J1月間MVP京都ピーター・ウタカの信念 「個人もチームもリミットを超えていく」

雨堤俊祐

4月に挙げた4つのゴールのうち、GKの弾いたボールを押し込んだ柏戦の1点も含めれば3つがワンタッチゴール。冷静な思考のなせる業だ 【写真は共同】

 4月度の「2022明治安田生命Jリーグ KONAMI 月間MVP(J1)」に選出されたのは、現在8ゴールで得点ランクのトップ(タイ)を走る京都サンガF.C.のFWピーター・ウタカだ。開幕から好調を維持し、4月は5試合で4ゴール。昇格組ながら9位と健闘するチームの前線を力強くけん引している。その類まれな得点感覚が一向に錆びつく気配がない38歳のベテランストライカーは、個人としてもチームとしても、周囲が想像する以上の高みを見据えていた。

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冷静であればあるほどベストな選択ができる

――4月度の明治安田生命J1リーグKONAMI月間MVP受賞、おめでとうございます。

 ありがとうございます。本当に光栄です。チームメイトやサポーター、クラブ関係者、そして奥さん……支えてくれたすべてのみなさんのおかげで受賞できたと思っています。

──昨年も4月にJ2リーグの月間MVPを受賞していますが、この季節が得意なんですか?

 私も同じことを思っていました。奥さんの誕生日が4月なので、もしかしたらそれが関係しているのかもしれませんね(笑)。リーグは違いますが、2年連続で月間MVPを受賞できたのは素晴らしいことですし、4月以外の月も狙っていきたいですね。

──4月に決めた4ゴールは、そのほとんどが“ワンタッチゴール”でした。

 ストライカーにとっては、ワンタッチで合わせて決めるゴールが一番なのかなと思います。そのために大切なのは、ペナルティーエリア内でのポジショニングであり、相手ゴールキーパー(GK)と自分の状況をしっかりと見極める力です。そうやって自分がプレーするためのスペースを確保しなくてはなりません。

──それは、これまでの経験で培われたものですか?

 サッカーはただ走るだけのスポーツではありません。特にゴール前では、その瞬間、瞬間に“考えること”がとても大事になってきます。頭で相手を上回らなければなりません。そのためには経験もそうですが、より大切なのが冷静さです。常に冷静であることで周りの状況がよく見えますし、瞬時の決断が求められるなかで、冷静であればあるほど数ある選択肢の中からベストの選択ができますから。

サッカー観を大きく変えてくれた曺貴裁監督

これまでJリーグでは1年ごとに所属クラブを変えてきたウタカだが、京都在籍は3年目。「このクラブにレガシー(遺産)のようなものを残したい」という 【スポーツナビ】

──ウタカ選手にとっては、FC東京でプレーした2017年以来のJ1ですが、当時からの変化は感じていますか?

 今も変わらずレベルの高いリーグですし、自分がJ1にいない間に戦術面や技術面などでさらに進化した印象を受けます。ただ、私自身はJ1だからどうこうということはなく、J2だろうとJ3だろうと、あるいはJFLだろうと、サッカーをやることに変わりはありません。与えられた環境で、しっかりプレーするだけです。

──Jリーグではこれまで、1シーズンのみの在籍で新天地を求めるケースが多かったと思いますが、京都サンガF.C.では今年で3シーズン目を迎えています。

 サンガに移籍してから、このクラブと京都という街が大好きになりました。サンガのプレースタイルにもフィットできていると思います。今後もここでキャリアを築いていきたいですし、何かレガシー(遺産)のようなものをクラブに残せればいいなとも考えています。

──チームの中でウタカ選手の果たす役割はとても大きいですが、ゴール以外にも多くの仕事を求められる現在のプレースタイルに適応するのは難しくありませんでしたか?

 以前の私は、ゴールを奪うことを強く意識した純粋なスコアラーでしたが、曺(貴裁)監督からのリクエストや提案もあって、今のサンガではチームのために戦うこと、チームのために多くのものをもたらすようなプレーを求められています。ただ、プレースタイルを変えるのは、それほど大変ではありません。これまでさまざまなチーム、さまざまな指導者の下でプレーするなかで、自分が果たすべき役割について常に考えてきましたからね。

「自分は、自分の鏡を見ている」という表現をするのですが、自分自身を常に見つめて、求められるものを受け入れようとする気持ちが大切です。できないことがあっても誰かのせいにするのではなく、「自分がもっと成長しなきゃいけない、変わらなきゃいけない」と、そう思ってサッカーに取り組んできました。足りないものがあれば、例えばトレーニングでランニングの量を増やしたり、自宅で筋トレをしたりと、そうやって“補強”しながら、チームのやり方にマッチするよう変化してきたつもりです。

──ウタカ選手にとって、曺貴裁監督はどんな存在ですか?

 サッカー観を大きく変えてくれた人です。曺さんに出会って、自分はもっとディフェンスができるし、ゲームをクリエイトすることも、ラストパスを出すこともできるんだと気付かされました。「ウタカには、いろんな引き出しがあるんだよ」と教えてくれた監督で、これまで出会った多くの指導者の中でも、多大な影響を与えてくれた一人ですね。

 チームマネジメントに長けた監督でもあります。サンガとしてどんなことを試合で表現したいのかを、われわれ選手にきちんと伝え、そのために、それぞれがどんなアプローチをすればいいのかも適切にアドバイスしてくれます。

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著者プロフィール

京都府出身。生まれ育った地元・京都を中心に、Jリーグから育成年代まで幅広く取材を行うサッカーライター。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』で2005年から10年間、京都サンガF.C.の担当記者として活動。現在は京都のオフィシャル媒体や『J's GOAL』、サッカー専門誌などで執筆している。また、TVではJ:COMの『FOOT STYLE 京都』にコメンテーターとして出演中。

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