「14試合で勝ち点30」は目標通り J2首位の町田から見えてきた課題と“伸びしろ”

大島和人

ルーキー平河悠が台頭

平河悠は2001年生まれの22歳で、パリ五輪世代でもある 【(C)FCMZ】

 今季の町田はエリキ、デュークといった大物外国人選手の存在がある一方で、若手の底上げが大きい。例えば平河悠は両外国人や荒木、高橋大悟とともに前線のキーマンとなっている。特別指定選手のキャリアがあるとはいえ、彼は山梨学院大から加入したルーキーなのだが、ここまで全試合に先発して3得点。消耗が激しいサイドハーフながら、フィールドプレーヤーではサイドバックの翁長聖に次ぐ出場時間を記録している。

 平河が岡山戦の55分に決めた今季3得点目は、右サイドから流れてきたクロスを収め、エリア左角付近からカットインして対角に流し込むビューティフルゴール。その視野、スキルを証明するものだった。

 平河はゴールの場面をこう振り返る。

「相手のサイドハーフと1対1を始めたときに後ろの選手がいたのが見えて、縦に行ったら食いつくだろうなと思いました。カットインに変えて、キーパーとゴールの位置を分かった上でドリブルして、サイドネットに打ち込みました」

 平河は右利きながら「左側から抜く」「左足で蹴る」プレーも自然にできるタイプ。だから“縦”を切る相手の対応は自然なのだが、彼はそれを逆手に取って得点につなげた。

 一方で彼は自らの課題も口にする。

「理想を言えば(ボールが)逆サイドにあるときに、もっと早くゴール前に入って、ダイレクトで打つポジショニングを取りたかった。そこは自分が今、課題に持っているところです」

個人、チームの「成長」に期待感

 結果的に彼はゴラッソを決めたのだが、確率論を言うなら右クロスに直接詰めるほうが得点につながる確率は高い。それができるようになれば、平河はよりスーパーな選手になるだろう。

 ただ開幕からの14試合で、この22歳は明らかに成長している。特に目を見張るのが守備面の貢献だ。1試合平均のタックル数「3.6」はJ2全体の4位。カウンターにつながる前向きのボール奪取、ピンチの芽を詰むカバーリングと、「守備の見せ場」が増えている。

「自分は守備が得意なサイドハーフでしたけど、去年も(特別指定選手として町田でプレーして)サイドバックを経験させてもらいましたし、守備力は去年から付いてきたと思います。(今シーズンは)例えば逆サイドにボールがあるときのポジショニング、クロス対応のところは、何回も動画を見せられて言われることがあります。GPS(のデータ)も走行距離、スプリント回数などを取り上げて言われます。そこにはサイドハーフが特に求められているところです」(平河)

 過去のシーズンを振り返っても、J2を制するのはシーズン中に伸びたチームだ。J2首位の町田とて今が“完成形”ではないし、直面する課題もある。しかし荒木や平河といった若手の台頭は明るい材料だし、黒田監督やコーチングスタッフも岡山戦のような策を用意しているだろう。課題はあるのだが、それ以上に“伸びしろ”への期待感が強い――。町田は結果だけでなく、シーズン残り3分の2で「どう変化するのか」が楽しみなチームだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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