元ヤクルト監督、真中満の素顔とは? 「オレが山田哲人を育てたわけじゃない」
先頃YouTubeの『スポーツナビ野球チャンネル』で実現した、元ヤクルト監督の真中満氏と元DeNA監督のアレックス・ラミレス氏によるスペシャル対談。現役時代はヤクルトでチームメイトだった両者が、「プロ野球監督」をテーマに熱く、楽しく語り合った模様はYouTubeの本編でご覧いただくとして、ここではスポーツ新聞社時代にDeNA、巨人、ヤクルトなどの担当記者を務めたライターの平尾類氏に、2人の人間性に迫ってもらう。まずは、2015年にヤクルトをリーグ優勝に導き、現在は野球評論家として活躍する真中氏の「素顔」だ。
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1年目で優勝という最高のスタートも…
ラミレス氏とのYouTube対談でも、テンポの良い語り口が印象的だった真中氏。その分かりやすい解説も好評だが、周りからは「そろそろ現場に──」という声も 【YOJI-GEN】
実は、15年と昨季の優勝には共通点が多い。まず、前年まで2年連続最下位で、低い下馬評を覆して混戦を制したこと。競り合った球団も巨人、阪神と同じだった。さらに、いずれも破壊力抜群の打線と強力な救援陣を前面に押し出したチームであったことも、相通じる点だろう。
15年シーズンは、真中さんが二番に据えた川端慎吾が打率.336(8本塁打、57打点)で首位打者に輝き、三番の山田哲人は打率.329、38本塁打、100打点、34盗塁で自身初のトリプルスリーを達成。本塁打王と盗塁王のタイトルも獲得した。そして四番の畠山和洋は105打点(打率.268、26本塁打)で打点王に。主軸が打撃タイトルを総ナメにする活躍で、リーグトップの574得点を叩き出している。
課題だった投手陣は、石川雅規が13勝9敗、小川泰弘が11勝8敗と左右のエースがフル稼働したが、3番手以降はシーズンを通じてなかなか固定できなかった。そのウィークポイントを補ったのが救援陣。セットアッパーの秋吉亮、ロマン、オンドルセクを試合中盤からつぎ込み、最後は絶対的守護神・バーネットで締める。役割分担が明確な野球で白星を重ねるなかで、若手が大きな自信を手に入れた。
ただ、こうして就任1年目にリーグ優勝という最高のスタートを切った真中さんだが、翌16年は5位、17年は最下位に沈み、17年シーズン終了後に監督を辞している。
選手と食事に出掛けなかった理由とは
ヤクルトの監督就任1年目にリーグ優勝を果たした真中氏。いまや日本球界を代表するプレイヤーになった山田哲人も、入団時から指導してきた 【写真は共同】
プロ野球界では、「〇〇選手を育てた〜」という代名詞がコーチや監督によく使われる。真中さんはこれを嫌がった。08年に現役を引退し、09年からヤクルトの2軍打撃コーチ、2軍監督、1軍チーフ打撃コーチを歴任。入団時から指導してきた山田の「育ての親」として取り上げられることもあったが、真中さんはいつもこんな風に話していた。
「オレは山田を育てたなんてまったく思っていない。コーチができることは限られている。教え方がその選手に合う、合わないは当然あるだろうけど、選手の努力が一番だよ。それをコーチの手柄みたいに称賛されるのは、おかしいと思うんだよね」
監督・真中さんは「情」に流されることもない。2月の春季キャンプ中も、全体練習後の個別練習を長時間見守ることはなく、逆に、あえて選手の目を避けながら行動しているようにも映った。
「監督が見ていると、アピールするための練習になっちゃうんだよ。特に若手はね。それでは本当の技術が身に付かない。『練習熱心な選手』って言葉をメディアはよく使うけど、人が見ていないところで練習している選手もたくさんいる。だから、『よく練習しているから』という判断基準だけで起用することはない。力が同等の選手たちには、平等にチャンスを与えているつもりだよ」
選手と食事に出掛けなかったのも、会食に参加しなかった者の感情を考えてのことだった。