W杯アジア最終予選特集 #この一戦にすべてを懸けろ

論客らいかーると×みぎの豪州徹底分析 「ガクッと落ちる75分以降はチャンス」

構成:飯尾篤史

10月の対戦以降、境遇が入れ替わった日本とオーストラリアの再戦は、果たしてどのような結末を迎えるのか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 勝てばワールドカップ(W杯)出場決定、負ければ3位転落というW杯アジア最終予選の大一番。10月の対戦で奇襲を仕掛けてきたオーストラリアは、シドニー決戦でどのような戦いを見せるだろうか、そして日本はどう立ち向かえばいいのか。サッカー分析に定評のあるネット界の論客、らいかーると氏とみぎ氏が、ここまでの最終予選の試合を分析したうえで、この試合の5つ見どころを提示する。

ポイント1 オーストラリアのスタメンは果たして?

――日本のスタメンはある程度予想がつきますが、オーストラリアはどんな顔ぶれを送り出してくると思いますか?

みぎ 基本的なところを押さえておくと、オーストラリアはここまでの8試合の戦い方が一貫していて、ボールを保持したいチームです。8試合すべてで相手よりボール支配率が上回っています。それに、だいたい同じようなメンバーで戦ってきたんですけど……。

らいかーると 日本戦(10月12日の第4戦●1-2)だけ、異質なメンバー構成でしたよね。

みぎ そうなんです。ボランチが本職のアーロン・ムーイを左サイドで起用してきたのは、日本戦だけでしたね。あとは、そんなに変わったことはやっていません。オーストラリアのここまでの戦いの中で最大のサプライズが、ムーイの左サイド起用だったと思います。

らいかーると 日本が4-2-3-1から4-3-3に変更するのを読み切っていたかのような起用でした(笑)。オーストラリアは、アイディン・フルスティッチ、ジャクソン・アーバイン、トーマス・ロギッチ、ムーイの4人がうまくて、移動もできたりするんですけど。その4人が唯一、全員起用されたのが日本戦でした。日本相手にボールを持って動かそうとするなら、やっぱりボールプレーヤーをたくさん起用するんだなと。

みぎ 読み切っていたというのは、日本の中盤3枚、遠藤航、守田英正、田中碧の3人とフルスティッチ、アーバイン、ロギッチがマッチアップする中で、左サイドのムーイが中に入ってきて、嫌らしいポジションを取るということですよね。

らいかーると そうですね。ロギッチがトップ下にいるかと思ったら、ムーイもトップ下にいたり、あるいは、セントラルMFの位置に下りたり。ムーイが日本の右インサイドハーフ、こちらも田中だったり、守田だったりしたんですが、その近くをウロチョロすることで、「誰がマークするんだ?」という問題が発生していました。

 また、オーストラリアはボールをつなぐようでいて、色気なく蹴ったりもするんですけど、あの試合は遠藤の周りにムーイやロギッチがいることで、セカンドボールの争いでも優位に立っていた。さらに、右サイドのマーティン・ボイルが2トップの一角のように振る舞って、日本の左センターバックの冨安健洋の前に立つから、冨安が前に出ることもできない。あの試合はかなり理詰めで戦ってきたので、ビックリしました。

右ウイングながら2トップのようにプレーし、日本のCBの前に立ちはだかったボイル。今回の大戦ではどんなプレーを見せるのか 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

――日本戦でのムーイの起用はかなりハマっていたと。

らいかーると そう思いましたね。ただ、その後は一切やっていないし、それどころかフルスティッチとロギッチの併用すらない。だから、ボールプレーヤーの同時起用は、日本戦のためだけに用意したものだったかと。

みぎ そのうえ、ムーイは新型コロナウイルスの陽性反応が出たことで、今回のメンバーから外れましたね。

らいかーると だからこそ、どんなメンバーを送り出してくるのか。その顔ぶれや誰をどこで使うのかによって、オーストラリアのゲームプランがかなり見えるんじゃないかと思います。ムーイはいませんが、フルスティッチ、ロギッチ、アーバインの3人が同時に出てくるだけでも、日本にとって厄介だと思います。彼らはいずれもプレッシングの届かないところに移動することができる選手たちなので。

みぎ 先ほど、「4-3-3に変更するのを読み切っていたかのような」という話がありましたが、今回の対戦では、日本は4-3-3というシステムも、メンバーも変えないと思います。一方、オーストラリアはどんなメンバーで来るのかわからない。もし、ムーイに代わるボールプレーヤーが再び左サイドに入ってきた場合、日本はどのように対処すべきですか?

