本命は存在しない…ダビド・ビジャがクラシコに言及 古巣バルセロナの若き象徴は「既に世界最高のMF」

工藤拓

バルサの成功の秘訣は「守備の安定」

25試合でわずか8失点という守備の安定感は今季のバルサにおける特筆すべき点だ 【Photo by David Ramos/Getty Images】

――バルサはクラブとして難しい状況にありながら、チームは25試合でわずか8失点という記録を樹立している(司会者)

 そうだね。チームが成功するためには守備の安定が不可欠。それは攻撃の選手だった自分にも否定できない真実だ。5-0の大勝や、30ゴールを決めたFWは注目を集め易い。ただどんなスタイルでプレーし、どれほど得点力が高くても、リーグ制覇を成し遂げるチームは必ず守備が安定しているものさ。今季のバルサの秘訣もそこにある。プレーの質は高く、ビルドアップはファンタスティックで、前線には多くのゴールを決められるFWがいる。それでも、ここまでマドリーや他のライバルとの勝ち点差を広げてきた一番の要因は失点の少なさにある。攻め勝つスタイルを貫いてきたバルサにとっては珍しいことながら、フットボールにとってもバルセロニスモにとっても良いことだよ。

――奇しくも南米のアルゼンチンがワールドカップを制した今季、ラ・リーガは南米出身のスター選手が不在の状況が続いている。得点ランキングのトップ10に南米人選手は一人もおらず、アシストランキングにもロドリゴしかいない。ビニシウスやラフィーニャがいながらこうした状況になっていることをどう見るか(コロンビア)

 そういう傾向なわけではなく、一時的なものだと思うよ。どのクラブも様々な国籍の選手に目を向けるようにはなっているけど、国籍で選手を選んでいるわけではない。どのクラブもヨーロッパの選手が何人、南米の選手が何人必要だと考えてチームを作っているわけではなく、チームに必要な選手を探して獲得している。他国のクラブに流れているのかもしれないけど、気に留めるような傾向ではないと思っているよ。メッシがバルサにいた間はゴール、アシストともランキングの上位に君臨していたけど、それは何も数百人もの南米人選手がラ・リーガでプレーしていた結果ではない。メッシという一人の選手がラ・リーガにいたというだけのことさ。


――現在ラ・リーガでプレーする韓国人選手は一人しかいない。韓国やアジアの選手がラ・リーガでプレーするために伸ばすべき能力は何か(韓国)

 選手は一人一人異なるので答えるのは難しいね。アメリカや日本でプレーしていた頃にはそういう質問をよく受けたよ。一般論としていつも答えているのは、世界のどこでプレーするにせよ、成功のベースとなるのはたゆまぬ努力だということ。自分から言えるのはそれしかない。さらに掘り下げるためには韓国の各クラブの育成事情などを知る必要がある。繰り返すが、どの国であれ選手は一人一人異なるので、一つの決まった方法など存在しない。ラ・リーガでプレーするのはどの国の選手にとっても難しいもの。ラ・リーガは何年にも渡って世界最高峰のレベルを保っているわけだからね。最高のリーグでプレーするのが難しいのは当然のことであり、今まで以上の努力を積み重ねるしかない。それは韓国人選手だけでなく、世界中の選手に言えることさ。

――大怪我による長期離脱を乗り越えた経験を持つ選手として、以前のパフォーマンスを取り戻せていないアンス・ファティをどう見ているか(日本)

 良い状態に見えるよ。彼はまだ若い。ペドリやガビ、ビニシウスについても同じようなことを話したけど、彼らはとても若い選手だ。にもかかわらず、周囲はあまりに多くを要求してしまっている。自分は彼と同じ年齢の頃、2部リーグでプレーしていた。彼らには成長するために必要な過程を用意すべきだ。アンスはさらに大きな怪我で長らくピッチを離れていた。自分が怪我したのは31歳の頃で、もっと経験を積んでいたから状況が異なる。それでもプレーするたび、良い状態だと見ているよ。先発であれ途中出場であれ、やるべきことをやっていると思う。19、20歳の選手がバルサで絶対的な存在となるのは難しい。長期離脱を経験した後ならなおさらだ。周囲の人間がやるべきは彼を支え、応援し、信頼してやること。素晴らしい才能を持ち、この先素晴らしいキャリアを築いていく選手なんだからね。

