連載:22年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

3年ぶりのPO復活で競争力アップ? 番記者によるJ2展望座談会【後編】

飯尾篤史
 J2を知り尽くす3人のライター、東京ヴェルディに密着する海江田哲朗氏、水戸ホーリーホックを丹念に取材する佐藤拓也氏、FC町田ゼルビアを追う郡司聡氏が各チームの補強や陣容について語り合うこの鼎談。Aクラス、Bクラスについて評価してもらった前編に続き、後編では残りのBクラスとCクラスについて分析してもらった。

●Aクラス予想(※並びは順位予想順)
海江田:横浜FC、長崎、千葉、岡山、大分、山形、仙台

郡司:町田、横浜FC、千葉、長崎、山形、仙台、新潟

佐藤:長崎、横浜FC、仙台、大分、千葉、岡山、町田

●Bクラス予想
(※並びは順位予想順)
海江田:町田、東京V、徳島、甲府、新潟、水戸、秋田、琉球

郡司:岡山、水戸、徳島、大分、東京V、甲府、琉球、大宮

佐藤:山形、新潟、徳島、甲府、大宮、水戸、東京V、秋田


※詳しくは前編をご確認ください。

ユース出身者と大卒選手の融合を図る東京V

昨季も明治大卒のルーキー佐藤凌我(中央)がブレイク。低迷が続く東京Vだが、優秀な大卒選手を積極的に獲得するチーム作りの方向性は間違っていない 【写真:アフロスポーツ】

──続いて、海江田さんがBクラスの2番手に推すヴェルディ(昨季12位)ですが、郡司さん、佐藤さんの評価はそれほど高くないようですね。

海江田 Bクラスに入れていただけただけでもありがたい(笑)。過去3年は13位、12位、12位のチームですから。ただ、チーム作りの方向性は間違っていない。もともと大卒選手をたくさん獲るチームではなかったけれど、今年は有望な大卒ルーキーが5人もいて、なかでも明治大卒のSB加藤蓮あたりは開幕スタメンを狙えるかもしれない。日体大の河村慶人も、まるで野獣のようなストライカーですよ。

郡司 とはいえ、松本山雅FCから獲得した阪野豊史が、アキレス腱断裂の大怪我で長期離脱となったのは痛手ではないですか? 堀孝史監督が浦和レッズのユースを率いていた頃の主力で、いわば愛弟子ですよね。

海江田 今シーズンの目玉的な新戦力で、計算の立つストライカーでしたからね。終盤戦になんとか戻って来てくれたらいいんだけど。あと、どうしてこんな日程になったのか分からないけど、3月までの7試合のうちアウェーが5試合。この序盤戦でつまずくと、反発力を生み出すのに結構苦労しそう。

郡司 ヴェルディのボールを握って相手を押し込むボリューム感は、町田も見習いたいくらい凄い。相手の長所を消す堀さんのスタイルと、ボールを保持するヴェルディのアイデンティティのバランスを取りながらシーズンを戦い抜ければ、プレーオフ圏内にも食い込めるかもしれません。

海江田 堀さんも1年を通して監督をやったことがないからね。2018年の浦和レッズでも、序盤戦でスパッと代えられてしまったし。

郡司 戦い方の落としどころを早く見つけて、それで結果が伴えばノッていけるんでしょうが、悪い方向に振れる可能性もありそうですよね。

佐藤 さっき海江田さんもおっしゃってましたけど、もう完全に方針転換したのかなって思うくらい、最近のヴェルディは大卒の逸材を獲ってますよね。去年、明治大から入った2年目の佐藤凌我も、すっかりエースに成長しましたし。ただ、ユース出身者と大卒の選手を上手く融合できれば、勢いに乗るポテンシャルがある反面、軌道に乗るまでは浮き沈みが激しいかもしれない。堀さんがその波をどれだけ小さくできるか、ですね。

海江田 強化部長の江尻篤彦さんの方針も、テクニカルなアカデミー出身者とアスリート能力の高い大卒選手の融合。大卒ルーキーたちはみんな「対人には自信があります」って言うんだけど、それが本当に強いから驚く(笑)。

魅力と成績が伴わない甲府の吉田達磨監督

サッカーマンとしての魅力に溢れる吉田達磨監督(写真)だが、結果がなかなかついてこない。4年ぶりに復帰した甲府をJ1昇格に導けるだろうか 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

──昨シーズン3位のヴァンフォーレ甲府が軒並み低い評価ですが、海江田さん、吉田達磨監督が4年ぶりに復帰したチームは、実際どうなんですか?

海江田 吉田達磨さんほど、魅力と成績が伴わない監督っていないですよね。話すとみんな魅了されるんだけど、なぜか結果が出ない。これはもう謎ですよ(笑)。マネジメントの部分に決定的に足りない何かがあるのか。一応選手は揃っているので、ここでチームを上位に導ければ、監督としてのステージを1つ、2つと上がっていけるんだろうけど。

佐藤 僕は話をしたことも取材をしたこともないんですが、結果を残せていないのにこれだけ引きがあるっていうことは、人間性やサッカー観、指導内容が魅力的なのかなって。

郡司 たぶん、一緒に夢を見たくなるんでしょうね。

海江田 でも甲府のサポーターからすれば、昨シーズンは昇格にあと一歩のところまで迫ったんだから、ここはもう少しリアリストを連れてきてくれよって(笑)。

郡司 チーム戦術の落とし込みとか、ラージグループで回していくマネジメントに長けていた前任の伊藤彰さん(現ジュビロ磐田)から、どちらかというと若手の育成に長けた指導者色の強い達磨さんに監督が代わって、やっぱり多くを望むのは難しいかもしれない。ただ、シンガポール代表を率いた約2年の経験が、「監督・吉田達磨」をどう変えたのかは注目したいし、そこがまさに浮沈のカギを握りそうです。

──柏レイソルのユースを率いて、まるでバルセロナのようなスタイルを築き上げた頃のロマンが、みんな忘れられないんでしょうね。

郡司 当時の柏ユースには、酒井宏樹(現浦和レッズ)や工藤壮人(現テゲバジャーロ宮崎)など、もともと素質のある選手がいて、それが達磨さんだったから伸びたのかどうかは分からない。まあ、賭けてみたくなる魅力はあるんでしょうね。

佐藤 僕は昨シーズンの甲府をCクラスと予想したので、まずは謝らなきゃいけないんですが(苦笑)、3位という結果に、あのクラブの底力を見せつけられた思いがしましたね。どんなに選手を引き抜かれても、スカウティングがしっかりしているから、クラブのフィロソフィーに合った人材をすぐに連れてきて、補填してしまう。今年も法政大の飯島陸みたいな好タレントを獲得しましたしね。だから現時点では中位に予想していますが、それを覆すクラブ力というか、蓄積された力が甲府にはあって、今シーズンもまた驚かされるんじゃないかという予感がなくもないんです。

郡司 長谷川元希とか、昨シーズンも大卒ルーキーを上手くチームに組み込んで主力に育て上げたし、そういったサイクルをクラブとして作り上げていますよね。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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