「勘違いドラフト」や2人の優しい素顔… YouTube対談 真中満×ラミレスの舞台裏

平尾類

「お前のギャラももらうからな」と冗談を

16、17年の2シーズンは監督同士としてしのぎを削った。互いの腹を探り合うような采配の応酬で、当時のヤクルト対DeNA戦はスリリングな試合が多かった 【写真は共同】

 一方のラミレスさんとは、本番前に収録現場で挨拶を交わした。番記者時代からラミレスさんと話す際は、日本語と英語のミックスになる。ミックスと言うと聞こえはいいが、私が片言の英語しか話せないため、いつもラミレスさんが日本語を使って合わせてくれる。

 コロナ禍だったこともあって会うのは久々だったが、その身体は現役時代と変わらず筋骨隆々としていて、スーツを着ていても分かるほど胸板は分厚かった。そのことを指摘すると、「シャープになった? ノー、太ったよ」と言って、穏やかに笑う。

 収録では、「監督という仕事の醍醐味と難しさ」を最初のテーマに15〜20分のトークを予定していたが、話が弾んで30分を軽くオーバーしてしまった。するとここで真中さんが、助け舟を出してくれた。

「ちょっと長引いたな。次のテーマだけど、この部分は端折っていいんじゃないかな。新庄(剛志)監督と立浪(和義)監督の話は、こういう流れでいったらどう?」

 不甲斐ない司会者に的確なアドバイスを送ると、「お前のギャラももらうからな」と冗談を飛ばして現場を笑いに包む。真中さんの気遣いには感謝しかない。

 真中さんとラミレスさんは互いも認める通り、性格が非常によく似ている。観察力と洞察力に長け、監督時代はともにシビアな選手起用が印象的で、目の前のプレーに一喜一憂しないポーカーフェイスでも知られた。しかし、普段の2人はよく笑うし、とても人間性が豊かで優しい性格だ。だからこそ、チームの指揮を執る際には、意識して戦略家に徹していたようにも感じる。

 事実、2人がヤクルトとDeNAの監督として対戦した時は、互いの腹を探り合うような采配の応酬で、1球ごとに局面が変わるスリリングな試合が多かった。

来季のセリーグ順位予想をスラスラと

終始和やかな雰囲気で行われた今回のYouTube対談。収録の合間には、チームメイトとしてプレーしたヤクルト時代の話にも花が咲いた 【YOJI-GEN】

 監督とは孤独な仕事だ。選手との関係に神経を使いながら、チームを勝たせるという大きな使命を背負っている。ラミレスさんと真中さんも当然ながら、ユニホームを着ていた時は勝負師の顔になった。そしてメディア対応の際も、慎重に言葉を選んでいたように思う。

 言葉を大事にする点は、ともに野球評論家となった現在も変わらないが、一方で勝負師の仮面を脱いだ2人は、表情が穏やかになった。収録の合間に、ヤクルトのチームメイトとしてプレーした現役時代を振り返りながら、「あの頃は本当に楽しかったよね」と笑顔で語り合っていた姿が新鮮で印象的だった。

 動画をご覧いただいた視聴者の皆さんは、ラミレスさんの大胆な発言の数々に驚かれたかもしれない。「日本一早い来季の順位予想」という無茶振りにも、セリーグの1位から3位までをスラスラと答え、その根拠を理路整然と説明してくれた。そして、「いつかまた監督をやりたいか」という質問に対しては、想像もしていなかった返しが──。

 収録後、稚拙な司会進行を詫びると、「全然大丈夫よ、楽しかったね!」と言ってくれたラミレスさん。駐車場まで見送る際には、球界の未来などについて興味深い話もしてくれた。ラミレスさんの卓越した予見能力は、現役時代から定評があった。「自信をもって予想するんだけど、いつも外れるんだ」と笑うが、順位予想も含めて、その分析が的中するかどうか楽しみにしたい。

 真中さん、ラミレスさん、そして通訳の丸山剛史さんの3人に助けられてばかりだった今回の対談企画。それでも内容は盛りだくさんで、全5回の動画はどれも楽しんでいただけると思う。1人でも多くの方に見ていただけることを、願うばかりだ。

(企画構成:YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1980年4月10日、神奈川県横浜市生まれ。スポーツ新聞に勤務していた当時はDeNA、巨人、ヤクルト、西武の担当記者を歴任。現在はライター、アスリートのマネジメント業などの活動をしている。

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