――現在のバルサとマドリーで、現役時代に共にプレーしてみたかった選手を一人ずつ挙げるとすれば誰か(英国)

 自分にとって都合の良さそうな選手を選ぶとすれば、バルサはペドリ。多くのゴールをアシストしてくれたイニエスタに最も近く、後方でプレーしてくれたら多くのゴールを決められそうだからね。マドリーではロドリゴとモドリッチ。同じく多くのゴールをアシストしてくれるだろう。ロドリゴもサイドでプレーしながら多くのゴールを決める選手だけど、中央でプレーする際にはアシストもできるから、2人ともチームメートに欲しいな。自分の都合を優先した意見だけどね。

――レアル・マドリーは今季のCLの本命か。カゼミロが抜けてチュアメニが加わった今季は昨季より良いチームになっているか(ポーランド)

 バルサと同じく、マドリーはコンペティションを問わず常に優勝候補だ。今季もそうだと思うよ。昨季の王者であり、ほぼほぼ準々決勝進出を決めている(※その後実際に8強入り)。過去の実績を抜きに、ここから先の可能性だけを考えても、優勝候補の一角だと思うよ。

――得点源としてプレーしたバレンシア時代と、メッシのサポート役としてプレーしたバルサ、より満足感を得られたのはどちらか(南アフリカ)

 どちらもだよ。バルサが自分を獲得したのはゴールを必要としていたからで、アシスト役として期待されていたわけではないと理解している。だからゴールを求められるという点でバレンシア時代との違いはなかったと思う。違ったのはプレーポジションだ。バレンシアではセンターFWを務め、ペナルティーエリア内が主なプレーエリアだった。そこからサイドに流れてボールを受けることが多かったけど、バルサでは逆にサイドから中央に入っていく役割が多かった。どちらのプレーも楽しかったし、現代フットボールにおいては異なるシステムや異なるポジションでのプレーを経験するのは良いことさ。それぞれのクラブで、異なるポジションでプレーしながらベストのパフォーマンスを発揮できたことを嬉しく思っているよ。

――カマビンガの急成長ぶり、長所と改善点をどう見ているか(フランス)

 彼もまた若い選手だ。確か19歳くらいだよね。若い選手はあらゆる面で伸びしろがある。どのポジションでプレーしても高いパフォーマンスを発揮している点は素晴らしいと思う。中盤では攻撃的なポジションでも守備的なポジションでもいい働きをしているし、慣れない左サイドバックでも本職の選手であるかのようにプレーしている。19、20歳でそれだけの役割をこなせてしまう選手はそういない。素晴らしいタレントとポテンシャルを秘めた選手だよ。

――バルサが以前ほど圧倒的にボールを支配しなくなり、「重要なのは勝つこと」といった発言も聞かれるようになっていることについてどう思うか(メキシコ)

 自分は幸運にも様々なプレースタイルでプレーするチームで成功する経験を得ることができた。勝つためなら何でもやっていいという考えには同意できないが、勝つことが重要なのは事実だ。プレー内容の良し悪しが話題に上がることはあっても、最終的にトロフィーを掲げるのは一番多く勝ったチームだけだからね。何でもやるべきとは思わないが、勝つための道のりは一つではなく、あらゆる方法を尊重すべきだとは思っている。ポゼッションやビルドアップにこだわるチームも、堅守速攻を貫くチームもある。自分は様々なチームでプレーしてきた。システムも、カテゴリーも、国も、大陸も異なるそれぞれのチームで、それぞれのプレーを楽しみ、勝つことを経験してきた。どれもリスペクトすべき、いいフットボールだったよ。

――最後に、5-0の歴史的大勝を実現した初出場のクラシコを振り返って(司会者)

 個人的に、ピッチ上で最もフットボールを堪能できた試合の一つだと思う。幼い頃から夢見てきた舞台に初めて立った試合だからね。どちらが首位だったかは覚えてないけど、確か勝ち点差はほとんどなかった。モウリーニョがマドリーの監督に就任して初めての対戦で、どちらも高いプレーレベルを保っていただけに戦前は全く予想がつかなかった。それが蓋を開けてみれば自分は2ゴールを挙げ、チームも大勝。この勝利で勢いに乗り、最終的にラ・リーガを制す一因にもなった。この先もずっと忘れることはない一戦だよ。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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