現役大学生でセリエA挑戦中、髙橋藍インタビュー 「日本のバレーも世界に対して全然戦える」

田中夕子

21/22シーズンからパドヴァに在籍し、セリエA挑戦2年目の髙橋藍 【平野敬久】

 ベネチアに程近い、イタリア、パドヴァ。1222年に創設され、ガリレオ・ガリレイが教壇に立ったパドヴァ大学があり、街中にもイタリアのみならず留学生も含めた学生の姿が多い。私服で自転車に乗る姿だけを見れば、彼もまた留学生の1人に見える。髙橋藍はすっかりパドヴァの街に溶け込んでいた。

「治安もいいし、穏やかですごく暮らしやすい。食べ物や生活にも困らない。いいところで、バレーに専念できているな、と思います。ありがたい環境ですよね」

 東山高の主将として出場した2020年の春高バレーで優勝。同年、日本代表登録選手に選出された188センチのアウトサイドヒッターで、1年の延期を経て21年に開催された東京五輪にも出場した。現在、日本体育大学の現役学生でもあるのだが、東京五輪を終えた21/22シーズンからイタリアセリエAのパドヴァに在籍し、今季はシーズン当初から出場機会を増やしてきた。

日本のバレーが「全然戦える」と気づいた理由

武器であるレシーブ力はイタリアでも手ごたえがある 【平野敬久】

 午前と午後、練習開始前からボールゲームで身体を動かし、ストレッチをしながらチームメイトと英語で談笑する。2mを超える選手と並べば上背こそないが、日本でも定評のあるレシーブ力はイタリアでも健在で、高さを壁に感じることはあれど、十分、自分の武器は発揮できていると手ごたえを示す。

「もともとレシーブ力には期待してもらっていたと思いますし、そこは実際、自分も自信を持っています。それでも(ポーランド代表でセリエAペルージャに所属するウィルフレド)レオンのサーブとか、うわ、えぐ、っていうサーブはありますけどね(笑)。でも、イタリアに来たからこそ受けられるサーブでもあるし、得られる経験でもあるので。えぐいサーブを受けられること自体が、自分には楽しいし貴重な機会です」

 ディフェンスだけでなくオフェンス面も成長を実感している。もともと器用な選手ではあったが、高さで勝るブロックに対してもタッチを取って外に出したり、打つ場所を空中で瞬時に判断するなどできる技の引き出しも確実に増えた。レシーブが返って、どこからでも攻撃を仕掛けやすい状況ばかりでなく、ハイセットや、ラリー中にも打数が増えたことは「チームから信頼されている」証であり、6対6、ゲーム形式の練習中も常に助走へ入り、いつでも攻撃に入れる姿勢を示し、上がってきたボールを鮮やかに決める。数字で見れば劣る高さも、髙橋にとってリスクではないと自らのプレーで実証していた。

「こっちに来て一番思ったのは、海外、ヨーロッパは確かにすごい選手や、力のある選手はいるけれど、プレー自体は日本選手のほうが全然丁寧だな、と。たとえば僕のポジションならば、パスを1本返すということにしても、手だけでいい加減に返すのではなく、次につながる質を考えて返す。セッターもそうで、スパイカーが求める場所や質を提供し続けるセッターは、日本のほうが多いと思うし、全体的にプレーが正確なんです。それはすごく武器だと思うし、気持ちの面でも余裕につながる。シーズンを通してプレーできているからこそ見えることがたくさんあるし、日本のバレーも世界に対して全然戦えるなって思いますね」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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