連載:プロ野球みんなの意見

江本孟紀、槙原寛己、里崎智也がMLBに提言「ワンポイント禁止は今すぐ見直すべき」

前田恵

日本からMLB側に提言を

槙原寛己 【画像:スリーライト】

――スポーツナビが昨年12月に行ったユーザーアンケート調査(投票数約17,000)では、ワンポイントリリーフ禁止に反対の声が71%と圧倒的多数を占めました。一方、ワンポイントリリーフ禁止に賛成のユーザーの中には、「ワンポイントで交代されてしまうのはかわいそう」という声があったのですが、実際に投げている側からすると、どうですか?

江本 心配無用です(笑)。

里崎 喜んで投げていますよ(笑)。

里崎智也 【画像:スリーライト】

槙原 野村(克也)さんが阪神の監督時代、松井(秀喜)の打席で「遠山・葛西スペシャル」と呼ばれるワンポイント継投を行っていましたよね。遠山の登場曲が球場に流れると「来た来た!」という感じで、球場が湧いたのを思い出します。しかも、この作戦で松井を攻略した。いまだに多くの野球ファンの記憶に残っているということは、それだけインパクトのある作戦だったんです。ワンポイントリリーフを禁止にしてしまうと、こうした作戦の芽を摘むことにもなってしまいます。

江本 「名将」と言われる野村さんですが、実際には24年間の監督生活で2勝しか勝ち越していない(通算1565勝1563敗)。本人も時々ぼやいていたけど、弱いチームばかり任されてどうにもならないから、次々に作戦を考えていた。うまくいったこともあったけど、「策士策に溺れる」で失敗したこともたくさんあった。

里崎 野球は他者より何かひとつでも秀でているものがあれば、それだけで生き残ることができる競技です。例えば、元巨人の鈴木尚広。彼には「足」という強力な武器があったから、15年も現役生活を送ることができた。際立った特徴を持つ選手の集合体としてチームがあり、監督が彼らをいかにうまく起用するかを考える。だから野球はおもしろいんですよ。ワンポイントリリーフを禁止にすると、この楽しみの幅を狭めることになってしまいます。

江本 ワンポイントリリーフは野球の立派な作戦のひとつ。日本では気にせず続ければいいと思うし、逆に日本からMLBサイドに「それは間違っているから、止めたほうがいい」と提言したっていい。僕がコミッショナーだったら、そうハッキリ言うけどね。

(構成:スリーライト)
 

プロフィール

江本孟紀(えもと・たけのり)
1947年高知県生まれ。 法政大、熊谷組を経て、70年に東映(現日本ハム)に入団。72年に南海(現ソフトバンク)移籍後はエースとして、73年のリーグ優勝に貢献。76年には阪神に移籍し、81年に現役引退。92年には参議院議員初当選を果たす。タイのナショナルベースボールチーム元総監督。現在は野球解説者として活動するとともに、独立リーグ「高知ファイティングドッグス」総監督を務める。

槙原寛己(まきはら・ひろみ)
1963年愛知県生まれ。大府高を経て、81年にドラフト1位で巨人に入団。83年に新人王を獲得すると、斎藤雅樹、桑田真澄とともに「三本柱」の一角として、7度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献。94年には対広島戦で史上15人目となる完全試合を達成した。2001年に現役引退。現在は野球解説者、タレント、YouTuberとして活動している。

里崎智也(さとざき・ともや)
1976年徳島県生まれ。鳴門工業高から帝京大を経て、1998年にドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団。2005年のリーグ優勝と日本一、「史上最大の下剋上」と呼ばれた10年のリーグ3位からの日本一に貢献。06年のWBCでは正捕手として王ジャパンを世界一に導いた。14年に現役引退。現在はテレビ、ラジオ、YouTube、書籍など、幅広い分野で活動中。

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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