角田裕毅が肌で感じた“凄すぎるF1の世界” 独占インタビュー
今シーズンがF1参戦2年目となる角田裕毅。そんな彼が感じた「F1ならでは凄さ」について語ってもらった 【Red Bull Content Pool】
ちょうど1年前に初めてF1に足を踏み入れた角田裕毅も、さぞ驚いたり、予想外の事態に戸惑ったりしたことだろう。独占インタビュー[パート2]では、角田の目を通したF1の世界を紹介しよう。
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つらかった時期も、ついエゴサーチ
国際中継などで見られるだけでも角田を支えるスタッフの数は少なくない。しかし、実際は画面に映らないところにも大勢のスタッフが存在している 【Red Bull Content Pool】
角田 まずは、チームの規模ですね。そしてF1というスポーツをフォローしている世界的な規模。そのふたつに驚きました。チームの規模は、もちろん人数としては分かっていましたけれど、実際にイタリアのファクトリーでスタッフの皆さんと対面したときに「あぁ、これだけたくさんの人たちが、たった2台のために働いてくれているのか」と素直に驚きました。F2までの規模だったら、全員とコミュニケーションを取ることも簡単です。でも、F1では、それも難しい。そのなかでどれだけチームを味方につけるか。どれだけチームと一緒に進んでいけるか。その難しさは、すごく感じましたね。
そして、もうひとつの驚きが世界中のファンの存在ですね。レースでうまくパフォーマンスが発揮できないときには彼らの批判だったり、厳しいメッセージだったりが、山のように届く。そこで初めて実感しました。これだけの人数が週末のレースを観ているんだと。それだけF1というのは、本当に厳しい世界だと思いました。ただそれも、少しずつ乗り越えられてきたというか、適応できていますね。何を言われても、今ではほとんど何も感じません(笑)。去年の前半は、どうしても自分の評価が気になっていた。でも、それが逆効果というか、自分への厳しいメッセージを目の当たりにして、つらい気持ちになりましたね。今では、そういうものを見ても「面白いな」と思えるようになった。「見返してやる」とか、そういう気持ちでもありません。単純に「面白いな」と思うだけです。
──去年の厳しい時期も、情報をシャットアウトせずに、エゴサーチしていたんですよね?
角田 そうですね。シャットアウトする行為も、それはそれでエネルギーを使うし。なので僕は素直に見るタイプです。見て、落ち込んだ(笑)。でも結果的に、それでよかったんだと思います。そのうち何も感じなくなっていき、そこからは自分の走り、自分の課題の克服に集中できるようになった。シーズン前半は、全然そういう状態じゃなかったですけれど。とにかく開幕戦バーレーンが良かったので、そこからの評価の落ちがかなり気になってしまったのが本音です。でも、そのあとは何もかも失って、そうしたらもう上がるしかない。
──同時に同じくらい励ましのメッセージも来ていたでしょう。
角田 はい。それは本当にありがたかったです。
自分も凄いから、この世界にいる
世界でわずか20席しか存在しないF1のシート。そのなかで頂点に立つためには「死に物狂いで努力しないといけない」と角田は語る 【Red Bull Content Pool】
角田 わりと早く適応できましたね。さすがに3連戦で、しかも国同士が大きく離れているときは、飛行機に乗っている時間が長くてちょっときつかったですね。レース後の疲労回復も、遅くなっているのを実感しました。でも、今まで知らなかったいろいろな土地を訪問できた。去年、レースのないときはファクトリーに行くしかなかったので、世界中に出かけられることは、旅行感覚で逆に楽しかったです。そこまでつらさは感じませんでした。一方でエンジニアやメカニックの人たちは、長いあいだ家族と離れ離れになっていた。イタリア人は特に家族を大事にしますから、あれは辛かったと思います。チームと一緒に、何とか乗り越えていたという感じだったと思います。
──そこにコロナ禍も加わった。
角田 そうですね。レース以外のタイミングで、好きな国に旅行できなかったりするのは、ちょっと残念でした。とはいえ、レース週末のPCR検査とか、感染対策の一環として敷かれていた厳しいバブル制限などは、もう慣れましたね。
──一緒に戦うドライバーに関しては、やはり凄さを感じますか。あるいは同じクルマに乗れば決して負けてないと思っているのか。
角田 それぞれのドライバー、凄いなと思うところはもちろんあります。彼らの強さは、いうまでもなくF2時代以上に感じます。それでも同じクルマに乗ったとき、最終的に勝てる自信は失っていません。自分も凄いから、今ここにいるわけで。もちろんみなさん凄いですけれど、自分は彼らに負けてない。(ルイス・)ハミルトンや(マックス・)フェルスタッペン(の領域)に達するには、今まで以上に死に物狂いで努力しないといけない。でも、それができる自信はあります。