負傷の原因・トリプルアクセルを克服した山本草太 7年の時を経て戻った「ファイナルの表彰台」

沢田聡子

ジャンプが決まる度に繰り出した、万感のガッツポーズ

【Getty Images】

 メダルを射程圏内にとらえて迎えたファイナルのフリーは、真価を問われる演技となった。流れ出した静かな旋律とともに落ち着いた表情で滑り始めた山本は、4回転サルコウ、4回転トウループ―3回転トウループ、4回転トウループと続けて決めていく。

 次に予定しているのは、トリプルアクセルからの3連続ジャンプだ。山本はトリプルアクセルを決め、オイラーを挟んで3回転サルコウもきっちり跳んだ。演技後半に入り、2本目のトリプルアクセルを着氷させた山本が繰り出したガッツポーズに、喜びがあふれる。最後のジャンプとなる3回転ルッツを降りると、山本はもう一度ガッツポーズをみせた。本来なら柔らかい曲調には似つかわしくないはずのガッツポーズだが、この時ばかりは観る者の胸も震わせる最高の振付となっていた。2本目のトリプルアクセルは4分の1回転不足と判定されたものの、4回転3本とトリプルアクセル2本を着氷させたこのフリーで、山本はまた大きく前に進んだといえるだろう。

 銀メダリストとして記者会見に臨んだ山本は、表彰台に上がった感想を問われている。

「今シーズン、フリーでなかなかいい演技ができていなくて、今回の試合で練習をしてきたことがやっと出せたのがすごく嬉しかったですし、結果も、表彰台は目標にしていたので、すごく嬉しく思います」

 喜びを語った山本は、全日本選手権への意気込みもみせた。

「今回のファイナルは、僕は本当に挑戦者という立場だったと思うので、あまり緊張感はなく思い切って演技できたと思います。全日本は、今回の4人(ファイナルに出場した宇野昌磨、山本、佐藤駿、三浦佳生)に限らず素晴らしい選手がたくさんいると思うので。今回の結果や演技は忘れて、一つの経験としてまたここから一週間、しっかりと全日本に向けて頑張るだけかなと思っています」

 ファイナルのリンクで練習通りの演技を完遂した山本は、再び世界の大舞台に立つため、全日本に向けて鍛錬の日々を送る。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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