連載:「知られざる審判の世界」野球とサッカーを支える“フィールドの番人”

第1回WBCで日本を窮地に追い込んだ “迷審判”ボブ・デービッドソンの現在

杉浦大介
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第1回WBCで不可解な判定を下し、当時の王監督から猛抗議されるデービッドソン球審(右)。WBCの季節が近づくたびに思い出される名物アンパイアだ 【Stephen Dunn/Getty Images】

 日本の野球ファンなら、ボブ・デービッドソンという名前に、おそらく聞き覚えがあるはずだ。今から16年前の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本対アメリカ戦の球審を務め、不可解なジャッジで侍ジャパンを窮地に追い込んだ、あの人物である。MLBでも“お騒がせ審判”として有名だったデービッドソンは、果たして今、どこで何をしているのか。NY在住のライターがレポートする。

アメリカ人審判がアメリカ代表に忖度?

 歴史に残る“迷アンパイア”の直撃インタビューは叶わなかった。当初、間に入って連絡を繋いでくれた関係者からは「取材に前向きだ」との感触を伝えられていた。しかし、そこからしばらくやり取りが途絶えると、突然私のもとにボブ・デービッドソン本人からこんなメールが届いたのだ。

「ご連絡ありがとう。ただ残念ながら、私を取材したいというあなたの依頼を断らなければなりません。幸運を祈っています。 ボブ・デービッドソン」

 取材拒否の詳細は語られておらず、何が原因だったのかは分からない。ちょうど忙しい時期だったのか、個人的な理由か、あるいはコンタクトを取ったのが日本のメディアだったからか。デービッドソンと日本野球の微妙な関係が、もしかしたら影響したのかもしれない。  

 デービッドソンと言えば、ワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)での誤審騒動を真っ先に思い出す日本のベースボールファンは多いだろう。2006年の第1回WBC、アナハイムのエンゼルス・スタジアムで行われた2次ラウンドの日本対アメリカ戦で起こった“事件”は、あまりにも有名だ。

 日本は3-3で迎えた8回1死満塁から、岩村明憲がレフトへ浅いフライを打ち上げ、三塁走者の西岡剛がタッチアップから生還する。ところが、西岡の離塁が早かったとして、球審のデービッドソンがアウトを宣告。一旦は二塁塁審がセーフの判定をしたにもかかわらず、アメリカ側の抗議を受けて球審が判定を覆すという、まさに前代未聞の出来事だった。
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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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