連載:セ・パ名捕手が選ぶ! 2022年期待の若手選手たち

佐藤輝は30発が条件、巨人新55番も注目 谷繁元信が期待するセ・リーグ若手野手は?

小西亮(Full-Count)
 プロ野球各球団の春季キャンプが始まり、選手たちはそれぞれのテーマを掲げて約1カ月を過ごす。レギュラー奪取に向けて若手は序盤からアピールに走り、主力は他球団の対策に備えて進化を試みる。現時点で万全なチームは少なく、シーズン通して“若い力”の台頭は浮上に欠かせない。大洋・横浜と中日で通算3021試合出場のプロ野球記録を持つ元中日監督の谷繁元信氏が、若手を中心にセ・リーグ6球団のキーマンを選出。前半の投手編に続き、注目の野手たちについて語ってもらった。

佐藤輝へ「打てるところに投げさせろ」

今年は当然打率3割、30本塁打、80〜100打点が期待される阪神・佐藤輝 【写真は共同】

――投手編と同様に、昨シーズン優勝の東京ヤクルトからお伺いします。主砲の村上宗隆、山田哲人を中心に打線は充実しているように思います。

 真新しい選手が出てくるというよりは、もっと安定感が増したら嫌になる選手に注目しています。それは、塩見(泰隆)です。昨年は打率.278、14本塁打、21盗塁と成績を残していますが、三振数がリーグ2位の多さ(156三振)。もっと減らせると、さらに嫌な打線になっていくのではないかと思います。

――改善していくには、どんなことを意識していくべきなのでしょう?

 1ストライク目も、2ストライク目も、3ストライク目も、変わらず振れるのは彼の良さであり、欠点でもある。2ストライク後のバッティングをどう考えるかというのもありますし、昨年やってみて自分への攻め方もある程度分かってきているはず。それを打席の中で考えながら、球をチョイスできるかだと思います。

――当然、他球団は研究してきます。

 キャンプからオープン戦にかけて、他球団のスコアラーに「去年と変わったな」と思わせることも重要。ただ、一番やっちゃいけないことは、自分の良さを消してまで変えようとすることです。塩見の場合、相手が嫌なのは振られることなので、思い切りの良さは残しつつレベルを上げていってほしいですね。

――その塩見を上回る三振数を記録したのが、阪神の佐藤輝明でした。チームのキーマンにもなってきそうですね。

 やっぱり、阪神は佐藤ですね。昨年の前半はあれだけ打って、打線に厚みが出ましたよね。後半戦はスランプになりましたが、その経験を今年は絶対に生かしてほしい。スタミナや振る力はもちろん、僕は技術もあると思っています。あとは、自分が打てるボールを振るか振らないか。

――昨シーズン、不振に陥った佐藤輝をどう見てらっしゃいましたか?

 見えるだけに、いろんなボールに手が出てしまっている印象でした。だから勝手に追い込まれ、難しい球で打ち取られる。このパターンです。そうならないためには、自分の打てるところに投げさせるような打席にすること。口で言うのは簡単ですが、これができてくると真にいいバッターなってきます。打率3割前後、30本塁打前後、80〜100打点は期待したいですね。
 

背番号55継承「ジャイアンツが盛り上がる」

新背番号「55」は首脳陣の期待の表れ。秋広がキャンプ、オープン戦でどれだけ原監督にアピールできるか 【写真は共同】

――巨人の野手陣はどうでしょう? 主力が固まっていますが、若手のブレイクも期待したいところです。

 秋広(優人)は楽しみですね。ルーキーだった昨年春のキャンプでバッティングを見た時に「本当に高校生か?」という感じでした。単に飛ばすだけでなく、技術的なものも見えました。今年は背番号55にもなりましたし、近い将来出てくる選手じゃないかと思っています。岡本(和真)はいますが、なかなか生え抜き野手が出てこない現状もあるだけに、秋広あたりが出てくるとジャイアンツも盛り上がってきそうですよね。

――秋広にとっては高卒2年目のシーズンになります。

 いきなりレギュラーを獲る可能性もゼロではないですが、ある程度は段階があると思っています。まずはキャンプでアピールして、実戦で結果を出していく。加えて結果じゃない部分もあって、首脳陣に「おっ、今年いけるかも」というものを見せないといけない。監督も本人もやらなきゃいけないことや課題は分かっているはずなので、それをやろうという姿を見せることができるかですね。

――ここからは昨シーズンBクラスの3球団についてお伺いします。広島は主砲の鈴木誠也が抜け、その穴は決して小さくないかと思います。

 誰が代わりに入るかというのも気になりますが、代役はいないんですよね。何人かでカバーしていかないといけない。打線を少しでも支えていくという面では、坂倉(将吾)に注目しています。昨年は捕手と一塁を掛け持ちして大変だった中で、打率.315の成績を残した。軸がぶれず、欠点の少ないバッターですよね。どんなボールでも対応できる。

――今シーズンは、どう使っていくかというのもポイントになりそうです。

 今年も掛け持ちなのか、どちらかのポジションがメインになるのか、興味があります。本人はキャッチャーをやりたいのかもしれませんが、チーム事情もある。ただ、球界を見渡しても、最近は“打てるキャッチャー”がいないので、見てみたいという思いもありますね。

――同じ捕手で言うと、2017年ドラフト1位の中村奨成は5年目を迎えました。そろそろ結果がほしい時期でもあるかなと。

 どういう形で試合に出て、どう結果を残していくかを考えていかないといけない。いいものは持っていると思います。自分の経験から言うと、僕も高卒4年目までは大したことなかった。5〜7年目くらいからやっと結果が出始めてきたんでね。焦らずって言うと、周りから「そんなこと言っている場合じゃない」と言われそうですが(苦笑)。“焦らず、焦って”という感じ。気持ちばかり焦っても良くないですから。

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著者プロフィール

1984年、福岡県出身。法大卒業後、中日新聞・中日スポーツでは、主に中日ドラゴンズやアマチュア野球などを担当。その後、LINE NEWSで編集者を務め、独自記事も制作。現在はFull-Count編集部に所属。同メディアはMLBやNPBから侍ジャパン、アマ野球、少年野球、女子野球まで幅広く野球の魅力を伝える野球専門のニュース&コラムサイト

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