日本代表ペア初の五輪入賞は物語の序章 走り続ける“りくりゅう”のゴールは、まだ先にある

沢田聡子

「フリー滑らせてくれてありがとう」

フリーで自己ベストの141.04点をマーク。得点を確認すると、喜びを爆発させた 【Photo by Matthew Stockman/Getty Images】

 木原にとって北京五輪は、それぞれ別のパートナーと臨む3回目の五輪となる。しかし五輪の個人戦でフリーに進むのは、この北京大会が初めてだった。本番直前の6分間練習の際、木原がブルーノ・マルコットコーチと談笑しているのが記者席からも見えたが、木原は思い出したその事実についてコーチと話していたのだという。

「『今日は別に順位なんてどうでもいいんだ、なぜなら僕は初めてフリーを滑れるんだから』という話を直前に先生としていたら、三浦さんが笑ってくれていたので、よかったなと思います」

 しかし、三浦はその木原とコーチのやりとりを「あまり聞いてなかった」と言う。

「でも今日の練習前も、本番始まる前も『フリー滑らせてくれてありがとう』って言われて、『本当に龍一くんと組んでよかった』と思いました」

 気持ちを整えることができた二人は、フリーに臨む。『Woman』が流れ、高く美しいトリプルツイストリフトから演技が始まった。続く3連続のソロジャンプでは一つ目のジャンプが回転不足と判定されたものの着氷。三浦にとっての課題だったと思われるソロジャンプについては、もう一つの3回転サルコウも回転不足をとられたものの、大きなミスはなかった。二人の見せ場であるリフトはどれも雄大に決まって、スケーティングもよく伸びており、力を出し切ってプログラムを滑り終えた。木原が「滑り、顔(の表情)、トランジション、スピードは、今シーズンの中で一番できたんじゃないかな」と振り返っているように、会場を引き込む魅力のある素晴らしいフリーだった。

 充実感にあふれた表情でキスアンドクライに座った二人は、自己最高得点を更新する141.04というスコアを見て、喜びを爆発させた。二人で臨んだ初めての五輪は、フリーだけの順位では5位、総合でも7位入賞という充実した結果となった。「僕たち二人はいろんな方々が応援してくださったからここまで来ることができて」と木原は言う。

「応援してくださった方に対して『できたよ』という思いがこみ上げてきて。言葉にはうまく表せないのですが、今までうまくいかなかったこと、つらかったこと、でも今日はできた、という思いがあふれ出てきました」

「トータルでの順位はやっぱり悔いが残ったのですが、フリーでは目標としていた5番に入っていたので。悔しいですけど、フリーの順位としては満足しています。でもトータルの順位としては悔しかったなと思います」

 木原はそう振り返り、「本当にチャンスがあったので、やっぱりもったいなかったね」と優しく三浦に語りかけている。「ごめんなさい」と言う三浦に木原は「ドンマイ」と返し、報道陣を笑わせた。
 

世界との距離と未来への挑戦

「ゴールはまだ先にあるかなと思っています」と語った木原。4年後、8年後への挑戦も誓った 【写真は共同】

 報道陣からの質問は続いた。そして「さらに上に行きたいという気持ちが芽生えているか」と問われると、木原は表情を引き締めた。

「今回目標にしていた5位はトータル順位では達成できませんでしたが、実現不可能な目標ではないということはすごく分かったので。やはりまだまだトップとの差はありますが、世界選手権ではメダル争いにどんどん食い込んでいけるようになっていきたい」

 日本ではシングルに比べてまだメジャーではないペアという種目をアピールする役割を担っていることも、二人は自覚している。木原は「まだまだ僕たちが頑張らなければ」と言う。「このオリンピック期間は、本当にいろいろなスポーツを皆様が注目してくださるのですが、やはりオリンピックが終わってしまったら、結果を出さなければなかなか注目し続けていただくことは難しいと思うので。まだまだ自分たちが頑張らなければ、ペアは次の世代が出てこないかなと思っています」

 木原は「まだまだ、ここがゴールではない」と話す。

「本当に今、世界と戦えるようになってきたので、まだまだ走り続けて。ゴールはまだ先にあるかなと思っています。4年後も、8年後も目指したいです」

 少しの悔しさと確かな手応えを残して終わった初めての五輪は、“りくりゅう”が紡いでいく物語の序章でしかない。

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著者プロフィール

沢田聡子

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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