連載:「知られざる審判の世界」野球とサッカーを支える“フィールドの番人”

キャリア30年の現役NPB審判員が語る、やり甲斐や苦悩 「マイク説明は本来のルールではない」

楊枝秀基
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NPB審判員として30年のキャリアを誇る丹波審判員。現在5人しかいないクルーチーフの1人だ 【写真は共同】

 プロ野球の審判という仕事がどういうものか、細かいところまでは一般的にはあまり知られていないだろう。年間を通してどんなサイクルで活動し、試合がある日はどんな流れで動いているのか。あるいは、どんなところにやり甲斐を感じ、どんな苦悩があるのか。NPB審判員として豊富なキャリアを持ち、現在もクルーチーフとして第一線で活躍する丹波幸一審判員に、「プロ野球の審判」という仕事について話をしてもらった。

自由な発信が許されないのは苦しい部分

――NPB審判員として心掛けていること、大事にしていることは何ですか?

 審判に任せられているのはゲームコントロール、円滑に試合を進めること。そこは一番心掛けているところです。もう一つ大切なのがそれぞれの判定が正確であること。ここに派生することですが、ルールの適用もこだわっています。判定への説得力というものは普段からのイメージトレーニングもありますが、ルールを正しく理解し、しっかり理論武装できているかというところに関わってきますから。

――審判員という仕事のやり甲斐は?

 何も(問題が)起こらずゲームが成立すれば、それが一つの満足感。そのなかで、(他の審判と)競い合っているわけではないが、短時間でゲームを進行させると満足感を得たりすることもあります。また、不思議ですが延長戦で今季最長ゲームなどにあたってしまった時にもなぜか満足感があります。マラソンのランナーズハイと同じかもしれません(笑)。

――周りからは、滞りなく進行できて当たり前と見られます。

 審判がクローズアップされる時は、こちらが失敗した事例に関して追い詰められるケースがほとんど。テレビや新聞で取り上げられるのは何らかのトラブルが起こった時が多いですよね。(審判歴)30年間を通じて過去に記事として取り上げていただいたこともありますが、取材を受けても、こちらが伝えたいニュアンスが正しく表現されているかというと、そうでないこともありました。
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著者プロフィール

1973年生まれ、神戸市出身。関西学院大から98年に『デイリースポーツ』入社。巨人、西武、ヤクルトなどを担当した後、2004年は合併消滅した近鉄、05〜10年は阪神、11年はオリックス番記者を務めた。13年からフリー。東京スポーツコラム「ワッショイ!!スポーツ見聞録」を不定期連載中。

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