3年ぶりのカーリング軽井沢国際 優勝を果たしたSC軽井沢クラブのスキップ・独占インタビュー

竹田聡一郎

初の日本代表戦は「悔しい気持ちのほうが強い」

「ゲームをコントロールする力がついてきた」とは日本代表のヘッドコーチであるボブ・アーセルの栁澤評だ 【 (C)軽井沢国際 2022_H.Ide】

ー今季は日本代表のユニホームに初めて袖を通してパンコンチネンタル選手権(以下PCCC)に出場し、4位という結果を残しました。

「日本代表としては5位以内に入って世界選手権(2023年4月カナダ・オタワ)の出場権を獲得するというミッションを達成できたのは良かったんですけれど、素直に言えば嬉しいより、悔しい気持ちが強いですね。今季のツアーでも結果が出てきて、自信を持って優勝という目標で大会に入ったんです。でも4連敗からはじまって、3連勝で這い上がっていきましたけれど、アメリカ、韓国、カナダには勝てなかった。特にカナダとの試合は他の国とは違う壁を感じました」

ーその壁を具体的に教えてください。技術的なものなんでしょうか?

「そうですね。技術があるから、執れる作戦の選択が増える感じです。個人的には今回は最後の石を投げるフォースとしての足りない部分よりも、作戦を決めて実行するスキップとしての能力の足りなさを感じました。言い訳になってしまうんですが、このチームで初めてのアリーナアイスだったので、激しく変化するアイスリーディングに苦しみました。(スキップとして自分が推測した曲がり)幅が少しでも違うとミスになってしまうのは怖かったですし、責任も感じました」

ーやはり経験が必要になってくるのですか?

「経験の差はあると思います。だからこそ、その差を埋めるためにツアーで勝っていってポイントを貯めてランキングを上げて、大きな大会、特にグランドスラムに出てアリーナアイスの経験を積みたいです。そこには世界トップクラスのチームしかいないので上位チームとたくさん試合をして、そこでしか盗めない技術や作戦があるので、どんどん吸収しながら強くなるような好循環に入りたいですね」

ー先ほど、PCCCでの4連敗から3連勝という話題がありました。チームとして落ち込んでしまい、結果が出ない怖さみたいなものはありましたか?

「もちろんプレッシャーはみんな感じていたと思います。でもうちのチームはみんなポジティブなんですよんね。負けてしまったものは覆せないので、しっかり反省した上で『あとの試合を全部、勝てば上に行けるんだから、まずは目の前の試合をどう勝っていくか』と切り替えて、谷田(康真)選手の力も借りてなんとか立て直しました」

ー谷田選手とはどんな話をしたんですか?

「日本代表として様々な経験をしてきた選手なので、『こういうこともあるとは思ってランニングとかしてたよ』って笑ってました。自分なりにずっと準備してくれる姿勢は本当に助かりますし、勉強になりました」

同じチームの山口剛史は「常に燃えている」

左からフィフスを務めた谷田康真、リードの小泉聡、セカンドの山本遵、サードの山口剛史、スキップ栁澤李空 【© WCF / Steve Seixeiro】

ーポジティブなチームということですが、栁澤選手から見たチームメイトはそれぞれどんなキャラクターか教えてください。まずは16歳の最若手、山本遵選手について。

「まだ高校生なので当たり前なのですが、以前は気持ちの浮き沈みが割とあったんです。でも今年のカナダでの長期遠征を経て落ち着きが出てきたというか、だいぶポジティブに物事を考えることができるようになったと思います。若いので『これからまだまだ色々なことを吸収して自分のものにしておくんだろうな』と思いながら見守っています」

ー小泉聡選手はいかがですか?

「リードとして毎エンド、同じようなショットを投げ続ける中で与えられたことを淡々とこなすことのできる選手ですね。いかに集中力を保つか、自分が気持ちよく投げることができるのか、しっかり考えている部分は尊敬しています」

ー最後に山口選手についてお願いします。

「チーム全員がカーリングに対する熱量が高いというのは共通しているのですが、その中でもヤマちゃんは飛び抜けて高いですね。アイスの内外は関係なく、常に燃えています。その熱は僕にも伝染していると思います。試合中もダメなことはダメってしっかり言ってくれるし、いろんなところで支えられています」

ーありがとうございました。最後に2023年、今季終盤にかけての抱負をお願いします。

「年明けからスコットランドへの遠征に行ってきます。今年に出た課題、コミュニケーションであったり、ショットの精度を出せるように準備して、まずは日本選手権が目標になります。PCCCで悔しい思いをしながらも掴み取った世界選手権の出場権ですから、日本選手権でしっかり勝って世界選手権に挑みたいですね。来年も応援よろしくお願いします」

栁澤李空(やなぎさわ・りく)

【Ⓒ 2022 WCF / Howard Lao】

2001年10月25日長野県北佐久郡軽井沢町生まれ。中学時代にカーリングをはじめ、高校時代にはSC軽井沢クラブのトップチームに帯同するなど急成長を見せる。自身初出場となった2020年の日本選手権で3位入賞に貢献すると、2021/22シーズンからはスキップを務め2022年の日本選手権ではチームを優勝へ導いた。今季は日本代表のスキップとして活動している。趣味はドライブ。twitterは @yanagi__2525

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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