一つの収穫だった。町田は相手や展開に応じて布陣や選手の組み合わせをこまめに変える。「どんな形もおおよそ狙い通りに機能させる」のがチーム、黒田監督の密かな強みだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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