終盤に強度を上げて相手を圧倒するJ2町田 黒田監督と選手が語る“勝利の方程式”
ダメ押しゴールを決めてベンチに駆け寄る荒木駿太(右) 【(C)FCMZ】
今季の町田は大胆な選手補強、大幅な入れ替えを敢行している。特にFWはオーストラリア代表のミッチェル・デューク、2019年と20年に横浜F・マリノスで大活躍を見せていたエリキを並べる“超J2級”の顔ぶれだ。もっとも交代枠が「5」に拡大されたアフターコロナのサッカーは、ベンチメンバーの活用が必須となっている。残り30分頃からフレッシュなアタッカーを投入し、流れを変える采配は現代サッカーの定石といっていい。
見えてきた町田の「勝利の方程式」
町田は第2節・ザスパ群馬戦、第3節・ツエーゲン金沢戦とも、「前半に先制し、終盤に追加点を挙げる」展開で勝ち点3を奪っている。スコアは群馬戦が2-0、金沢戦が2-1。群馬戦は84分、金沢戦は91分に2点目を決めていて、得点が必要な相手の焦りを生かした流れだった。
黒田監督は金沢戦後にこう説明している。
「後半に関しては、0-0のプランを大きく崩さず、守備をしっかりとしながら攻撃に入っていくことを徹底しました。2点目を取り急ぐことなく、1-0のまま進めながら、チャンスが来た勝負どころで2点目を奪いに行く。それが我々の勝つための方程式だと思っています」
両試合の後半に起用されたインパクトプレイヤーがFW荒木駿太、FW沼田駿也、MF稲葉修土の3名。この3名がピッチに立つと、町田はプレスのインテンシティが明らかに上がる。特に金沢戦は74分の3枚替えで荒木、沼田、稲葉がピッチに入ると、流れは一気に町田へ傾いた。荒木は83分の決定機こそ決め切れなかったが、91分にGKとの1対1の場面でしっかり流し込んで勝利の立役者になった。
前線からのプレスで流れを作る
「プレスの行き方、サイドバックが持ったときに背後へ抜ける動きを、監督と(金)明輝さんに言われていました。あと個人的には時間が経過するなかで『セカンドを拾われているな』という感覚があったので、そこを拾えるとチャンスが増えるかなとも思っていました。自分の分析、監督や明輝さんに言われたことを意識しながら試合に入りました」
ボランチの下田北斗はこう口にする。
「交代で入ってきた選手がパワーを出してくれていますし、前から(プレスの)スイッチが入っている。僕らもそれについて行って、パワーを落とさないようにみんなでやっていければいいと思います。今日は途中から出て点に絡んでくれたけれど、そういう選手がいるとチームも活性化するし、助かりました」
黒田監督はこのように分析する。
「沼田駿也や荒木駿太、稲葉修土らが入ることで前線が活性化します。相手はどんどん前から行きたい状況にもかかわらず、後ろにプレスが掛かるわけですから。嫌な時間帯に、嫌な選手が入って来る、相手がとてもやりにくい状況を作れています。これが1つの町田の形になるのかなと彼らを起用しましたし、彼らも期待に応えてくれました」
黒田剛・新監督(中央)は青森山田高の指揮を長く執っていた 【(C)FCMZ】
ハイプレスはリスクもある
荒木は言い切る。
「プレッシングが自分のストロングポイントだし、そこを期待して監督は自分を使ってくれています。あれをやってこそ自分だなと思っています」
ただ群馬戦、金沢戦の終盤に町田が見せた前線のプレッシングは“やりすぎ”に思えるほどの強度だった。誰かが激しくプレスに行っても、他の選手が呼応しなければ、逆にスペースは空く。フィールドプレイヤー10名のうち誰かがサボれば、考えがズレていたら、むしろ守備の穴を作る無駄な動きとなる。
しかし直近の2試合は1人目が相手のプレーを限定しつつ、2人目以降が「その次」「次の次」へプレッシャーに行けている。苦し紛れに蹴ってくれれば、そこには圧倒的な高さを持つCBが待ち構えている。追い込みどころ、奪いどころを皆が共有した上で「行く」「行かない」というメリハリをつけられているから、穴にはなっていない。