本命は存在しない…ダビド・ビジャがクラシコに言及 古巣バルセロナの若き象徴は「既に世界最高のMF」

工藤拓

ベンゼマが世界最高の「攻撃の選手」

ビジャはベンゼマ(写真)を「ストライカー」でなく「攻撃の選手」と表現。その理由は… 【Photo by Catherine Ivill/Getty Images】

――ビニシウスはエムバペと同等のレベルに達したと思うか。達していないのであれば、そのためには何が必要だと思うか(英国)

 選手を比較するのは好きじゃない。プレーエリアが似ているとはいえ、2人は長所も短所も異なる選手だしね。現時点ではベンゼマが世界最高の「攻撃の選手」の一人だと思う。「ストライカー」と言わなかったのは、FW以外にも複数の攻撃的ポジションでプレーできる選手だから。ビニシウスもその一人だ。今季に大きく成長した彼については、縦への突破力に魅力を感じている。進化し続ける現在のフットボールにおいては、彼のようにサイドでボールを受け、1対1の局面でドリブル突破を仕掛ける選手が少なくなってきている。彼はそれができる希少な選手の一人だ。マドリーがエムバペを獲得してもしなくても、ビニシウスの成長は止まらなかったと思う。ペドリやガビと同様に、彼はまだ若い選手だから当然さ。早くから厳しい要求にさらされてきたけど、これからさらに成熟し、良い選手になっていくはずだ。昨季と今季を比べるだけで大きな違いがあるくらいだからね。彼ほどのタレントを持ち、マドリーのようなクラブでプレーしていれば、選手は自ずと進化していくものだよ。

――前回のクラシコで、バルサはビニシウス対策としてアラウホを右サイドバックに起用した。2人のマッチアップをどう見るか(司会者)

 アラウホとは歳が離れているので一緒にプレーする機会を得られなかったけど、テレビやスタジアムで見た印象としては、ビニシウスのような選手を1対1で止めるために必要な能力を兼ね備えていると思う。シャビも明確な意図を持ってビニシウスのマーク役に据えたはずだ。1対1の突破力に優れたビニシウスと、1対1の守備に優れたアラウホ。ファンタスティックなマッチアップになるはずだ。個人的にはアラウホが勝つことを願っているよ。

――勝ち点9差で迎える今回のクラシコ、バルサが勝てば優勝は決まりか(インド)

 100%決まることはない。マドリーが負けても計算上、逆転の可能性は残されるし、バルサとマドリーは歴史上何度も逆転優勝を成し遂げてきたチームだ。マドリーがクラシコに勝てなければ、当然ながら残る試合での逆転は難しくなる。直接対決で差を縮める機会はもうないし、残りの試合数も少なくなってくるからね。それでも現時点ではまだ可能性は開かれており、あらゆることが起こり得ると思う。

――レアル・マドリーに追われる立場になった際に感じるプレッシャーはどんなものか。ワールドカップカタール大会の印象は(エルサルバドル)

 シャビが繰り返し話している通り、バルサでプレーすることは毎試合プラスアルファのプレッシャーを背負うことを意味する。バルサでは常に勝利が求められる。常に勝利が求められるから、プレッシャーは日々存在する。当然ながら、追われる立場のプレッシャーより追う立場のプレッシャーの方が大きい。現時点で言えば、勝ち続けなければならないマドリーほど大きなプレッシャーを背負っているわけではないけど、それとは別にバルサでプレーする選手はこうしたプレッシャーをコントロールすることが求められる。その意味では選手もクラブも週末のクラシコを戦う準備はできていると思うよ。

 ワールドカップはいちファンとしてとても楽しめたよ。現地で多くの試合を観戦する機会も得られた。今回は最も優れた2チーム、フランスとアルゼンチンが勝ち上がり、PK戦で勝敗を決した。アルゼンチンを祝福したい。優勝に値するチームだったと思う。

――レアル・マドリーに移籍し、バレンシア時代のように自由にプレーしてみたかったと思うか(ナイジェリア)

