連載小説:I’m BLUE -蒼きクレド-

[連載小説]I’m BLUE -蒼きクレド- 第12話「慈英の決意」

木崎伸也 協力:F
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舞台は2038年。11月開催のインド・ワールドカップに向けて、日本代表は監督と選手たちの間に溝が生じていた。
日本代表の最大の弱点とは何か?
新世代と旧世代が力を合わせ、衝突の中から真の「ジパングウェイ」を見いだす。
木崎伸也によるサッカー日本代表のフィクション小説。イラストは人気サッカー漫画『GIANT KILLING』のツジトモが描き下ろし。

【(C)ツジトモ】

 チームミーティングが終わった瞬間、加藤慈英は立ち上がって出口に向かった。椅子のために通路が狭く、選手たちの列ができる。慈英は待ちきれず、チームメイトを押しのけて前へ進んだ。
 なぜ自分が先発落ちなのか? どこで何を間違った?
 怒り、不信、内省――慈英の心の中でいろいろな感情が渦巻いた。
 明後日のチリ戦は、半年後のワールドカップ(W杯)に向けた重要な親善試合である。このタイミングでの先発落ちは致命的だ。とうてい受け入れることはできない。
 やはりイングランド生まれは空気を読めないらしい。うしろから松森レオの声が聞こえてきた。
「ジェイ、コーヒー、忘れてるぞー? ポイしとく?」
 数十分前に慈英はレオと一緒にコーヒーを買い、ミーティング中に足元に置いていた。何事もなければ呼びかけに立ち止まり、飲みかけのカップを受け取っていただろう。
 だが、レオが入ったことで自分は先発から外れたのだ。なぜ同じセンターFWなのに友達ごっこをしていたのだろう。自分の油断に腹が立つ。心のどこかに「秋山監督は2トップにするのではないか」という甘い期待があった。
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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載。

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