黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ」

黒田剛監督が選ぶ「青森山田ベストマッチ②」【前編】 激闘となった初のプレミアリーグ勢同士の決勝

吉田太郎

平成のラストゴールで決着をつけた

逆転ゴールを演出したのは右サイドハーフのバイロン’(右)。夏までは未熟な部分が多かったが、選手権決勝の大舞台で成長した姿を見せた 【AFLO】

 バイロンは超絶の切り返しからアシストしたあとも強気の1対1の連続。彼にボールが渡るたびにスタンドが沸いた。

 バイロンは夏から急成長した選手だった。1年時から注目されていたレフティのドリブラーだが、守備や右足に課題を抱えていた。この年のインターハイで、青森山田は2回戦で敗退したが、敗因の1人がバイロンだった。2点を先取しながら、守備意識を欠いたバイロンらが前へ前へと出た隙を昌平(埼玉)に突かれて2-4の逆転負け。2018年度、プレミアリーグを含めて高体連チームに唯一敗れたのが、この試合だった。

 だが、黒田監督はその後のバイロンの変化を認める。

「持って持って左足しかないし、守備はしないし、だった。でも、プロでやりたい、このままじゃプロは無理だ、と思うようになってから、とことん話を聞くようになりました。本当、ボロクソと言うほど喋ったよ。下半期から右足とか相当練習させたから。右を見せられるようになったから、左で持った時も空いたんだと思います。そして、守備を徹底してやるようになってから良くなりましたね」

 自分本位なところがあったドリブラーは、攻守にわたって貢献できる選手へ。勝ち越しアシストは、「流経はボールに食いついてくる。どんどん切り返して入っていけ」という指揮官の指示通りの切り返し、そして左足をおとりにして右足で上げたクロスによるものだった。

 青森山田は流経大柏にゴール前までボールを運ばれても、伝統の「ゴールを隠す」守備。三國やDF二階堂正哉らがシュートコースを塞ぎ、身体を張ってリードを守り続ける。そして後半43分、青森山田は交代出場した“炎のストライカー”ことFW小松慧が、天笠のスルーパスに抜け出して独走。右足で「平成の選手権ラストゴール」を決めて決着をつけた。

 2016年度から2018年度大会にかけて、全国高校サッカー選手権のファイナリストは青森山田と流経大柏、前橋育英(群馬)の3校が独占した。2016年度大会決勝は青森山田が5-0で前橋育英に勝利。翌2017年度大会で青森山田は3回戦敗退し、前橋育英が流経大柏との決勝を1-0で制して初優勝した。そして、この2018年度大会決勝で青森山田は流経大柏に3-1で逆転勝ち。三つ巴となった3年間の決勝で2勝した青森山田は、前橋育英、流経大柏や他のライバル校との差を広げ、名実ともに高校サッカー界をリードする存在となる。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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黒田剛(くろだ・ごう)

1970年5月26日、北海道生まれ。登別大谷高(室蘭大谷高に統合され、現在は北海道大谷室蘭高)、大阪体育大でプレーした後、指導者の道へ。94年に青森山田高のコーチとなり、翌95年に同校監督に就任。全国高校サッカー選手権優勝3回(2016年度、18年度、21年度)、全国高校総体優勝2回(05年、21年)、高円宮杯U-18プレミアリーグファイナル優勝2回(16年、19年)など数々の栄冠をもたらしてきた。22年度の選手権・青森予選をもって監督職を辞して総監督に。23年シーズンからJ2・FC町田ゼルビアのトップチームで指揮を執ることが決まっている。

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