バドミントン・21歳の奈良岡が世界3位に善戦 「狙っていきたい」パリ五輪までの距離

平野貴也

田児、桃田に続くエース候補、高い期待を受ける逸材

奈良岡は高い技術を武器に、幼少期から高い期待を受けてきた 【筆者撮影】

 父である奈良岡浩コーチとの親子鷹で歩み、幼少期から結果を出して注目され続けてきた次代のエース候補は、その看板から「次代」の文字を下ろす時期に来ている。もう、善戦で満足できる立ち位置ではない。

 奈良岡は、幼い頃から注目されてきた。小学生が2学年単位でまとまって試合をする全国ABC大会で、最も体格差が出やすい年代のBグループ(3、4年生)を3年生で優勝したのは、後にも先にも男女含めて奈良岡しかいない。中学生になると全国中学校大会を1年次から制して史上初の3連覇を達成。男子シングルスで田児賢一、桃田賢斗(NTT東日本)らが世界ランクの上位に入って活躍していた頃、彼らに続くのは奈良岡だと言われるようになった。2018年には、ユース五輪で銅メダル、世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得。世界でも世代トップクラスであることを証明した。

 大学生となる20年からコロナ禍で出場できる大会が大幅に減ってしまったが、国際大会が本格的に再開した今季は、5月にタイオープンでベスト4。7月にシンガポールオープン(ともにBWFワールドツアースーパー500)で準優勝と、シニアの国際大会で結果を残して世界ランキングポイントを獲得。冒頭で伝えたジャパンオープンの前週には、東京で開催された世界選手権にも初出場を果たした。

ライバルが世界選手権で銀、同世代の台頭は大きな刺激

 世界選手権で、奈良岡は刺激を受けた。2回戦で敗れた相手は、クンラウット・ビティサーン(タイ/編注:世界選手権の日本語表記は「クンラブット・ビチットサーン」だったが筆者が選手側に発音を確認)。18年に世界ジュニア選手権の決勝で戦ったライバルだ。奈良岡を破ったクンラウットは、決勝戦に進出して銀メダルを獲得した。翌週のジャパンオープンで初戦を終えた奈良岡は「勝っていたら(自分が)あそこまで行けたのかなとか思いながら」と笑った。

 そんなに都合の良い話ではないのは百も承知。それでも、可能性を考えずにはいられなかったのだろう。世界ジュニア選手権で銅メダルだったラクシャ・セン(インド)も昨年の世界選手権でベスト4入り。ジュニア時代に争った同世代のライバルは、一足早くシニアで活躍している。奈良岡は、彼らの活躍の中に自身の可能性を感じ取っている。6月に日本A代表昇格を果たすきっかけとなった日本ランキングサーキットで優勝した際には「(コロナ禍で自分が国際大会に出られない間に)インドのセンとか、タイのブイ(クンラウット)が勝っていた。僕もそれくらいできるんだと思って、やっていました」と話していた。

五輪レース参戦へ「行けなくはないと思う」

22年5月開幕の五輪レースまでに、どこまでトップとの距離を縮めるか 【筆者撮影】

 最新の世界ランクでは、ラクシャ・センが9位、クンラウット・ビティサーンが11位。東京五輪が終わり、同世代の海外選手が台頭する中、日本の21歳は彼らに負けじとトップを目指す。奈良岡は、まだ世界ランク29位でシード選手と早期に当たる難しさこそあるが、来年5月に始まるパリ五輪の出場権獲得レースに加わる可能性は高まっている。世界3位に善戦した試合は、パリ五輪に向けて大きな意味のある試合となりそうか――そう聞かれた奈良岡は「今は(世界1位の)アクセルセン選手以外は、同じくらいの強さだと思います。(割って入って)行けなくはないと思うので、どんどんチャレンジして、狙っていきたいと思います」と意気込みの中に自信を含ませた。

 パリ五輪に向けた新世代の台頭は、インドやタイの選手だけじゃない。日本の奈良岡もいることを忘れるな。世界3位を相手に見せた善戦は、世界に向けたメッセージだ。来年5月の五輪レース開幕までに、その距離をどこまで縮められるか。大いに楽しみだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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