2025年春開業予定の神戸アリーナ キーマンが語る「次世代アリーナ」の意外な狙いと新機軸

大島和人

神戸アリーナは「百万ドルの夜景」の一部にもなる 【提供:株式会社One Bright KOBE】

次世代アリーナの計画が相次いで進行中

 2016年秋のBリーグ開幕は、日本のアリーナスポーツを劇的に変える“革命”だった。それまでも多くのチームはプロとして活動していたが、試合はプロと言い難い環境で開催されていた。「体育館とアリーナ」の違いは想像以上に大きい。簡単にいえば体育館は競技者目線のハコモノで、アリーナは観客をおもてなしするための施設だ。Bリーグの発足後は土足の禁止、飲食禁止のような規制が大幅に解消され、改善が果たされてきた。

 しかしどんなに工夫をしても、既存の施設では限界がある。Bリーグが2026年に予定しているB1のさらに上のカテゴリー(いわゆる新B1)の発足に向けて、多くのクラブが“次世代アリーナ”の新設計画を進めている。2018年竣工の沖縄アリーナがその第1号で、今春には群馬クレインサンダーズが「オープンハウス・アリーナ・オオタ」の使用を開始する。24年には千葉ジェッツの「ららアリーナ 東京ベイ(仮称)」や、長崎ヴェルカとJリーグのV・ファーレン長崎が共用する「長崎スタジアムシティプロジェクト」が開業する。25年までにはアルバルク東京の「TOKYO A-ARENA」も整備される。これらはバスケットボール、スポーツに加えてコンサートなどエンターテインメント全般に対応する施設だ。

 そんな中でも今後のスポーツエンターテインメント発展の試金石になりそうな施設がある。それが23年春に着工し、2025年春の開業を予定している神戸アリーナ(仮称)だ。プロジェクトのキーマン渋谷順氏のコメントをもとに、この計画が持つ可能性を探っていきたい。

三宮の新アリーナにストークスが移転

Bリーグを中心に様々なエンターテインメントが開催される 【提供:株式会社One Bright KOBE】

 新アリーナは神戸の中心である三宮エリアに建設され、ウォーターフロント再開発の“核”として期待されている。規模は座席数8千、総収容人員1万人超で、今進んでいるアリーナ計画の中でも大きな規模感だ。現在は西宮市立中央体育館をホームにしている西宮ストークスが、まず2023-24シーズンに神戸市へ移転する。ワールド記念ホールで2シーズンを戦い、24-25シーズンの終盤に新アリーナへ移る予定だ。(※移転に伴う新チーム名は今夏の発表を予定している)

 現在のBリーグは基本的に公共の体育館で開催されている。クラブが施設の設計や維持管理に関わる例は徐々に増えていて、例えば沖縄アリーナはその好例だ。さらに千葉Jや長崎、A東京の新アリーナは民間企業が建設して運営する「民設民営」の方式で、アリーナとチームが一体で運営される。

 神戸アリーナも民間のアリーナだ。施設を運営し、賃料を負担して採算に責任を持つ経営主体が「株式会社One Bright KOBE」。行政デジタル化やスマートシティ等を手掛ける「株式会社スマートバリュー」と、NTTドコモが出資する企業だ。渋谷氏はスマートバリューの取締役兼代表執行役社長でもあり、ストークスはその連結子会社にあたる。

 神戸アリーナの機能、仕様は既存の体育館やアリーナに比べて劇的に変わる。高密度Wi-Fiが用意され、座席にいながらフード、アルコールを注文できるモバイルオーダーの仕組みも入る予定だ。

 このアリーナが最終的にめざすゴールは、ハード(施設)を基点にした「スマートシティ」の実現だ。鉄とコンクリートからなるハコモノであっても、人と人のつながりを生む“ソーシャル”な場となり得る。もちろんITなどの技術や人を呼び込むインセンティブは必要だが、周辺エリアも巻き込んで街を活性化させる役割は、アリーナが潜在的に持つポテンシャルだろう。それは設計段階から民間が行った施設だからこそ果たせる役割でもある。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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