 そうは思わない。キャリアを通して選んできた選択肢は、全てよく考え抜き、家族をはじめとした周囲の人々と話し合った上で、先を見据えて至った決断だった。バレンシアからバルサに移籍した後もフットボールを楽しみ、たくさんのタイトルを手にすることができた。後悔はないよ。

――レバンドフスキの現時点での長所、短所は。ストライカーが不調を乗り越えるためには何が必要か(ドイツ)

 彼の弱点を見出すのは難しい。キャリアを通してコンプリートな選手であり続けているからね。バルサの試合を見ていて感じるのは、彼がバルサにもたらしているのはゴールだけではないことだ。例えば後方からのビルドアップがうまくいかない時は、DFを背負ってのポストプレーでボールをキープし、味方がラインを押し上げる時間を稼いでくれる。極めて穴のない選手だよ。ゴール前を仕事場とするストライカーながら、エリア外でも質の高いプレーができる。球際に強く、機動力もあり、スペースへの抜け出しもうまく、両足共にフィニッシュの精度が高い。少なくとも自分には弱点など見当たらないな。

 不調に陥った時は、結局ポジティブな思考を保つことだよ。フットボールにおいては良い流れも悪い流れも1日で一変するもの。最近はゴールを決めるのに苦労しているとはいえ、レバンドフスキが不調だとは思わない。次の試合では決められると信じるだけさ。ポジティブな思考を保つことさえできれば、いつか状況は変わる。タレントは十分にあるわけだからね。

――バルサの「ネグレイラ事件」をどう見ているか。ベンゼマは過去数年と比べてプレーへの影響力が落ちているようだが、どうすれば不調を脱せられるか(フランス)

 1つ目の質問について、コメントを避けるのは簡単なことながら、検証が続いている現状では意見のしようがない。このようなデリケートな話題においては、まず自分が影響力のある人間であることを認識しなければならない。自分が発言することが助力になるのであればいいが、この件については違う。加えて、意見できるだけの情報もない。自分もメディアが報じていること以外の情報は持っていないから、意見するのは難しい。意見すべきはあらゆる検証が終わり、事実が明らかになってからだ。少なくとも自分はそう考えている。

 2つ目については、レバンドフスキについての話と似ているね。レアル・マドリーやバルサのFWが常にトップフォームを保ち続けるのは不可能だ。ゴールから遠かったり、プレーの質が落ちたりする時期はどの選手にも必ずある。昨季までと比べ、今季のベンゼマに足りないと感じるのはゴールくらいだ。変わらずプレーの質は高く、味方のためのスペースを作り、攻撃の組み立てをサポートし、ゴール前への侵入経路をサイドのFWに提供している。レバンドフスキについての答えと同じだよ。2人は素晴らしいプレーヤーだ。最近はゴールに嫌われているかもしれないが、世界的な名手であることに変わりはない。次の試合にも素晴らしいパフォーマンスを発揮し、悪い流れを一変させる可能性だってあるはずだ。

――先ほど話に出たようなピッチ外の問題がクラシコに向けた選手たちの集中力を乱す恐れはあると思うか。もし自分が「ビジャFC」のオーナーだったら、レバンドフスキとベンゼマのどちらを獲得するか(メキシコ)

 1つ目の質問については、ないと思う。先ほども話したが、これらのクラブの選手たちはプレッシャーと共にプレーするのが常だ。良いことでも悪いことでも、周囲で何が起きようともプレーに集中しなければならない。試合開始のホイッスルが鳴ってからはなおさらね。ピッチ外の問題を案じることはあっても、試合が近づき、前日の練習やミーティングなどを通して試合のことだけ考えるようになる。周囲の騒音から意識を隔離することは、世界中の選手にとって必要なことだ。それができなければ、これほど要求の高い競技で戦い続けることはできない。バルサやマドリーのようなクラブにいればなおさらね。

 2つ目の質問は、難しいね(笑)。パパとママ、どちらが好きかと聞かれるようなものだよ。2人は特徴の異なるストライカーであり、ゴール以外にも幅広く攻撃に関わりチームを助けられる選手だ。難しいな。金さえあれば2人とも獲得して、前線に並べるよ。自分もFWで攻撃的なフットボールが好きなので、FWの選手たちに金をかけるよ。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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