W杯アジア最終予選特集 #この一戦にすべてを懸けろ

帰ってきたキャプテン・吉田麻也の覚悟 豪州に勝って「日本の歴史を変える」

飯尾篤史

日本代表の試合をテレビ観戦したのは、負傷離脱した12年6月以来のこと。客観的に試合を見られたのは有意義だったようだ 【Photo by Kaz Photography/Getty Images】

 頼れるキャプテンが戻ってきた。ワールドカップ(W杯)7大会連続出場に王手をかけた3月24日のオーストラリア戦のメンバーに、負傷離脱していた吉田麻也が選ばれた。自身が欠場した中国戦、サウジアラビア戦をどう見ていたのか。ここまでの最終予選の戦いでターニングポイントはどこにあったのか。チームの雰囲気、決戦に向けた心境と覚悟について話を聞いた。

中国戦はイギリスで富安とテレビ観戦

――1月の中国戦、2月のサウジアラビア戦は負傷のために欠場しました。同じく負傷していた冨安健洋選手と一緒にテレビ観戦したそうですね。

 イギリスでリハビリをしていたので、中国戦は冨安と一緒に見ながら「ここはこうした方がいいな」とか、「ああした方がいいよな」とか、意見をすり合わせながら見ました。僕にとっても、彼にとっても、チームにとっても、プラスになるんじゃないかなと思います。

――外から日本代表を見てみて、いかがでしたか?

 複雑というか、新鮮な気持ちでしたね。予選をテレビで見るのは、ザックさん(アルベルト・ザッケローニ)が監督のときにオマーン戦で負傷して、オーストラリアのアウェイゲームに行かなかったとき以来だと思うんですけど(2012年6月)。何も情報がないフラットな状態でチームのパフォーマンスや雰囲気を観察するのは、とても勉強になりましたよ。

――どんなところが気になりましたか?

 細かいことはたくさん思ったんですけど、大まかには、攻め方をどうしていくか。今は右からの攻撃の比重が大きいので、左からの攻め方ももう少し構築しないといけないなとか。

――もう少し具体的に言うと?

 右に比べて左の方が停滞する回数が多いのと、右に比べて距離感がちょっと良くない気がしますね。特に(南野)拓実がボールを受けたときに連動する動きが少ない。拓実にボールが入ったときには次の選手が動き出しているとか、誰かに入ったときに拓実が動き出しているとか。そういうシーンがもう少し出てきたらいいんじゃないかなと思います。

 もしくは、右で(攻撃を)作れるんだったら、左で仕留めてもいいだろうし。攻撃の幅がもう少し広がれば、相手は分析しにくくなると思います。次に対戦するオーストラリアは、センターラインはフィジカル的に強いんですけど、サイドバックのところは攻略の糸口になるんじゃないかと思っていて。監督やスタッフと話したわけではなく、僕の個人的な見解ですけどね。

――2月のサウジアラビア戦の先制点のように、伊東純也選手が右サイドを突破して、南野選手がゴール前に入ってくるようなシーンがもっと増えるといい?

 拓実の得点力の高さはみなさんもご存じでしょうけど、右から攻めて拓実がフィニッシュするとか、左から攻めて純也が仕留めるとか、両サイドから攻撃できるのが一番いいと思います。何よりあのシーンで良かったのは、積極的にボールを前に付けたこと。ボールを奪ってカウンターになった瞬間、(酒井)宏樹の横に(遠藤)航がサポートに行っているんですね。スピードダウンして、横にボールを預けることも考えられる中で、純也なら裏で勝負できるし、相手(【5】アリ・アル・ブライヒ)がすでにイエローカードをもらっていることも、宏樹の頭にあったと思うんですよね。

 それでチャレンジのボールを出したと。大迫(勇也)も周りをよく見ていた。前に持ち出す勇気は、この最終予選で欠けていた部分だったと思うので、そういうメンタリティが見られたのは、ゴールを取ったこと以上に良かったと思います。あまり戦術の話をすると怒られるので、これくらいで勘弁してください(笑)。

勉強になった谷口のボールの付け方

谷口のボールの持ち運び方を客観的に見られたことは、自身のサッカーのアップデートに役立ったという 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――吉田選手と冨安選手の代わりにセンターバックを務めた谷口彰悟選手、板倉滉選手のコンビは新鮮だったと思います。彼らのプレーを見て、インスピレーションだったり、ヒントだったり、何かピンと来るものはありましたか?

 彰悟のボールの持ち運び方、持ち出し方……おそらく川崎(フロンターレ)は試合中にボールを保持している時間が長いので、そういう部分がどんどん伸びているんだと思うんですけど、ボールの付け方や遊びのパスは川崎らしいなと思いましたね。短い遊び球を出しつつ、長いのを出す機会もうかがいながら、っていうのは勉強になりましたし、こういう難しい試合でどういうふうに攻めていくのか。これから僕がサッカーをしていくうえで、自分のサッカーのアップデートにすごく役立ったなと思います。

――日本代表がW杯アジア最終予選で5連勝するのは初めてのことです。ジーコジャパンも、岡田ジャパンもザックジャパンも成し遂げられなかったことを達成できた要因、このチームの強さはどこにあると感じていますか?

 要因は……追い込まれたからですよね(苦笑)。勝つしかなくなったから。そこに尽きると思います。そういう意味では、ザックさんのときの最終予選はもっと余裕があった。追い込まれたのは自分たちで蒔いた種だし、自分たちでしっかり収穫して、結実させないといけないなと。その責任は自分にもあるし、このまま6連勝、7連勝で終えたいですね。

――追い込まれたことによって、チームとして研ぎ澄まされていったと思います。ここまでの戦いでチームのステージが上がった、ひと皮むけたと感じた瞬間、試合はありますか?

 乗り越えたなと思うのは、やっぱりホームのオーストラリア戦。正直、引き分けてもおかしくない展開で、よく最後、(浅野)拓磨が決めてくれたんですけど(記録上は相手のオウンゴール)。引き分けではなく勝ちにつなげられたところと、前回のサウジアラビアとの直接対決でリベンジしたところ、そのふたつがグッと伸びたところかなと思います。


――吉田選手もその一員だったザックジャパンやハリルジャパンと比べて、今のチームにどの程度の手応えを感じていますか? あるいはまだまだですか?

 どちらもありますね。手応えというか、全体的に多くの選手がインターナショナルなレベルに近づいている。その一方で、トップ・オブ・トップに近づいている選手が少ない。そこが課題かなって思います。ベルギーやオランダなど、ヨーロッパのいろいろなリーグでプレーする選手は増えましたけど、リバプールやアーセナルといったレベルのクラブで試合に出ている選手は少ないですよね。世界レベルに近づいてはいるんだけど、トップ・オブ・トップに近づいていないという現実は、成長であり、課題でもあると思いますね。

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著者プロフィール

飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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