【対談】4.8 大一番に臨む拳四朗と吉野修一郎 同級生“夢の共演”が実現した2022年を振り返る

船橋真二郎

拳四朗のすごさとは。「ぶっ飛んでるぐらいじゃないと」(吉野)

拳四朗のWBC総会記念パネル、吉野.vsスティーブンソンのパネルを前に 【写真:船橋真二郎】

――お互いに「大きな舞台で一緒に」と話すようになったのは、いつ頃なんですか。

拳四朗 まあ、でも、「一緒にできたらいいな」くらいでサクッとやんな? そんなに深くは。

吉野 サクッとだよね。「一緒に出れたらいいよね」みたいな軽い感じで話してたぐらいだよね。

――吉野選手がデビュー(2015年12月14日)したぐらいで、拳四朗選手が日本チャンピオンになりましたよね(同12月27日)。

吉野 そうですね。

――それから拳四朗選手が世界チャンピオンになって(2017年5月)、村田(諒太)選手、井上(尚弥)選手と同じ舞台でやっているところを見ていて、そういう気持ちが強くなっていったのもあるんじゃないですか。

吉野 それはありますね。ボクサーとして嫉妬じゃないですけど。でも、僕は1回、アマチュアでボクシングをやめて、そこから復帰してるんで、その頃は、言ったら、まだ天と地ですけど。早く拳四朗に追い着きたいとか、こういう会場で俺もやりたいとか、一緒に出たいなっていうのは、どんどん大きくなったと思います。

――拳四朗選手が三迫ジムで練習するようになるのが世界に挑戦する前からだから、ちょうど、それぐらいから身近で練習するようになってきて。そうなると余計なのでは?

吉野 そうですね。俺もやりたいってなりますよね。

拳四朗 そこから追い着いてきたもんな。

吉野 いや、なんとかね。

――思い出しましたけど、吉野選手が王座決定戦で日本チャンピオンになったのが、拳四朗選手が最初に世界を獲ったあとのペドロ・ゲバラ(メキシコ)との初防衛戦の前日だったんですよね(2017年10月)。

吉野 おお! そうでしたね。

拳四朗 俺、観に行ったもん。

――それなんですよ。昼に計量を取材するじゃないですか。で、夜は後楽園ホールに取材に行くじゃないですか。(拳四朗が)いるんですよ。「何してるの!?」っていう(笑)。

吉野 覚えてます。僕もよく来たなと思いました(笑)。

拳四朗 みんなに言われたな(笑)。お客さんにもめっちゃビックリされたもん。でも、僕的には別に何とも。普通っちゃ、普通やったですけどね。

吉野 すごいね(笑)。そこがすごいわ。僕は行けないですね。減量してきて、体も休めたいし、自分の試合に集中したいから。世界戦ですもんね。逆にすごい。

拳四朗 逆に何も考えてないんや(笑)。

吉野 でも、そこがいいところなんじゃない? ぶっ飛んでるぐらいじゃないとチャンピオンになれないみたいな。

――というのはどうですか?

拳四朗 ああ。まあ、まあ、そういうのもあるんじゃないですか。人と同じことをやってもね。

――でも、やろうとしてやってるわけじゃなくて、ナチュラルですもんね(笑)。

吉野 ナチュラルですからね。逆にすごいわ。俺はやらないけど(笑)。

拳四朗 まあ、別にやったところで意味ないけどね(笑)。

第2部へ続く

寺地拳四朗(てらじ・けんしろう)

1992年1月6日生まれ、京都府城陽市出身。奈良朱雀高校3年時のインターハイで準優勝、国体3位。主将を務めた関西大学では国体優勝、全日本選手権準優勝の実績を残した。2014年8月にプロデビュー。2015年12月に日本ライトフライ級王座、翌年8月に東洋太平洋同級王座を獲得。2017年5月にWBC世界ライトフライ級王者となり、8連続防衛を果たす。2021年9月、矢吹正道(緑)に11回TKO負けで王座陥落。だが、昨年3月に矢吹を3回KOで下し、王座を奪還すると、同年11月にWBAスーパー王者の京口紘人(ワタナベ)に7回TKO勝ち。2団体統一王者となった。プロ21戦20勝12KO1敗。アマチュア74戦58勝(20KO・RSC)16敗。

吉野修一郎(よしの・しゅういちろう)

1991年9月28日生まれ、栃木県鹿沼市出身。栃木・作新学院高校時代は高校4冠。東京農業大学では国体準優勝2度、全日本選手権3位の実績を残した。大学で引退して就職していたが、大学リーグ戦で後輩の試合を見て、一念発起し、2015年12月にプロデビュー。2017年10月に日本ライト級王者となり、2019年10月には東洋太平洋、WBOアジアパシフィック同級王座も獲得。3冠王者となる。昨年4月に元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪(横浜光)、同年11月に元東洋太平洋ライト級王者の中谷正義(帝拳)を連破。アメリカ進出のチャンスをつかんだ。プロ16戦16勝12KO無敗。アマチュア124戦104勝(55KO・RSC)20敗。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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