らいかーると 守備の配置を変えてしまうのがいいと思います。例えば、南野拓実と大迫勇也(※招集辞退)の2トップにした4-4-2でブロックを組むというのがひとつ。ただ、今の日本代表は、リバプールが絶対に4-3-3で守るのと近いイメージがあるので、変えないでしょうね。だから、みんなで頑張ってスライドするしかないと思います。残り時間が少なくなったら、4-4-2でブロックを組むかもしれませんが。

オーストラリアは日本の布陣を読んでいたかのようにムーイをサイドで起用。今回の対戦でもサプライズ起用はあるのか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――オーストラリアはここまで、ほぼ同じメンバーを起用してきましたが、1トップの人選はかなり変化していますよね。

みぎ 日本との第4戦までは、セレッソ大阪に所属するアダム・タガートが先発起用されていました。決定力に長けるわけではないんですけど、ポストプレーがうまいので、1列下がってボールを受ける。そのとき、両ウイングのボイルとアワー・メイビルが内側に入ってきて、2トップのような形になったりしていたんです。タガートは2列目を生かすのがうまい選手だなと。

 そのタガートが負傷離脱したので、その後はジェイミー・マクラーレン、ミッチェル・デューク、マシュー・レッキーが務めています。レッキーはそもそもサイドアタッカーなので、相手の最終ラインの裏を取るのがうまい。デュークは走力があるので、これまではチームの運動量が落ちてくる後半途中から起用されることが多かったですね。マクラーレンはストライカータイプの選手です。

らいかーると 正直、1トップは誰が出てきても気にしなくていいと思います。むしろ、ここにとんでもないストライカーが一人いたら、オーストラリアは相当強かったんじゃないかなと。たしかにレッキーは裏取りがうまいし、サイドに流れても強いので、一番面倒くさい選手ではありますけど、おそらくサイドで起用される方がレッキー自身はやりやすいでしょうね。だから、1トップはあまり気にならないです。

みぎ 日本としては今回、冨安が負傷で出られないのが気がかりですが、それでも吉田麻也、谷口彰悟、板倉滉のうちの2人で、オーストラリアの1トップはしっかり抑えられるんじゃないかという気がします。

らいかーると あと、オーストラリアは引き分けに終わった中国戦(11月17日の第6戦△1-1)で3-2-5のビルドアップをやっていて、「なんだ、こりゃ!?」と。全然機能していなかったんですけど、こういうこともやるんだなと思って。3-2-5のときはサイドバックが大外に張っていて、何もできなかったんです。日本戦でやってくるとは思いませんが、そういう選択肢も持っていることは頭に入れておいた方がいいと思います。

ポイント2 プレッシングラインをどこに置く?

10月の対戦における両チームのスタメン。オーストラリアではムーイ、日本では大迫、酒井、冨安の欠場が決まっている 【YOJI-GEN】

――両チームは、どのようにゲームに入ると思いますか?

らいかーると みぎさんがおっしゃるように、オーストラリアはボール保持を志向するチームなので、日本がどこからプレスに行くのかがポイントだと思います。おそらく最初の10分くらいは前から行って、その後はオーストラリアにボールを持たせるのかなと想像しています。

 一方、オーストラリアがどうするのかにも注目です。オーストラリアはどの試合もボール非保持では4-4-2で、そんなに前から行かないイメージが強い。ただ、サウジアラビア戦(11月11日の第5戦△0-0)だけ、前からかなりプレスをかけていた。日本に負けた直後のゲームだったから気合いが入っていたのかもしれないし、ホームの大歓声に後押しされたのかもしれない。その試合だけは最後までインテンシティを高く保っていたんです。

みぎ あの試合はサウジアラビアもハイテンポで、互いにやり合っていましたよね。状況を整理すると、日本は勝てばW杯出場権を獲得、引き分けでも大きなアドバンテージを得て3月29日のベトナムとの最終戦を迎えます。

 それに対して、オーストラリアは勝たなければならないし、ホームゲームなので、僕はガンガン来るのではないかと思います。日本は引き分けでもいいわけだから、90分を通してハイテンポでやり合う必要があるのかどうか。10月のオーストラリア戦では、突貫工事だったからかもしれませんが、4-3-3のプレスがあまりハマらなかった印象があるんです。だから、多少構えてもいいんじゃないかと。

オーストラリアのホームで行われたサウジアラビア戦は、両チームが激しくぶつかり合った末に0-0のドローに終わった 【写真:ロイター/アフロ】

――だとすると、日本としては伊東純也を生かしてカウンターでオーストラリアをけん制したり、相手の最終ラインを押し下げたりする攻防の中で、相手にミスが生まれるのを待つような展開を狙いたい?

らいかーると それが最も勝つ確率の高い戦い方だと思います。ただ、日本は4-3-3に変更してから、田中や守田、遠藤がいい立ち位置を取れるようになり、ボールを持てるようになった。それはひとつの武器だと思います。その武器を日本がどれだけ出そうとするか、あるいは出そうとしないのか。オーストラリアがどれだけボールを奪いに来るかは、この試合の大きなポイントでしょう。おそらく前半はそのせめぎ合いになるんじゃないかと想像します。

 オーストラリアはボール保持がうまいんですけど、センターバックはあまり運べない印象です。自分で運んでいって相手を引き付けて、味方をフリーにするといったプレーを苦手にしている選手が多い。だから、ボール保持において「そんなミスをするんだ!」というシーンがすべての試合で見られるんです。なので、日本は我慢してプレッシングすれば、絶対にボールを奪ってカウンターを繰り出すチャンスが訪れる。そこを日本がどう考えるのかは楽しみです。ボールを持たなくてもチャンスを作れる展開になるはずですから。

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著者プロフィール

構成:飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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