「勘違いドラフト」や2人の優しい素顔… YouTube対談 真中満×ラミレスの舞台裏

平尾類
【元監督の疑問】真中×ラミレスが首を傾げる日本野球の体質「古いジャパニーズスタイルは正直好きではない」【元監督対談#5】



 YouTubeの『スポーツナビ野球チャンネル』で実現した、元ヤクルト監督の真中満氏と元DeNA監督のアレックス・ラミレス氏によるスペシャル対談。ここでは2人と旧知のライターで、今回司会を務めた平尾類氏に、その舞台裏をレポートしていただく。真中氏の口から、あの「勘違いドラフト」について語られた理由、ラミレス氏が来季セリーグの上位3球団を大胆予測するに至った背景など、YouTubeの画面からは分からない対談の裏側を伝える。

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視聴者が求めるのは2人の砕けたトーク

監督時代はともにシビアな選手起用とポーカーフェイスで知られた真中氏とラミレス氏だが、勝負師の仮面を脱いだ今は、すっかり表情が穏やかになった 【YOJI-GEN】

『スポーツナビ』で真中満さんとアレックス・ラミレスさんのYouTube対談企画が持ち上がったのは、昨年10月上旬のことだった。

 筆者はかつてスポーツ紙に勤務していた頃、ヤクルトの監督を務めていた真中さん、そして巨人、DeNAでプレーしていた現役時代のラミレスさんに、番記者としてお世話になった。そうしたつながりもあって、お二人に今回の企画を打診したところ、快諾を得ることができた。

 ただ、キャストは完璧だが、問題は司会者。私自身、YouTubeで対談を仕切るのはこれが初めての経験で、不安が大きかったのだ。収録の1時間前にスタジオ入りし、コンテを確認したが、「用意された質問をすべて消化できなかったら……」、「会話をうまく盛り上げられなかったら……」などと、さらに不安が膨らんだ。

 スタッフの方たちが設営作業を行っているなか、落ち着かずにその場をうろうろしていると、収録開始30分前に真中さんが到着。控室へ挨拶に向かった私に、「平尾ちゃん、久しぶりだね。最近どうなの?」と気さくに話しかけてくれた。近況報告など雑談を交わすうちに、少しずつ精神的に楽になっていくのが分かった。

 真中さんは頭の回転が速く、柔軟な思考の持ち主で、俯瞰的に物事を捉えられる人物だ。コンテに目を通すと、企画の狙いをこう分析してくれた。

「この動画を見てくれる視聴者の人たちは、オレとラミちゃんの砕けたトークを楽しみにしていると思うんだよね。もちろん元監督同士だから、互いの野球論を交わす時間も必要だけど、ちょっと脱線した面白いエピソードも求められているんじゃないかな」

 視聴者が求めるコンテンツを届ける──。そうした基本的な視点が欠けていた自身の浅はかさを反省するとともに、ひとつ確認しておくべきことを思い出した。

あの一件のおかげでドラフト関連の仕事も

ドラフト史に残る勘違いガッツポーズ事件。視聴者が求めるコンテンツを届けたいという真中氏本人から、対談でこの一件に触れるべきとの提案があった 【写真は共同】

 この対談では「監督とドラフトの関わり方」がテーマのひとつだったが、そこにあえて入れなかった質問事項がある。今も語り継がれる「勘違いガッツポーズ事件」についてだ。

 真中さんがヤクルト監督時代の2015年プロ野球ドラフト会議。阪神と1位指名で競合した明治大・高山俊(現阪神)の交渉権を巡り、くじ引きに臨んだ真中さんは、先に封の中身を取り出すと、NPBのロゴマークのみが印字された紙を「当たり」と勘違いしてガッツポーズ。当時の阪神・金本知憲監督は自分のくじを確かめることなく、席に戻った。すぐに真中さんへのテレビインタビューが始まったのだが……。その後、NPB事務局がヤクルトのくじを確認したところハズレだったことが判明し、阪神が高山の交渉権を獲得したとアナウンスされたのだ。

 真中さんはこの珍事件によって、同年の「ゆうもあ大賞」を受賞。ワイドショーなどでも大きく取り上げられたが、当時ヤクルトの担当記者になったばかりの私は、「勘違いだし、笑うのは失礼」との考えから、あまりその件について触れなかった。

 あれから6年が経ったが、今も潜在意識の中に少なからず遠慮がある。しかし、視聴者のニーズに応えることを第一に考えた時、この一件について触れないのは司会者として失格だ。真中さんが「面白いエピソードで話を広げたほうがいい」と言ってくれたのは、視聴者目線に立つと同時に、そんな私の「迷い」を見透かしていたからかもしれない。

「真中さん、ドラフトの話題に時に、高山俊の一件について触れても大丈夫ですかね……」

 恐る恐るそう尋ねると、「全然いいよ! 散々それでいじられているし、あのおかげでドラフト関連の仕事ももらっているんだから」と言って笑い、「じゃあ、高山の件をラミちゃんはどう思っていたかも聞いて、お互いに監督としてドラフトにどういう形で関わっていたかっていう流れに持っていこうか」という提案までしていただいた。

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著者プロフィール

1980年4月10日、神奈川県横浜市生まれ。スポーツ新聞に勤務していた当時はDeNA、巨人、ヤクルト、西武の担当記者を歴任。現在はライター、アスリートのマネジメント業などの活動をしている。

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