「自分らしい滑り」の体現で坂本が銅獲得 個性煌く女子シングルを安藤美姫が総括
自分の滑りを最後まで貫いた坂本。女子シングルでは3大会ぶりのメダル獲得となった 【写真は共同】
表彰台独占も予想されたROC(ロシアオリンピック委員会)勢は、アンナ・シェルバコワとアレクサンドラ・トルソワが実力を遺憾なく発揮して金銀のワンツーフィニッシュ。一方で禁止薬物の陽性反応が出るなど、ドーピング問題において渦中のカミラ・ワリエワは、精彩を欠く滑りでまさかの4位となった。それぞれの個性が発揮され、ハイレベルな戦いとなった女子シングル。2006年トリノ・10年バンクーバーと2大会連続で五輪に出場し、世界選手権を2度制した安藤美姫さんに、まばゆい輝きを放った選手たちの活躍を総括してもらった。
自分の滑りに集中し、らしさを見事に表現した坂本
4回転やトリプルアクセルなど高難度の技がなくても、自身のスケーティングを極めることで勝負できること証明した坂本 【写真は共同】
そして、迎えたフリーでは伸び伸びとしたいつもの空気感で滑っていました。力強いスケーティング、スピード感、そしてダイナミックなジャンプと坂本選手の持ち味を存分に発揮できていたように思います。特に誰が見ても減点されない高さと飛距離があるジャンプは素晴らしかったです。
また、今まで課題だった5コンポーネンツや表現力、スケーティング技術においても向上が見られました。4年間で培ってきたものがこの大舞台で発揮された印象を受けましたね。今シーズンの序盤では、「フリーでどう表現していいかしっくりこない」と悩んでいた時期もありましたが、大会を経ることで音の表現や音楽の意味がどんどん分かってきた印象です。それが五輪でバッチリはまってフリーでも自己ベストを更新する最高の滑りで、彼女の強さやらしさを表現できたのだと思います。
坂本選手は結果にとらわれることなく、「自分に集中して、自分の滑りをする」ことに全神経を傾けていました。実はそれが一番難しくて、自分の演技を100%出し切ることは簡単なことではないんですよ。彼女らしさを表現することに集中できたからこそ、結果もついてきたのだと思います。さすが、2回目の五輪なだけあって「自信をつけてきたな」という印象を受けました。
初出場ながら5位入賞と実力を発揮した樋口
ショート・フリーともにトリプルアクセルを成功させた樋口。この経験を武器にさらなる飛躍を目指したい 【写真は共同】
また、2回目の坂本選手と違って五輪初出場にもかかわらず、樋口選手が最終順位で5位となったことは、「日本のフィギュアスケートは強い」ことを世界に見せつけてくれたと思います。「ライオン・キング」の音楽に乗せた滑りは、完璧ではなかったかもしれませんが、持ち味であるステップで見せられた部分もあると思います。五輪での経験を生かして、次の世界選手権などの大会でより成長した姿を見せてほしいですね。
同じく五輪初出場となった河辺選手は、ショートもフリーも6分間練習からすごく緊張していた印象です。表情や動きもあまりよくなかったので、それがそのまま本番の演技にも出てしまったのだと思います。「五輪のような大舞台で、緊張していても自分の力を発揮できるようになりたい」と本人も言っていましたが、そうした課題を強化していくことが重要になりますね。
河辺選手はまだ17歳ですし、初めての五輪でミスが出てしまうのは普通のことだと思います。アスリートであってロボットではないので、完璧にはいかないのが人生です。五輪の舞台を経験したことを糧に、今後の飛躍を遂げてもらいたいです。五輪出場の切符を自分の手で勝ち取っていますし、大舞台でフリーまできちんと進めた自分をまずは褒めてあげてほしいですね。