本命は存在しない…ダビド・ビジャがクラシコに言及 古巣バルセロナの若き象徴は「既に世界最高のMF」

工藤拓

3月15日、オンライン取材に応じたダビド・ビジャ 【画像提供:LaLiga】

 3月19日(日本時間20日早朝)、首位のFCバルセロナ(勝ち点65)と、2位のレアル・マドリード(勝ち点56)による今季4度目となるエル・クラシコがカンプ・ノウで開催される。

 伝統の一戦を前に、元スペイン代表FWダビド・ビジャが世界各国のメディアが参加したオンライン取材に応じた。ビジャは古巣バルセロナの現状や優勝争いを大きく左右する一戦についてどのように語ったのか?(取材日:3月15日)

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クラシコは世界屈指の強豪同士による拮抗した一戦に

――シャビは難しい状況でバルサの監督を引き受け、今では首位を独走している。ここまでの成功を予想していたか。シャビの監督として優れている点は何だと思うか(中国)

 シャビはチームメートである以前に一人の友人だ。あの状況で監督を引き受けたのは勇気ある決断だったと思う。当然ながら選手としての彼のことは知っているが、監督としてはあまり知らない。それでも現役時代から戦術を深く理解し、戦術面でチームを支えていた。彼のような選手はいつの日か優れた監督になると予感させるものだ。そうなるために必要な要素を全て兼ね備えているからね。直接指導を受けたことがないので監督としての能力を細かく分析することはできないが、彼が行なっている仕事の素晴らしさは結果が証明している。今後も彼が成功し続けること、週末の試合に勝てることを願っている。

――今回のクラシコはレアル・マドリー有利と見る識者が多いが、どう予想するか(マレーシア)

 自分の経験から言うと、クラシコの勝敗にはそれまでの数試合の結果は影響しない。クラシコは他とは異なる特別な試合だ。チームが抱える好不調の流れはあっても、レフェリーが試合開始のホイッスルを吹いた瞬間に全てが一変する。だからクラシコに本命は存在しない。順位上の立場から言えば、勝ち点で上回るバルサの方が余裕のある立場にあり、マドリーの方が勝利を必要としていることは明らかだ。それでも本命は存在しない。これまでの流れとは全く異なる、世界屈指の強豪同士による拮抗した一戦になるはずだ。

――ラフィーニャのバルサへの適応具合はどうか。彼はチームにおいてどれくらい重要な選手か(ブラジル)

 バルサの鍵を握る選手の一人だと思う。どの時代においても、バルサが成功を手にした時代には突破力に優れ、MFが攻め上がるスペースを作ることのできるエクストレーモがいた。ラフィーニャもその系譜を継ぐ大型補強だと思っている。彼のことはリーズ時代から知っていた。友人であるロドリゴ(モレノ)や(ジャック)ハリソンがプレーしていることで、以前からリーズの試合はよく見ていたのでね。彼の特徴はよく知っている。バルサでは素晴らしい仕事をしているよ。攻撃の選手はゴールやアシストばかり評価されがちだが、彼はそれ以外の部分でチームに多くをもたらしている。自分もバルサで同じポジション、右ではなく左のエクストレーモでプレーする機会を得られたが、バルサのエクストレーモにはゴールやアシスト以外にも多くの仕事が求められる。チームメートのプレースペースを作ることなどね。ラフィーニャはそれらを含め、あらゆる面で素晴らしい仕事をしていると思うよ。

――今季のバルサはリーグ優勝に向けて邁進しているが、まだ若いチーム。攻守にどんな改善の余地があると思うか(インドネシア)

 それは常に必要なことだよ。バルサのようなクラブでは、常に上を目指し続けることが義務付けられる。今日手にした成功も、明日には何の価値も持たない。日々成長することが求められる。シャビはバルサというクラブを熟知しており、同じように考えているはずだ。今季は2位以下に大きな勝ち点差をつけており、週末のクラシコで良い結果を手にすればタイトルに大きく近づくことになる。それでも来季はさらにチームを強化し、プレーレベルを上げる必要があると考えているだろう。バルサのようなクラブでは当たり前のことであり、成功している時でも常に改善点を模索する必要がある。そうでなければ、国内ではマドリーとアトレティコ、ヨーロッパでは多くのビッグクラブとの競争を勝ち抜くことはできない。

ペドリとガビは既に世界最高のMF

ガビ(左)とペドリ(右)を「既に世界最高のMFと言えるレベル」とビジャは太鼓判を押す 【Photo by Joan Valls/Urbanandsport /NurPhoto via Getty Images】

――若いバルサの象徴であるペドリとガビをどう見ているか(司会者)

 現時点で既に世界最高のMFと言えるレベルだと思う。ありがたいことにスペインで生まれてくれたことで、自分たちは毎週末彼らのプレーを楽しむことができている。2人にはシャビ、イニエスタとの共通点があると思うが、まだ彼らが到達した高みには達していない。一方でシャビ、イニエスタよりはるかに若い年齢でバルサのトップチームやスペイン代表の主力に定着したことは事実だ。2人はあらゆるクラブ、あらゆるリーグが欲するタレントであり、幸運にもバルサとラ・リーガでプレーしている。自分たちがすべきは2人のプレーを楽しみつつ、彼らの成長を支えることだ。現時点で既に世界最高レベルのMFではあるけど、まだ20歳と18歳でしかない。成長の過程にある年齢であり、今よりさらに伸びる可能性を秘めているからね。

――ワールドカップ南アフリカ大会を振り返って、キャリア最高の瞬間だと思うか(南アフリカ)

 南アフリカについての質問をされるたび、素晴らしい思い出が蘇って顔が緩んでしまうよ。南アフリカでは優勝という目標を達成しただけでなく、現地の人々から受けた手厚い歓迎、一つ一つの試合、練習など、過ごした日々の全てが素晴らしい経験だった。それらの記憶は長い年月が過ぎても鮮明に思い出すことができる。この質問には100%そうだと答えるよ。これまでスペインや他国のリーグ、ヨーロッパやその他の地域でプレーし、多くの成功を勝ち取ってきたけど、ワールドカップを手にした南アフリカの決勝がキャリア最高の瞬間じゃないかな。

――バルサが10年前のようなプレーができなくなったという見方には同意するか。レバンドフスキの現在の状態をどう評価するか(ポーランド)

 一つのクラブが常に同じようにプレーし続けることはあり得ないと思う。フットボールは進化し続けており、どのクラブもそれに合わせて修正、改善を繰り返している。一つのフィロソフィーを貫くクラブはあっても、プレーはフットボールの現状に合わせて変えていかなければならない。現在、フットボールはよりフィジカル面での要求が高くなっている。バルサは明確なフィロソフィーを保ちながら、そのような変化にうまく適応していると思う。

 レバンドフスキについては、常に良い状態でプレーしているように見える。どんな選手にも好不調の波はあるが、彼のような選手は好調時に素晴らしいプレーをするだけでなく、ゴールから遠ざかっている時でもチームに多くをもたらすことができる。彼は以前からラ・リーガで見たかった選手。今はいちファンとして、彼がバルサで長くプレーし、多くのゴールを積み重ね、多くの成功をもたらしてくれることを期待しているよ。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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