22年JリーグMVP 横浜FM岩田智輝が振り返る 「サッカー人生で一番いいシーズン」

舩木渉

DF登録の選手として4人目のMVP受賞者となった岩田。ボランチとセンターバック(CB)でフル稼働し、横浜FMのリーグ優勝に絶大な貢献を果たした 【写真は共同】

 2022年シーズンのJリーグ最優秀選手賞(MVP)に輝いたのは、横浜F・マリノスの岩田智輝だった。DF登録の選手としての受賞は、史上4人目の快挙である。加入2年目の今シーズンは、ボランチとCBの2つのポジションをこなしてフル稼働。3年ぶりのリーグ優勝を果たした横浜FMに、なくてはならない存在だった。成長著しい守備のマルチロールに、充実のシーズンを振り返ってもらった。

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守備の選手が評価されたことが嬉しい

――2022シーズンのJリーグ年間最優秀選手賞(MVP)の受賞、おめでとうございます。まずは受賞の感想から聞かせてください。

 信じられないです。まだ嘘だと思っています。

――MVP受賞はいつ知りましたか?

 (最終節で)ヴィッセル神戸に勝って優勝が決まった後、横浜に戻って取材を受けて帰る直前に聞きました。龍くん(小池龍太)や(西村)拓真くん、キー坊(喜田拓也)、(宮市)亮くん、(水沼)宏太くんが近くにいて、みんなが「おめでとう!」と祝ってくれました。

――横浜F・マリノスがJ1優勝を決めた神戸戦後のミックスゾーンで、「MVP受賞もあるのでは?」と聞いた時は、「絶対にないと思います」とおっしゃっていましたね。

 あの時は自分がMVPになれるとはまったく思っていませんでした。受賞を知った時も、ずっと「嘘だ! 嘘だ!」と言っていました(笑)。本当に信じられなくて……でも、めちゃくちゃ嬉しかったです。

――MVP受賞者にはブック型楯と200万円の賞金の他に、副賞として明治安田生命JリーグMVPトロフィーや100万円相当の大型液晶テレビが贈られると聞いています。賞金の使い道は決まっていますか?

 本当ですか? 賞金の使い道は全然考えていなかったですけれど、ちょうど自宅のテレビを買い換えようと思っていたので、めちゃくちゃタイミングが良かったです。嬉しいです!

――あらためて、自分が評価されたと感じる部分はどこですか?

 1年を通して大きなケガなく、コンスタントに試合に出られたところと、チームの勝利に貢献できた部分を評価されたのではと思います。

――DF登録の選手がMVPを受賞するのは、2006年の田中マルクス闘莉王さん(当時浦和レッズ)以来です。歴代でも3人しかいません。

 えっ、 3人だけですか?

――そうなんです。1994年のペレイラさん(当時ヴェルディ川崎)、2004年の中澤佑二さん(当時F・マリノス)、そして闘莉王さんに続いて、岩田選手はDFとして4人目のMVP受賞者になります。守備的なポジションの選手がMVPを受賞するのは偉業とも言えると思いますが、その価値をどう捉えていますか?

 試合ではゴールを決める選手が注目されますし、そういう選手たちのおかげでチームも勝てるんですけれど、こうやって守備の選手が評価されて、MVPを受賞できたことはすごく嬉しく思います。DFの選手たちは「自分もMVPを獲れるんだ!」と感じられるでしょうし、これを機に守備的なポジションの選手たちがもっと評価されるようになるといいですね。

練習から積み上げた自信が大きな収穫

MVP受賞に「まだ嘘だと思っています」と言って笑うが、同時に「今までのサッカー人生で一番いいシーズンだった」と自信をもって振り返る 【スポーツナビ】

――クラブの歴史を紐解くと、MVPを受賞したのは2000年と2013年の中村俊輔選手(現横浜FC)、2004年の中澤さん、そして2019年の仲川輝人選手に続いて、岩田選手が4人目になります。

 今そう言われて、すごくジーンときました。中村俊輔さんや中澤佑二さんは、小学校の時から憧れていた選手なので、肩を並べられたかどうかは分からないですけれど、2人と同じ偉大な賞をいただけて、本当に光栄に思っています。

――来年からは「JリーグのMVP」として見られ、より大きなプレッシャーがのしかかってくるかもしれませんね。

 もちろんそうなるだろうと、受賞を知った時から思っていました。今シーズンが自分のベストパフォーマンスだったかと言われると、まだ伸ばせる部分があると感じています。そういうところを突き詰めながら、来年はさらにいいパフォーマンスを見せて、周りから「MVPを受賞しただけあるな」と思われるように日々精進していきたいです。

――今シーズンはボランチとCBの両方で、常に質の高いプレーを見せてくれました。リーグ戦では32試合に出場し、うち31試合が先発。公式戦トータルでは40試合に出場し、プレー時間はフィールドプレーヤー最長の3327分を記録しています。

 すごくいいシーズンになりましたね。初めての経験ばかりで、日本代表としてもEAFF E-1サッカー選手権で優勝することができました。今までのサッカー人生で一番いいシーズンだったと思います。

――今年はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)にも初めて出場しましたが、そうして新しいことを知ったり学んだりするなかで、自分自身の成長につながったと言える収穫はありましたか?

 今までだと初めての経験をしたり、日本代表に呼ばれたりした時に、緊張でいつも通りのプレーができないことが多かったです。でも、「初めての経験」をするために日々努力してきたので、重要な場面でも緊張しなくなりましたし、今は「自分ならできる」と思えています。日々の練習から積み上げた自信が、僕にとってすごく大きな収穫でした。

――J1リーグ優勝が懸かった最終節の神戸戦は、「すごく緊張した」とおっしゃっていましたが。

 あの試合だけは緊張しました(笑)。

――重要な試合で普段通りのプレーができるようになったのは、成長している証ですね。

 本当にその通りだと思います。今までだったら緊張すると空回りしていましたが、ACLの舞台や日本代表を経験して、緊張してもいつも通りのパフォーマンスを出すことができました。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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