黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ②」【前編】 激闘となった初のプレミアリーグ勢同士の決勝
初優勝した2016年度大会決勝の前橋育英戦に続き、黒田監督は再び日本一に輝いた18年度大会決勝の流経大柏戦もベストマッチに挙げた 【吉田太郎】
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追う展開になったのはすごく不本意だった
2011年の“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグ発足以降初めて、プレミアリーグ勢同士のファイナル。青森山田は札幌内定の10番・MF檀崎竜孔や福岡内定のDF三國ケネディエブス、チリ国籍のMFバスケス・バイロン、2年生MF武田英寿(翌年に浦和加入)、流経大柏も鹿島内定のDF関川郁万、10番をつけるFW熊澤和希ら注目選手を擁していた。
成人の日が決勝となった2002年度大会以降では、最多記録(当時)となる54,194人の観衆が来場。名門校同士によるビッグマッチは、互いに攻守の切り替えが速く、球際の激しい攻防戦となった。
サイドから仕掛け、コーナーキック、ロングスローの数を増やした流経大柏に対し、青森山田はFW佐々木銀士が最前線で健闘。1タッチパスの冴える武田やMF天笠泰輝を軸に、ボールを右のMFバスケス、左のMF檀崎へ展開する。そして、この両サイドハーフの突破力を活かしてシュートシーンを作り出した。
だが前半32分、流経大柏が先制点を奪う。MF八木滉史の右コーナーキックからDFのマークを外した関川が豪快なヘッドを決めて1-0。青森山田は準決勝の尚志(福島)戦に続き、ビハインドを負う展開となった。
黒田監督は、「ウチでは絶対に失点しないことがベースだったけれど、尚志戦もそうだし、流経戦も先制されたでしょう。追いかける展開になったのはすごく不本意なことでした」と振り返る。
必勝パターンで追いつき、両サイドハーフが躍動して逆転
40分の同点ゴールは、黒田監督がこの試合の殊勲者に挙げた天笠(右)を起点とした攻撃から生まれた 【AFLO】
前半40分、右タッチライン際の天笠が反転して右オープンスペースへ絶妙な縦パス。オフサイドぎりぎりで抜け出した佐々木が独走する。最後はGKを引き付けて出したラストパスを檀崎が左足ダイレクトでゴールへ蹴り込み、同点に追いついた。サイド攻撃でクロスを上げ、逆サイドのサイドハーフが蓋をする形でゴール前へ詰めて得点を奪う。青森山田の必勝パターンが大一番で炸裂した。
追いつかれた流経大柏は、後半開始から複数のポジションチェンジで巻き返しを図る。だが、ゲームを支配したのは青森山田のほうだった。
フィジカル要素の部分をクローズアップされる青森山田だが、選手個々の技術レベルは非常に高い。そのパスワークはビルドアップを特長とするチーム以上とも言えるほどだ。
青森山田は2011年の発足1年目からプレミアリーグに参戦。Jクラブユース、高体連のトップチームとのリーグ戦で勝ち続けるためには、どのようなスタイルにも対応できるチームでなければならない。プレミアリーグで継続して上位につけている青森山田は、そうして磨いてきた力をこの決勝でも発揮。正確なパスワークとセカンドボールの回収でリズムを掴み、流経大柏にプレッシャーをかけた。
そして、後半18分、青森山田が勝ち越しに成功する。右サイドでボールを受けたバイロンが縦へボールを運ぶ。そして、切り返しから左足でクロスを上げると見せかけて、再び切り返し。DF2人を翻弄する形で突破したバイロンは、エンドライン際からマイナスのラストパスを入れる。これがDFをかすめてファーサイドへ。待ち構えていたのは、再び檀崎だった。1タッチでの右足シュートを逆サイドのゴールネットへ沈めて逆転。両サイドハーフが躍動し、ついにリードを奪った。